太陽光発電で火災や感電事故が発生!? 必要な安全対策とは?
2019/07/01
実際に起きた火災事故の一例
高潮で水没したメガソーラーの接続箱の火災
平成30年に台風21号の高潮で出火。付近の住民がバンバンという音を聞き、太陽光発電所の方を見ると2ヶ所から白煙が立ち上るのを確認したため119番通報。
消防隊は、通報当日に接続箱1個に対する消火活動を行い、接続箱2個の自然鎮火を確認した。翌日から太陽光発電設備の被害確認が行われ、接続箱651個のうち65個に発火やアーク痕を確認。運用開始から約3年が経過した発電所だった。
パワーコンディショナから出火した火災
事務所ビル地下1階の電気室に設置された感知器が発報。電気室の自動消火装置は作動せず、室内に火炎はなかったが、きなくさい臭いがただよっていた。
調査してみると、基盤交換等の修繕を行った、感知器付近のパワーコンディショナ内部に焼損が認められた。筐体内を調べると、ダイオードが激しく焼損していた。
モジュール配線から出火した火災
写真・情報提供:消防研究センター
屋根一体型のモジュールが設置された築1年程度の住宅屋根部分から出火。出火の1ヶ月ほど前より、配電盤のブレーカが落ちたり、漏電が確認されたり、絶縁抵抗異常があったりした。「屋根の隙間から煙が出ている」と通行人が窓から声をかけて発見。住宅用火災警報器の発報はなく、居室内の人も気づかなかった。消防隊が小屋裏を確認すると、煙が充満し、炎が確認できた。モジュールを外し配線を確認すると、挟まれてつぶれている箇所や亀裂の入った箇所が数ヶ所あった。
消防研究センターの研究事例
モジュール破壊時の放電実験
破壊器具にマイナス出力端子を接続してモジュール内電極と接触させた。最大電圧がかかる最悪の条件である。電圧は約250Vだ。モジュール内電極と破壊器具の間で放電が発生した。放電の熱により、樹脂が分解され発煙したり、発火したりする場合もあった。
海水水没時の接続箱内で起こる現象の再現実験
プラスチック容器に海水を入れ、カゴの編み目を利用して、+極とー極が水中から立ち上がるように固定。ストリングから約560Vの電気を供給する。供給しながら電極の心線が水面に沈んでいくようにカゴをゆっくり下げた。心線が水面に達した時、+極が放電し、ー極で水素が発生。さらに+極とー極が水面で放電し、60~70秒後にー極での発炎を確認。そのまま下げると水中でもー極での発炎が継続された。
遮光剤の噴射実験
写真・情報提供:消防研究センター
消防研究センターでは、火災鎮圧時に使用する遮光剤とその噴霧装置の開発を進めている。太陽電池モジュールの表面に吹き付けることで、安全な電圧・電流(25V・直流25mA)以下に抑制し、残火処理や原因調査の際に感電や再出火が起きないようにするものだ。
二次被害の可能性
必要となる発電停止機能
太陽光発電システム火災の消火時には、破損した太陽電池モジュールや配線からの漏電や放水による感電、太陽電池モジュールの落下、燃焼・加熱時に発生するガスや煙などの危険があります。
消火活動にあたっていた消防隊員が、太陽光発電システムにより感電した事例を紹介しましょう。屋根一体型の太陽電池モジュールで覆われた屋根を持つ住宅で火災が発生した時のことです。屋根裏に火がおよんでいたため、消防隊は残火を確認するため屋根を壊す作業を行いました。屋根の上で、1人の消防隊員がトビ口などで太陽電池モジュールを持ち上げ、手をかけて引き剥がそうとした瞬間、その隊員の手がビリビリと感電しました。また別の隊員は、片手を建物の金属製柱につき、もう一方の手で太陽電池モジュールの裏面を押して外そうとした時に、バーンという強い電撃を感じたといいます。
災害によって太陽光発電システムが被害を受けた時も、太陽電池モジュールは発電し続けるケースがあります。その発電された電気が、システムの火災や消防隊員の感電などの事故につながることは十分ありうるのです。これらの事故を未然に防ぎ、太陽光発電システムの安全性を高めるためには、いざという時に太陽電池モジュールごとに発電をシャットダウンできる機能。それが難しければ、せめてストリングごとに発電を止められる機能の搭載が必要だと考えています。
当センターでは現在、消防活動時に太陽光発電システムの発電を抑制するため、太陽電池モジュール表面に遮光材を噴射する機器を防災機器メーカーと共同開発中です。実用化されれば、消防活動時の安全性をより高められるでしょう。
PROFILE
消防庁 消防研究センター技術研究部 室長
田村裕之氏
取材・文/具志堅浩二
SOLAR JOURNAL vol.29(2019年春号)より転載