進むソーラーシェアリングの大型化、ポイントは”営農の継続”
2018/12/20
ソーラーシェアリングの巨大化が進む中国に続いて、日本でも同様の動きが拡がっている。しかし、実際は上手くいく農家もいれば、トラブルに見舞われることも。今回は、ソーラーシェアリングのポイントとなる営農継続とその事例について紹介する。
前回記事:「ソーラーシェアリングの中心はアジア! 中国では50MWの巨大ソーラーも」
ソーラーシェアリングの
大型化が進む
中国の巨大設備には到底及ばないものの、日本でもソーラーシェアリングの大型化が進んでいる。
開始当初は、出力50kW未満の、いわゆる低圧案件が主流であったが、最近は、高圧(50kW~2MW)はもちろん、特高(2MW以上)の設備も増えている。スケールが大きいほど売電収入も大きくなり、農業経営を支える力も大きくなることは言うまでもない。
今年7月18日、株式会社ミナトマネジメント(東京都港区、代表取締役:倉本達人氏)は、1.87MW(DC)の発電能力を持つソーラーシェアリング発電所「伊勢崎市田部井町太陽光発電所」の運転を開始した。群馬県伊勢崎市にある約2.5haの農地を利用する関東地方最大規模のソーラーシェアリングだ。
パネル下の農地では、農業生産法人によるミョウガ等の生産が行われる。一部のソーラーシェアリングでは、せっかく生産した農産物の売り先がない、という問題が起こっているが、この農業生産法人は漬物を作っているので、ミョウガの自家消費も可能だ。
この設備は「関東最大級」だが、「日本最大級」のものとしては、最近4~5MWクラスのものがいくつか完成している。
筆者撮影。
営農継続を甘く見るな
しかし、甘い考えでソーラーシェアリングを始めるとつまづくことがある。カギを握るのは農業の継続。農業従事者の高齢化が進み、後継者が少ない現状では、太陽光発電の買取期間である20年間にわたって農業を継続することは容易なことではない。
筆者は直接・間接に多くのソーラーシェアリング案件に関わっている。ほとんどが問題なく運営されているが、中にはトラブルに見舞われているものもある。
その一つが、北関東のあるソーラーファームで、低圧設備が10数件並ぶ。ここの土地は元は全て農地だったのだが、同じ敷地内でも、永久転用できた区画とできなかった区画がまだら模様になっている。永久転用できなかった区画では、止むを得ず一時転用によるソーラーシェアリングを開始したという次第。
幸い、現地で農業をやってくれる農家も見つかり、茗荷の栽培を行うことになった。茗荷の植え付けは梅雨入り前にやるのが普通だ。しかし、夏になっても、発芽した気配がない。
調べてみると、メンテナンス業者から農業従事者への念押しができておらず、作付けがなされなかったらしい。その農業従事者は、その時点ですでに70才を超えており、体調も良くなかったようだ。これで1年目は収穫ゼロでイエローカード1枚。
2年目は別の農業従事者にお願いし、とりあえず農業は始まったのだが、「通常の80%以上の収穫」というハードルが超えられず2枚目のイエローカードとなった。一時転用の期間は3年なのでチャンスはあと1年。
幸い3年目には収穫が急増し、何とか第2期(次の3年間)への更新ができ、4年目からは順調に収穫が続いている。
日本にとっては、エネルギーも食料も自給率が低く、対策は急務だ。しかも、農業自体が嫌われているわけではない。経済的にやっていけるならやりたい、という若者は少なくない。今後ソーラーシェアリングの普及が進めば若者の関心が高まり、クリーンな発電と農業再生が同時並行的に進むようになるだろう。
プロフィール
環境経営コンサルタント(合同会社 Xパワー代表)
村沢義久
東京大学工学修士。スタンフォード大学MBA。経営コンサルティング会社日本代表、ゴールドマンサックス証券バイスプレジデント(M&A担当)などを歴任の後、2005年から2010年まで東京大学特任教授。2010年から2013年3月まで同大学総長室アドバイザー。2013年4月から2016年3月まで立命館大学大学院客員教授。現在の活動の中心は太陽光発電と電気自動車の推進。Twitterは@murasawa。