風力発電入門講座① 風力発電の課題と可能性
2015/10/01
国の中長期導入目標を望む大型化で発電コスト減に
日本で風力発電導入量を順調に増やしていくには、まず国が意欲的な中長期導入数値目標を策定し、導入方針を明確化するべきです。
固定価格買取制度(FIT)が施行されて太陽光発電導入量が爆発的に増えたために、国民の電気料金に上乗せする額が大きな負担になってくると世間では騒がれ始めていますが、再生可能エネルギーの最大限導入と国民負担の抑制のためには、発電コストが安い風力発電の最大限導入が不可欠です。
さらに、風力発電の設置コストを火力発電並みに低くするために、大規模導入によるスケールメリットの実現が必要です。
また、kWh当たりの発電コストを低くするには、風車の大型化が有効です。風車の出力は羽根(ブレード)の回転する円の面積=受風面積に比例するので、ブレードが長くなるほど面積は大きくなり、より多くの電力を得ることができます。さらに、大型化すれば上空に吹く強風も活用でき、風速が弱い時でも、従来の風車より発電量を増やすことが可能なのです。
乱流を避けた適正配置アセスメントの迅速化へ
また、発電コスト低減につながると期待されているのが、高性能風況シミュレーションの活用です。入り組んだ山岳地帯が多い日本には、風の流れが不規則な乱流地帯がたくさんあります。乱流地帯に風力発電設備を設置すると故障のリスクが高まります。しかし、3次元解析などを駆使した最新の風況分析技術ならば、乱流の強い位置を避けた適地選定が可能になり、発電設備の故障リスクを低減して、長期間安定した発電を続けることができます。
そして、風力発電の導入を加速させるには、環境影響評価(アセスメント)の迅速・合理化が必要です。日本ではFIT導入後まもなく、風力発電が環境影響評価法の対象に追加されました。アメリカやイギリスのアセスメント対象規模が5万kw以上なのに対して、日本では1万kw以上から対象となり、評価するためのコストは1万kw当たり約1〜2億円と大きな負担です。
現在、環境省や経産省がアセスメントの迅速・合理化に取り組んでいますが、対象要件の基準も含め可能な限り早期の改善を強く望みます。
風力発電の注目キーワード
「着床式」洋上風力
可能性 着床式洋上風力の建設は欧州が先行している。海洋国家の日本も負けじと本格的に取り組みはじめた。洋上の導入ポテンシャルは、陸上と比べて極めて大きい。
課 題 日本の洋上風力はインフラ整備の遅れと遠浅ではない地形がネック。港湾設備はこれからで、着床式の建設に不可欠なSEP船(自己昇降式作業台船)も国内に1隻のみだ。
「小型」風力
可能性 小型風力は、設置面積が小さく済み、さらに風況が年平均5m/秒以上なら同一出力の太陽光発電と比べて発電量は多くなる。分散型電源としての利用に適している。
課 題 最も大きな課題は、小型風力システム単価が他の発電設備に比べて大きくコスト高であること。ただ、部品標準化などコスト削減に向けた取り組みは始まっている。
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> 連載2回目「風力発電の基礎知識」
>> 連載3回目「風力発電普及への課題、解決なるか」
>> 連載4回目「小形風力発電」に勝機アリ!?」
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取材・文/南野彰
※フリーマガジン版『SOLAR JOURNAL』vol.13 より転載