専門家に聞く! 今後の電力改革に必要な3つのコト
2017/01/27
パリ協定が発行され、今後ますます導入が進むことが予測される再生可能エネルギー。世界の潮流に乗り遅れないために、必要な電力システム改革とは?太陽光発電協会の亀田事務局長にお話を伺った。
パリ協定が描きだす
化石燃料に頼らない世界
地球温暖化対策のための新しい国際的枠組み「パリ協定」が動き出そうとしています。米国・中国・EU諸国などが早々に批准していくなか、日本は少し出遅れてしまいましたが、脱炭素に向けた世界的潮流を見据え、しっかりと取り組んでいく必要があります。
人類は、今世紀末に向け、化石燃料に頼らない世界をつくっていかなければならないのです。それが、パリ協定の描きだす未来であり、そのためには再生可能エネルギーを十分に活用していかなければならないのです。
パリ協定の発効により、世界は今後、ますます大量の再生可能エネルギーを導入する方向に向かいます。子供たちやさらにその先の未来の子供たちのために、地球の豊かな自然を持続的にするために、世界的に動き出したこの流れに乗り遅れるわけにはいかないでしょう。そして、そこには大きなビジネスチャンスも生まれようとしています。
電力システム改革を
再エネ導入拡大のために
日本は現在、電力システム改革の真っただ中にありますが、この改革も、パリ協定が示す未来に合致するものでなければなりません。再生可能エネルギーの導入拡大に資するものでなければならないのです。
その意味で、電力システム改革には重要なポイントが3つあります。まず1つめは、接続可能量の拡大に向けた地域間連系線利用ルールの見直しや系統のフレキシビリティの増大です。地域間連系線の柔軟な活用により、再エネが豊富な地域と電力需要が多い地域との間で、電力のやりとりを行いやすくするなど、地域の垣根を越えた電力融通が容易になれば、純国産資源である再エネを無駄なく活用することができます。1つの地域の中だけでみているから接続可能量がすぐに限界に達してしまうのであり、より広域で捉えることができれば接続可能量は増加させ得るのです。
分散型電源にふさわしい
託送料金システムを
ポイントの2つめは、託送料金システムの問題です。これまでの考え方は大規模集中型の電源を前提に、そこで発電した電気を上流から下流に流すことを基本とするものでした。従って、これでは太陽光発電などの分散型電源には対応しきれません。
例えば、将来、FIT終了後の太陽光を隣近所で使うというようなことも考えられます。そのとき利用される電線は極めて限られたものであり、山々を越えてやってくるための設備などは使いません。これは一例に過ぎませんが、送配電線の利用には様々なスタイルがあるわけです。
分散型電源を上手に融通しあえば、低コストで効率の良いエネルギー供給が可能です。それを実現し得る制度をつくり、送配電線の利用実態に即した適正な託送料金のあり方が考えられていくべきでしょう。
電力市場活性化に向けて
非化石価値取引にも期待
3つめのポイントは、電力自由市場の拡充です。現在、日本には卸電力取引市場がありますが、取扱量は極めて小規模です。市場メカニズムを使って需給バランスをとっていくためには、もっと大きな量が取り引きされなければなりません。逆に十分ボリュームのある市場になれば、変動電源を含めて市場のメカニズムで需給が調整され、再生可能エネルギーを無駄なく上手に使いこなすことができます。電力システム改革によって市場の活性化が進むことは、再生可能エネルギーにとっても重要なことなのです。
現在、経産省の審議会において「非化石価値取引市場」の創設が議論されていますが、これについても電力市場活性化に向けた取組みとして期待しています。再エネの環境価値を積極的に評価して取引する市場ができれば、消費者の多様なニーズにも応えやすくなるのではないかと期待しています。
電力システム改革は、再生可能エネルギーの普及拡大にとって極めて重要な取り組みであると考えます。未来の脱炭素社会の実現のため、私たち太陽光発電協会も、今後とも全力で取り組んでまいります。
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)
事務局長
亀田正明氏
1985年三洋電機株式会社入社。太陽電池技術の研究開発や太陽電池セルの品質管理等に従事。1998年~2001年には日本電機工業会(JEMA)担当課長として、太陽光発電の標準
化事業を担当。2004年には太陽光発電の認証事業創生により、日本電機工業会会長特別賞を受賞。2015年に事務局長就任。
取材・文/廣町公則
※『SOLAR JOURNAL』 vol.19 より転載