太陽光発電所の銅線盗難にどう備えるか 『雷神』を用いた「物理防犯」という新発想
2026/05/29
太陽光発電所を狙った銅線の盗難が、全国で深刻な問題となっている。そうした中、防犯カメラメーカーとして長年事業を展開してきたPSDが提案しているのが、「物理防犯」という考え方だ。同社が開発した「雷神シリーズ」は、従来の監視する防犯ではなく、そもそも盗ませない防犯を目指した製品群として注目を集めている。
映す防犯から
盗ませない防犯へ

2003年設立の防犯カメラメーカーPSDは、近年深刻化する太陽光発電所での銅線盗難対策に注力している。銅価格の高騰を背景に急増するこの犯罪は、売電損失や復旧費を含めると一度で数百万円規模の被害になることも珍しくない。
同社は当初、防犯カメラや侵入検知・音声威嚇を行うAIカメラで対策を試みた。しかし、犯人が顔を隠して強行突破するケースや、盗難車を利用するためカメラ単体での抑止が難しいことが判明。さらに、AIが動物を誤認識することによる誤報が、夜間対応を強いられる利用者の大きな負担となる課題も浮き彫りになった。
フェンスの切断や死角の利用など、犯人の巧妙な侵入経路をすべて塞ぐことは極めて困難だ。数多くの現場を見てきた同社の大山伸善代表は、こうした課題に直面する中で発想を大きく転換した。それは「侵入口を守るのではなく、盗まれる対象そのものを守る」というアプローチである。
犯人が最終的に狙う場所は共通しており、パワーコンディショナー(PCS)とキュービクル間の、地中から立ち上がる太い幹線部分だ。ここをピンポイントで死守するという現場の分析から誕生したのが、新たな防犯ソリューション「雷神シリーズ」である。
「ここは無理だ」と思わせる
雷神シリーズの強み

左上:雷神Bar 左下:雷神Guard 右:雷神Tower
雷神シリーズは、太陽光発電所の配線や設備を物理的に保護するための製品群だ。
ラインナップには、一番狙われやすい引込柱を全方位から守るための高耐久金網「雷神Tower」、PCSやキュービクルの配線立ち上がり部分を強固にガードする「雷神Guard」、集電箱やPCSなどの盤が開けられないようにがっちり防御する「雷神Bar」、雷神Towerや雷神Guardの周囲の地面を保護し、配管の掘り返しや破壊行為を未然に防ぐ「雷神Plate」、さらにPCSや集電箱とキュービクルの間の太いケーブルを地中でロックして引き抜けないようにする「雷神Lock」がある。これらの製品開発に伴い、3件の特許と1件の実用新案を取得している独自性や新規性も大きな強みと言えよう。
雷神Tower

雷神Towerは低圧向け、他は低圧から特高まで対応し、現場ごとの状況に応じて組み合わせることで多層的な防御体制を構築できる。
2026年5月現在、総導入件数は225件、運用しているワット数の合計は278MWに上る。
特徴的なのは、犯行そのものを諦めさせることを重視している点だ。大山代表によれば、「何回も盗難に遭っていた現場でも、雷神シリーズを導入したところ、被害ゼロを継続している」という。これは盗難を防ぐ効果は勿論だが、むしろ下見段階で狙われなくなる効果の現れだという見立てだ。
犯人は夜間作業を前提としているため、事前の下見を重視する傾向がある。そこで、鉄製ガードや鋼鉄バーで厳重に囲われた設備を見ると、「ここは時間がかかりそうだ」「リスクが高い」と判断し、より無防備な現場へ移るケースが多いようだ。
雷神Bar

例えば、雷神Barはキュービクル扉のこじ開け対策として機能する。一般的な鍵だけでは、バールや工具によって破壊されてしまうケースも少なくない。しかし、鋼鉄製のバーで物理的に固定することで、扉そのものを開けにくくする構造になっている。
また、雷神Plateは地中配線の防護に用いられる。地面を掘って配線にアクセスしようとしても、内部に設置された金属プレートがスコップなどを引っ掛け、簡単には掘り進められない仕組みだ。
雷神Lock

雷神Lock(イメージ図)
中でも比較的導入しやすい製品として注目されているのが、雷神Lockである。
これは配管内部に設置する特殊防御機構で、外からは施工の有無が分からない。仮に犯人が配線を切断しても、内部で防御が作動し、配線を引き抜けなくなる仕組みだ。1カ所あたり約2万円程度で導入できるため、大掛かりな設備投資は難しいが、最低限の対策はしたいという低圧発電所にも導入しやすい。
水上太陽光発電のように配線が露出している設備では、複数箇所に雷神Lockを設置することで、配線が抜けず盗難を諦めさせたり、作業時間を大幅に引き延ばす効果も期待できる。
メンテナンス性を重視
補償スキームも完備
「雷神シリーズ」は、強固な物理防犯と高いメンテナンス性を両立している。特許取得の特殊ロック機構を採用し、犯人による破壊を防ぎつつ、保守担当者は容易に開閉できる。低圧設備なら最短半日で施工できる導入のしやすさも魅力だ。
PSDは、この物理防犯とAIカメラを組み合わせた「二刀流」の対策を推奨している。物理的な防護で犯行に時間をかけさせることで、AIカメラによる侵入検知や威嚇がより効果的に機能するためだ。さらに、利用者の負担となっていた夜間の監視やAIの誤報チェックを人の目で代行するサービスも提供し、確実な運用をサポートしている。
また、導入後の安心を支える仕組みとして、Solvvy社が運営する低圧向け補償スキーム「雷神サポート」も用意。自然災害や盗難被害を免責ゼロで5年間カバーする3つのプランから選択できる。
銅線の盗難は、復旧費だけでなく発電停止による売電損失も招くため、一度の被害が経営に大きな打撃を与える。今後、被害エリアが全国へ拡大する恐れも指摘されている。だからこそ、被害に遭ってから対処するのではなく、「そもそも狙わせない」環境づくりと早めの備えが、これからの太陽光発電事業には不可欠となっている。
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取材・文/大根田康介







