軽量・フレキシブル太陽電池の国内市場、応用範囲を広げて2040年度には約5倍に成長
2025/10/09

フィルム型ペロブスカイトをはじめとする軽量・フレキシブル太陽電池は、窓や壁面など多様な設置が可能で、2040年度の日本市場は449億円と、約4.9倍の成長が見込まれている。
メイン画像:ペロブスカイト太陽電池(出典 桐蔭横浜大学)
1.軽量・フレキシブル太陽電池 2040年度には国内市場が5倍に
2.フィルム型ペロブスカイト 2030年に本格的な市場形成
3.ペロブスカイト太陽電池 単接合型とタンデム型で急拡大
4.2040年度には日本でも342億円規模に
軽量・フレキシブル太陽電池
2040年度には国内市場が5倍に
軽量・フレキシブル太陽電池の国内市場(出典 富士経済)
総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済は、軽量・フレキシブル太陽電池の国内市場を調査した。軽量・フレキシブル太陽電池は、ガラスのような硬い基板ではなく、薄いプラスチックや金属フィルムなどの基板に太陽光を変換する材料を薄膜で形成することで、従来の太陽電池よりも軽く、曲げられる柔軟性を持たせた太陽電池である。これにより、ガラス製の硬質パネルでは設置が難しかった耐荷重が低い屋根、曲面、壁面、さらにはIoT機器やドローンといったさまざまな場所や形状への設置が可能になり、太陽光発電の応用範囲を大きく広げることが期待されている。「フィルム型ペロブスカイト」や「軽量型結晶シリコン」、「有機被膜」などの種類がある。
軽量・フレキシブル太陽電池の国内市場は、2025年度に139億円が見込まれ、40年度には449億円へと約4.9倍の拡大が予想されている。商用化が先行している「軽量型結晶シリコン太陽電池」は、既存施設の屋根などのように耐荷重制約のある場所で採用が進んでおり、中長期的にもBAPV(建物後付け型太陽電池)用途が主流となる見込みだ。さらに、公共施設や老朽化建物など、既存ストックへの導入余地も大きく、更新需要と合わせて今後も成長をけん引すると考えられている。加えて、自動車や移動体への応用研究も進められており、35年度頃から新たな市場形成が期待される。
フィルム型ペロブスカイト
2030年に本格的な市場形成
積水化学工業が開発したペロブスカイト太陽電池(撮影 金子怜史)
「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」は、軽量で曲げられる特性を持ち、窓や壁面など多様な設置が可能である。現状は少量生産にとどまるが、30年度前後に本格的な市場形成が予想され、ロールtoロール方式などの量産技術の確立が普及を後押しすることが期待されている。将来的には都市部のビル群や公共インフラへの応用も見込まれ、40年度にはBAPVを中心にソーラーカーポートなどの用途が拡大すると見込まれている。
「有機薄膜太陽電池」は、多色展開や環境負荷の低さを特長とし、現在は屋内利用が中心である。30年度頃から営農型太陽光やBIPV(建材一体型)で導入が本格化し、長期的には多様な用途での成長が期待される。特に営農型太陽光では農作物への影響が少なく、地域分散型電源として注目されており、地方創生やエネルギー自給にも貢献すると考えられている。
ペロブスカイト太陽電池
単接合型とタンデム型で急拡大
ペロブスカイト太陽電池の世界市場(出典 富士経済)
富士経済は、ペロブスカイト太陽電池の世界市場も調査した。世界市場では、24年の590億円から、40年には約3兆9,480億円へと約67倍に成長すると予測されている。「単接合型」は電子棚札やIoT機器の小型電源としてすでに商用化が進んでおり、20年代後半には結晶シリコンとのタンデム型の本格量産が開始される見通しだ。特に変換効率の高さが期待される「タンデム型」は、40年に市場の約6割を占めるとみられる。
用途別ではBAPVが主流となり、中国を中心に量産が進展するとみられる。基板別では「ガラス基板型」が当面は主流だが、軽量・フレキシブル性を生かす「フィルム基板型」も成長し、40年には全体の3割以上を占める見込みである。欧米や日本メーカーも積極的に開発を進めていて、今後は各国の再エネ政策や補助制度が市場成長を左右することになりそうだ。
2040年度には
日本でも342億円規模に
ペロブスカイト太陽電池の日本市場(出典 富士経済)
日本では、ペロブスカイト太陽電池はまだ試験製造段階だが、積水化学工業が25年1月、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を量産・商用化するため、新会社「積水ソーラーフィルム」を設立した。大阪・堺市のシャープ跡地に工場を建設し、27年度に100MW、30年度には1GW級の生産体制構築を目指している。
ペロブスカイト太陽電池の日本市場は、40年度には342億円規模に達すると予測され、BIPVやBAPVでの採用、さらにタンデム型の開発・量産が市場拡大のカギとなる。「フィルム基板型」は耐久性やコスト面で課題を抱えるものの、軽量性や量産性に優れ、将来的な伸びが期待される。一方、「ガラス基板型」は既存シリコン太陽電池の製造ラインを活用できることから短期的な主力製品になるとみられる。30年度以降には「ガラス基板タンデム型」の本格出荷が見込まれ、長期的な市場拡大を支えると考えられる。
軽量・フレキシブル太陽電池とペロブスカイト太陽電池は、それぞれ国内外で用途や成長段階に違いがあるものの、共通してBAPVやBIPVを中心に需要拡大が見込まれる。40年度に向けては、性能向上と量産技術確立が最大の課題であるが、環境政策やエネルギーコスト高騰への対応を背景に、関連市場は拡大基調を継続すると予想される。
DATA
軽量・フレキシブル太陽電池の国内市場を調査
ペロブスカイト太陽電池の世界市場を調査
取材・文/ダブルウイング