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基準見直し、時代は「GX ZEH」へ。住宅には「太陽光&蓄電池」が必須に!

2030年には新築戸建住宅の6割に太陽光発電が設置へ。ZEHの普及が進む中、次世代型「GX ZEH」では蓄電池やエネルギーマネジメントが必須になる。太陽光+蓄電池が住宅の新たな標準装備へ。最新政策動向から探る、住宅再エネビジネスの攻め筋とは。

<目次>
1.住宅での再エネ活用を加速 2030年には6割に太陽光
2.カーボンニュートラルへ ZEH目標と今後の方針
3.ZEH普及の現状 大手ZEH化率70%超
4.省エネ住宅の次世代標準 「GX ZEH」へ進化
5.太陽光+蓄電池+エネマネ 住宅エネルギーの新常識
6.ビジネスインパクト 政策の追い風と市場拡大

 

住宅での再エネ活用を加速 
2030年には6割に太陽光

近年のエネルギー価格の高騰を考えると、電力会社からの買電量を減らし、太陽光でつくった電気を自家消費する経済的メリットは大きい。発電した電気をムダなく賢く使うための蓄電池も、手の届きやすい価格になってきた。

今日では、さまざまなメーカーから複数の製品・設備が販売されており、消費者は多様な選択肢のもと、自家消費への取り組みを進めることができる。自家消費型システムは、災害時には非常用電源としてレジリエンスに寄与するなど社会的意義も大きい。

エネルギー政策の基本方針を定めた「第7次エネルギー基本計画」には、今後の太陽光発電の導入拡大にあたっては、比較的地域共生がしやすく、系統負荷の低い屋根設置太陽光発電のポテンシャルを積極的に活用していくとある。住宅用太陽光発電については、「2050年において設置が合理的な住宅・建築物には太陽光発電設備が設置されていることが一般的となることを目指し、これに至る2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」とされている。蓄電池についても、積極的に導入拡大を図っていく方針だ。

 

 

カーボンニュートラルへ
ZEH目標と今後の方針

住宅の省エネ化については、「2050年にストック平均(既築・新築両方)でのZEH水準の確保」を目標とする。また、これを実現するために、「2030年度以降に新築される住宅についてZEH水準の省エネ性能の確保を目指すこと」とされている。 

これらの目標を踏まえ、国は省エネ性能の牽引役であるZEHに、今後、より高い省エネ性能を求めていく方針を立てている。具体的には、①省エネ基準等の段階的引上げ、②省エネ設備等の導入(規制・支援)、③ZEH超え省エネ住宅の導入支援、④ZEH定義の見直しなど。また、ゼロ・エネルギー化を進めていく観点から、自家消費型太陽光発電を促進する。

ZEH普及の現状
大手ZEH化率70%超


出典:資源エネルギー庁

省エネ住宅(新築)の普及状況を事業者区分ごとにみると、2023年度時点で、ハウスメーカーによるZEH化率が73%と高く、デベロッパーが58%で続いている(上表参照)。一方で、大手・中堅ビルダーおよびビルダー・工務店のZEH化率はまだまだ低いため、全体としてのZEH化率は3割程度にとどまっている。

一方で、トップランナーの中には、ZEH基準を超えた省エネ住宅を手掛けているところも少なくない。また、政策面においても、子育てグリーン住宅支援事業(令和6年度補正予算、環境省・国交省)において、ZEHの水準を大きく上回る省エネ性能を有する脱炭素志向型住宅(GX志向型住宅)の枠組みが設けられるなど、省エネ性能をより一層向上させる動きが加速している。

省エネ住宅の次世代標準
「GX ZEH」へ進化


こうした背景のもと、国はZEH化率の向上を図るとともに、今後はZEHに、より高い省エネ性能を求めていく。その実現に向けて、現在、ZEH/ZEH―M委員会(経済産業省資源エネルギー庁が国土交通省および環境省と連携して運営)において、今後のZEHのあり方に関する検討が進められている。認定要件そのものが改定され、新しいZEHとして生まれ変わる予定だ(2027年度から適用開始予定)。


出典:資源エネルギー庁

なお、この新しいZEHについては、現行ZEHとの違いを明確にするために、「GX ZEH」(案)という名称で呼ばれることになっている。

太陽光+蓄電池+エネマネ
住宅エネルギーの新常識


ZEHの改定にあたって、「省エネ+創エネ(太陽光発電等)で100%以上」という、ネット・ゼロ・エネルギーの概念自体は変わらない。ただし、左表のとおり、求められる性能はより厳しいものとなっている。さらに、自家消費拡大に向けて、これまではなかった設備要件が新設された。

従来から創エネ設備として想定されていた太陽光発電に加えて、「高度エネルギーマネジメント」と「蓄電池」が必須になったのだ。高度エネルギーマネジメントとは、エネルギー計測装置(HEMS)により、太陽光発電設備等の発電量等を把握した上で、住宅内の冷暖房設備、給湯設備等が制御可能であること。蓄電池については、戸建住宅の場合、初期実効容量5kWh以上が要件となっている。加えて、推奨事項として「EV充電/充放電設備」が挙げられている。

また、住宅における太陽光発電の設置容量をより増やす観点から、再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量削減率を115%以上とした上位シリーズ「GX ZEH+」も設定されることとなった。

ビジネスインパクト
政策の追い風と市場拡大

GX ZEHの導入は、事業者にとって単なる性能基準の更新ではない。認定を受けることで、これまで以上に厚みのある政策支援の対象となることが検討されている。従来も「戸建住宅ZEH化等支援事業」による建設コスト補填や、住宅ローン金利引き下げ(ZEH住宅ローン優遇)、さらには「ZEHビルダー登録制度」による公的リスト掲載といった営業面でのアドバンテージが存在した。GX ZEHでは、これらがより強化される見通しだ。

政策的な誘導によって、ZEH段階で太陽光の導入が実質必須となったのと同様に、GX ZEHの本格運用により蓄電池の搭載も加速することは間違いない。これは住宅施工事業者にとって「設計・施工に組み込むべき新たな標準仕様」を意味する一方で、太陽光・蓄電池関連事業者にとっては需要拡大のチャンスを意味する。

そもそも太陽光や蓄電池は、光熱費削減やレジリエンス向上といった経済的・社会的メリットが大きい。そこにGX ZEHによる制度上のインセンティブが重なることで、住宅市場全体に追い風が吹くことになる。「太陽光+蓄電池」が標準装備化する住宅市場への転換が目前に迫っている。


取材・文:廣町公則

SOLAR JOURNAL 住宅特別号(2025年秋)より転載

 

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