編集部からのお知らせ

「売電以外も」農水省が語るバイオマスで地域活性化

現在のバイオマスの活用は売電だけに偏っており、経済性の確保や持続的な事業モデルの確立が課題だ。バイオマスの活用が進むと地域や社会にとってどのような利益があるのか。また、バイオマスの活用を進めていくためにはどのような活動が必要なのか。農林水産省の坂氏に伺った。

バイオマス活用推進基本計画
持続的な事業モデルを育成

農林水産省では、昨年9月に閣議決定した「バイオマス活用推進基本計画」に基づいて、バイオマス活用を促進する施策を進めています。
そこにある基本的な考え方は、地域に存在するバイオマスを活用して、地域が主体となった事業を創出し、農林漁業の振興や地域の利益還元による活性化につなげていく施策を推進するということです。

現状においては、FITを活用した売電の取り組みに偏りがみられ、売電だけではない経済性の確保や地域が主体となった持続的な事業モデルの確立が課題となっています。バイオマスの場合、発電自体のエネルギー効率は10〜40%といわれており、残りは排熱として空気中に放出されてしまいます。それはもったいないことですから、熱利用やCHP(熱電併給)といった取り組みを、積極的に応援したいと考えています。

そうして得られた電気や熱を、農家さんや公共施設等に提供することは、地域への利益還元にもつながります。
また、これまで産業廃棄物として処理されていた家畜排せつ物や食品廃棄物などを、バイオガス化の原料として活用できれば、処理に要する費用や労力の軽減ともなるでしょう。

地域の特色を活かした
まち・むらづくりをサポート

将来的に実現すべき、バイオマスの活用が進んだ社会の姿とは、どのようなものでしょうか。私たちは、主に次のような姿を目指しています。

●環境負荷の少ない持続的な社会
●新たな産業創出と農林漁業・農山漁村の活性化
●バイオマス利用を軸にした新しいライフスタイル

この将来像を実現するためには、各都道府県・市町村の取り組みも重要です。
現在、18道府県・42市町村(※)がそれぞれの「バイオマス活用推進計画」を設けていますが、2025年までには全都道府県・600市町村で計画を策定していただけるよう取り組んでまいります。

地域の活動を後押しする施策としては、「バイオマス産業都市」の選定もあります。これは「原料収集から製造・利用まで、経済性が確保された一貫システムを構築し、地域の特色を活かしたバイオマス産業を軸とした環境にやさしく災害に強いまち・むらづくりを目指す地域」を関係7府省が共同で選定し、バックアップしていこうというもの。2013年度から始まっていて、昨年度までに50地域・68市町村が選定されています。先ごろ本年度の応募が締め切られたところですが、新たにどんな地域、どんな計画が選ばれるか、私たちとしても楽しみなところです。

※類似施策(バイオマスタウン構想・バイオマス産業都市構想)を含めると、重複を排除して374 市町村がバイオマス活用に関する計画を保有している。

バイオマス事業者は
地域との合意形成を大切に

バイオマスに関わる事業者の皆様にお願いしたいのは、地域の方々との合意形成をしっかり図って、まち・むらづくりに資する取組みをしていただきたいということです。地域の方々と同じ方向を向いて、持続的であり、かつその地域にも利益がもたらされる事業をしていただきたいと考えています。

Profile

農林水産省 食料産業局バイオマス循環資源課 課長補佐
坂 隼人氏
平成14年入省以来、主に農業農村整備事業に携る。再エネに関わる業務としては、農地法上の土地利用規制や小水力発電所の建設に携った経験。平成28年4月より現職。


取材・文/廣町公則

『SOLAR JOURNAL』vol.22より転載

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