低すぎる再エネ導入目標。日本が世界から取り残される日
2018/04/12
国際太陽エネルギー学会グローバル・リーダーシップ賞(2017年)を受賞した自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長。世界の再エネ情勢に詳しい大林氏は、日本の現状をどう捉えているのか? 再エネ100%の未来に向けて、向き合うべき課題を聞いた。【Part2】
再エネが世界経済を牽引
日本の進むべき未来は──
自然エネルギーのコストをいかに下げていくべきか、日本でも熱心に議論されていますが、私には論点が少しずれているように感じられます。自然エネルギーは高い、国民負担を生じさせるものという前提のもと、導入拡大のペースを抑える方向に向かっているようにみえます。これでは本末転倒です。
はじめに申し上げた通り、自然エネルギーはそもそも安く、それが各国で爆発的に普及している理由です。こういったコスト低下は、電気代を引き下げ、これまでなかった新しいビジネスも生み出すでしょう。また、現在でも、欧米では、大企業が、風力などと優先的に長期購入契約を結ぶことで、不安定だった化石燃料主体のエネルギーコストを安定させ、むしろ長期に安価に抑えることが可能になっています。
日本も、自然エネルギーの事業環境を改善して、安い自然エネルギーを実現し、積極的に活用していかない限り、国際競争力のある国として生き残ることはできないでしょう。現在、日本では「エネルギー基本計画」見直しの検討が進められています。自然エネルギーについても議論されていますが、将来の主力電源の1つにすると謳うばかりで、低すぎる導入目標を変えようとはしていません。
一方で、火力発電は推進し、原発は再稼働させようとしています。日本は、この先も他の国の化石燃料やウランに依存し、資金を払い続けるのでしょうか。産業構造の改革は痛みを伴いますが、いまそれを行わなければ、世界から取り残されることにもなりかねません。未来のために、そして次世代の子供たちのために、日本も「自然エネルギー100%」に向けて舵を切ってほしいものです。
主要国の再エネ導入目標
PROFILE
公益財団法人 自然エネルギー財団 事業局長
大林 ミカ氏
2011年、公益財団法人自然エネルギー財団の設立に参加。財団設立前は「国際再生可能エネルギー機関(IRENA)」で、アジア太平洋地域の政策・プロジェクトマネージャーを務めた。
撮影・取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.24より転載