地域活性化のツールに! 新電力に必要な「リンク」とは?(後編)
2019/05/09
エネルギーの地産地消と地域活性化に向けて必要なのは、「地域新電力」「地域発電事業者」「自治体」の3つが協力体制を築くこと。つまり、地域内外の連携(リンク)が鍵となるのだ。エネルギージャーナリストの北村和也氏が、地域電力の本質を解くコラム第5回(後編)。
2つのリンク(連携)が
生み出す活性化~地域内リンク
地域活性エネルギーリンク協議会では、その名の通りエネルギーを介してリンク(連携)を作り出すことが地域活性化のツールとなると考えている。
例えば、これまで単独で頑張ってきた地域新電力が、地元の自治体とコラボして広がりを持つ事業を始めていることがある。福岡や岩手でのケースを本コラムでもすでに紹介した。
また、今回、協議会に参加した地域の発電事業者が、自分たちの作った電気を地域内で提供するために、地域や自治体新電力を設立しようという動きもある。こちらも協議会として積極的にサポートを始めたところである。
●地域活性エネルギーリンク協議会がサポートする2つのリンク(連携)の実現
上図の左側のリンクが、地域の中でのリンク(連携)のコンセプト図である。地域内で、「地域、自治体新電力」「地域発電事業者」「自治体」がリンクし、エネルギーの地産地消と地域活性化のための核となる仕組みである。
背景には、この仕組みを必要とする厳しい環境があるのも事実である。FIT制度の買取価格の低下や新電力の厳しい競争、また地方の人口減少などを勝ち抜くためには、地域の中での協力体制は欠かせなくなってきている。
地域間のリンク(連携)への発展
時代の要請は、さらに上を行っている。国が決めた再エネ主力電源化や国内企業も求め始めたRE100化を実現するためには、余剰電力を融通するなどのエネルギーでの広域連携が必要になってきた。
つい先日、横浜市と東北の12市町村が「再エネ融通の連携協定」を結んだことは記憶に新しい。現在、絢爛たる企業が多く集まる大都市横浜市でさえ、再生エネ電源が提供できないと将来、企業が逃げていくのではという恐れから逃れられないのである。
広域のリンク、地域間のリンクが必須になるという見通しから、協議会では上図の右側の地域間連携にも力を入れることにしている。すでに、横浜市と協定を結んだ岩手県久慈市が参加し、同様に協定を締結した複数の市町村が協議会への参加を検討している。
横浜市への再エネの広域的な融通は、地元での余剰分というのが原則である。つまり、地元で余剰が出るくらいに再エネの電気を作っておかなければ、夢は実現しない。地域内の発電事業者とのコラボや事業の拡大が前提となるだけでなく、出来上がった再エネ電力を移動させる新電力も同じく重要な役割を担うことになる。
お分かりの通り、地域内のリンクは、地域間のリンクを実現させるための基礎になるのである。2つのリンクは密接につながっている。
協議会の基本コンセプトが、時代の要請などエネルギーに求められる数々の要件に対応していることを理解していただいたと思う。今後は、地域間のリンク(連携)のもう一つの重要な要素、『情報のリンク』について、協議会が目指すことを具体的に紹介していきたい。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ