自治体新電力が巨大都市と連携!? 「久慈地域エネルギー」の事例
2019/03/08
地方の疲弊と久慈地域エネルギー
設立のきっかけ
きっかけは、地域で最も大きい民間企業である地元ゼネコンの危機意識だった。日本の地方ではどこでも人口が減り、判で押したような危機が迫っている。久慈市もご多分に漏れず、人口減と経済の縮小がじわじわと町を覆い始めていた。
何とか久慈の活性化ができないかと地元ゼネコンの宮城建設株式会社から筆者が相談を受け、エネルギー地産地消を目指した地域新電力の立ち上げを提案したのは2年半ほど前だった。現在二期目の遠藤市長や市役所の担当者、商工会議所などと議論を進め、最終的に久慈市に本社のある企業5社+久慈市による地元資本100%の会社(SPC)が立ち上がった。
とんとん拍子のようにも見えるが、そこには重大な要素が隠れている。「民間と自治体の意思」、そして「強い指導力」である。
どのように久慈で自治体新電力が
出来上がったのか
まず、久慈の有力企業の地元ゼネコンが発案し、中心となって汗をかいたことが、地元に安心感を呼んだ。久慈地域エネルギーでも筆頭株主として運営主体となっている。そして、その声を聞いた久慈市では、遠藤市長が「地域からのエネルギー費の流出」、「エネルギー地産地消」などについて積極的に勉強を行い、SPCへの資本金支出にはっきりとGOサインを出した。
一般的にいうと、首長の号令だけでは、なかなか自治体新電力は実現しない。バブル期を中心に安易に第三セクターを作って失敗したトラウマを抱える自治体が山ほどあるからである。少なくとも小さい資本の株式会社であれば、責任は出資額内にとどまり第三セクターとは全く違うのであるが、そんなこんなで、『あつものに懲りてなますを吹く』ケースが枚挙にいとまがない。
よって、首長がOKでも担当者が動かないことは珍しくない。久慈地域エネルギーが実現した最大の功労者のひとりは、市役所の実務担当者だと言い切れる。市役所内を走り回り、市議会の各会派への働きかけもすべて行ってくれた。
さらに、地元の商工会議所も非常に前向きだった。地域新電力の意義と地域への役割を周知するセミナーを行い、最後は、久慈市、自治体新電力を並んで「エネルギー地産地消による地域活性化を目指す協定書」を結んだのだ。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ