耕作放棄地を再生! “地域で取り組む”ソーラーシェアリング事例
2019/05/21
農家の高齢化や鳥獣害、災害の拡大など農家の悩みは尽きない。特に「耕作放棄地」は深刻な問題だが、それを解決する一つの方法がソーラーシェアリングだ。今回は、神奈川県小田原市で実際にソーラーシェアリングを行う、小山田大和氏に話を訊いた。
はじめに:耕作放棄地の現状
いわゆる日本の耕作放棄地は42.5万ha。この数字は富山県、滋賀県の面積に匹敵するという。神奈川県の西部に位置する小田原市でも168haほどだ。
耕作放棄地は地域衰退の象徴となり、鳥獣害の増加や災害の拡大をもたらす可能性がある。農家の平均年齢が60歳代後半となり、農家人口も200万人を割る現在、持続可能な農業という課題はますます重要視されているのだ。
そのような中、農業とエネルギーの組み合わせにより解決を図ろうという取り組みが生み出された。営農型太陽光発電(以降、ソーラーシェアリングと称する)という手法だ。
本稿では、神奈川県小田原市での事例を紹介しながら、ソーラーシェアリングの可能性や課題を記していく。
おひるねみかんプロジェクトの
設立背景と概要
神奈川県小田原市は東京から新幹線で40分、人口約20万人の地方における中核都市だ。かつては戦国時代の関東北条氏の城下町として栄え、現在は年間2,000万人の観光客を誇る箱根観光の導入拠点として駅中は大変な賑わいを見せている。
農業も盛んな地域であり、梅は十郎梅として知られ、多くの農家の収入源となっている。また、全国9位の生産量を誇る神奈川県産のみかんの大半は、この地域から生産・出荷されている。
こうした地域特性を持つ小田原市は、みかんの値が最盛期のころ(昭和40年代)「20kgコンテナ分の稼ぎがあれば、繁華街で一日中遊べた」と生産者が話すような好況に沸いたそうだ。
その時に、多くの農家がみかん畑に乗り出した後遺症が、みかんの値崩れや農家の高齢化につながった。こうした背景により、果樹の放棄割合が高いという小田原の状況を嘆く地域農家の川久保和美氏が、仲間と立ち上げたのが「おひるねみかんプロジェクト」だ。
耕作放棄された畑=おひるねしていた畑ととらえ、童謡みかんの花咲く丘の発祥でもある「小田原のみかん文化を守る」ことを掲げた。農家だけでなく、都市住民、地域住民、学生などが「わくわくドキドキしながら素人でもできる手法で解決していく」ものだ。
収穫されたみかんは基本的にすべてジュースとして加工して、6次産業化にチャレンジ。完成した「おひるねみかんジュース」は、箱根の入口に拠点を構える鈴廣かまぼこのドライブイン等で販売。そこで得られた利益を、農地の維持管理費用にあてるというサイクルをまわしている。
「おひるねみかんプロジェクト」の精神は近隣の松田町に伝播し、松田町の放棄地を活用した松田版おひるねみかんジュースの製造・販売という形で結実した。
ラベルは地元小田原東高校の生徒が手がけ、産・学・官(町)、が連携した取り組みとして、更なる進化を遂げている。
この取り組みは、「耕作放棄地問題は農家だけの課題か?」という問いからスタートしている。消費者たる自分たちにも責任の一端はあるのではないか? と考えてもらうよい機会にもなる。