太陽光発電普及の定番 期待の「ソーラー屋根台帳」
2016/03/17
カールスルーエ市(ドイツ)は、ソーラー屋根台帳を活用した独自の取組を実施
ソーラー屋根台帳をうまく利活用し、太陽光発電普及施策を積極的に展開しているのが、カールスルーエ市等が運営費を負担するカールスルーエ市エネルギー・温暖化防止活動公社だ。この公社は、太陽光発電の無料設置相談や省エネ等に関するセミナーを実施している団体で、2010年からカールスルーエ市でソーラー屋根台帳を公開している。
この公社では、ソーラー屋根台帳により太陽光発電に適した建物(赤色の建物)を抽出し、その建物所有者に太陽光発電設置の無料相談の案内を送っている。ソーラー屋根台帳で太陽光発電への興味を持ってもらい、無料の設置相談を経て、設置につなげる試みだ。
なお、欧州では都市計画を策定するにあたって、航空測量データの活用が進んでおり、各市役所はソーラー屋根台帳作成に必要なデータを既に所有している。更には都市計画づくりのため、航空測量データを自在に扱うことのできる技術者を市役所職員として抱える自治体もある。こうした背景もあり、ソーラー屋根台帳は欧州に広がっている。
ソーラー屋根台帳の導入が進んでいるのは欧州だけではない。米国でもニューヨーク市やサンフランシスコ市といった大都市を中心に公開されている。
ニューヨークのソーラー屋根台帳は情報満載
ニューヨーク市のものは、既に太陽光発電が設置された建物が分かるのが特徴だ。太陽光発電の設置情報は、設置事業者が建物所有者の了解を得て、ソーラー屋根台帳を運営するニューヨーク市立大学に情報提供する。
設置事業者の社名も載るので、情報提供のインセンティブになるというわけだ。このソーラー屋根台帳は、設置可能容量や州の補助金、国・州・市の減税額がそれぞれ計算され、建物ごとに設置の際のコスト回収年数までもが参考値として示される。
[参考]ニューヨーク市のソーラー屋根台帳:http://www.nycsolarmap.com/
サンフランシスコ市(米国)は導入事例や風況情報も
サンフランシスコ市(米国)は、ソーラー屋根台帳に様々な機能を付加して、「サンフランシスコエネルギーマップ」として公開している。建物の太陽光発電への適性のみならず、太陽光発電導入事例の紹介や地域の太陽光発電販売店紹介へのリンクも含まれる。また、風力のポテンシャルも分かるのが特徴だ。
[参考]サンフランシスコ市のソーラー屋根台帳:http://sfenergymap.org/
このように欧米を中心にソーラー屋根台帳は世界に広がっている。日本では現在東京都のみが公開しているが、これまでに様々な自治体から問い合わせがあった。今後、ソーラー屋根台帳が、日本の自治体に広がっていく可能性は十分にある。
最後に、誰でも手軽に楽しみながら使っていただける東京ソーラー屋根台帳に、是非一度アクセスいただきたい。
東京ソーラー屋根台帳
稲垣憲治
(公財)東京都環境公社 東京都地球温暖化防止活動推進センター(東京都 環境局 地球環境エネルギー部)
平成17年3月東京大学大学院修了(エネルギー工学)。同4月文部科学省入省、原子力計画課係長などを経て22年3月退職。同4月東京都庁入庁。ソーラー屋根台帳、屋根貸しマッチング事業、シティチャージ設置事業など自治体の新しい太陽光発電普及策の企画に従事。26年4月から(公財)東京都環境公社(都から派遣)。5か国10都市で先進都市の再生可能エネルギー普及策等を現地調査。