これからの太陽光発電所は「スマート化」がキーワード
2016/08/03
大規模な太陽光発電所には、通信技術が欠かせない。ICT業界の世界的なリーディングカンパニーである「HUAWEI」(ファーウェイ)が提供するソリューションとは? スマートソーラー事業部の李氏に話を聞いた。
―― まずは、ファーウェイという企業について教えていただけますか?
1987年に中国の深センで設立され、今では世界170ヶ国で事業を展開し、従業員数がおよそ17.6万人、146ヶ国に現地法人・駐在事務所を持つICTのグローバル企業です。
我々が20年以上にわたって成長し続けて来られたのは、常にお客様を中心に考えてきたから。当社売り上げの70%は海外市場によるものですが、世界中のお客様のニーズに答えるために、その多くをR&Dに使っています。社内でよく使われる、「ファーウェイに成功はない。あるのは成長のみ」というキャッチフレーズがあります。従業員全員が、高い意識でお客様に良いものを提供していく……そんな企業です。
―― PV事業の位置づけは?
当社は、業務用のパワコンとソリューションについては2010年から本格的な開発をはじめ、2013年に製品化、販売を開始しました。20年以上にわたって蓄積された通信機器の製造技術、電源関連技術、インターネットやデジタル技術を融合して、製品開発に活かしています。とはいえ、この分野への参入は比較的後発ですから、「スマートソーラー」、つまりいかに発電所の運用をスマート化するかをテーマとして、独自のソリューションを提供しています。
―― そんなファーウェイの「スマートソーラー・ソリューション」とは?
ポイントは、ストリング単位での監視・制御と発電量の向上。そして運用・管理のインテリジェント化ですね。また、初期投資が削減できることも、大きな特徴です。
まずそこからお話すると、当社の試算では約5%の初期投資削減が可能です。従来のメガソーラーは、大型のセントラルパワコンを中心としたシステムでしたが、当社では分散型で小型のインテリジェントパワコンを使います。1台のパワコンが500kWといったシステムだったのが、当社のパワコンなら40kW/ 33kW(下写真)。男性2名で簡単に取り付けができてケーブルも節約できる。もちろん工事の手間も効率化できます。また、パネルのすぐ裏に取り付けるので直流集電箱も不要です。
次に発電量ですが、当社のパワコンには、1台に4回路MPPT(※)を搭載しており、ヒューズや放熱用のファンもないので、使用電力も微々たるもの。こうした効果で、発電量を5%アップできると考えています。
監視・制御については、外付けのストリング監視装置を別途設置する必要がなく、パワコン内部のCPUによって各ストリングを監視することができます。パワコンがストリング単位でデータをとってくれるので、発電所の能動的な制御と管理が可能です。パワコンは、発電所と同じく20年の間なるべく長く使える品質が求められます。従来は放熱用のファンが必要で、これが消耗品として無視できない負担でした。当社の通信機器は、アウトドアで使用する送受信装置がすべて自然放熱を利用したものであることから、パワコンもこの技術を活用して、ファンレスとなっています。
―― スマートソーラー・ソリューションは「パワコン」がポイントということですね?
優れた性能のパワコンをコアとして、当社ならではの通信技術、デジタル技術を融合させたものですね。従来のパワコンで使われている抵抗やコンデンサにかわって、独自のアルゴリズムを搭載したICチップを採用することで、シンプルで耐久性が高く、スマート化が実現しました。グループ会社であるハイシリコン社が自社開発したICチップを使うことで生まれる製品の一貫性によって、外付け監視装置の省略も可能になったのです。
―― 最後に今後の展望についてお聞かせください。
日本市場では、確かにFIT価格は下がり、緩やかに安定化へ向かって行くと思いますが、ファーウェイにとって、これはチャンスだと考えています。なぜなら、事業者さんにとっては、20年間収益を上げるのに適していて、EPCさんにとっても初期投資が抑えられるソリューションを提供できるからです。
これからもいい製品と技術、アフターサービスを提供し、日本の再エネ市場に貢献していきたいと考えています。
※MPPT……最大電力点追従制御。太陽電池が発電する電力が最大になる出力電圧で電流を取り出すための制御機能。これによって、日射量に応じた最適条件での電力供給が可能となる。
スマートソーラー・ソリューションのコンセプト
ファーウェイがこれまで蓄積してきたデバイス製造や高速通信、データ解析などのICT技術を活用・融合して提供するPVソリューション。独自開発のインテリジェントパワコンをコアに、デジタル化による設備のシンプル化(設置効率の向上やコスト削減)、発電所のストリング単位の能動的監視・制御(発電量の向上やO&Mの自動化)など、事業者・施工業者に多くのメリットを提供する。
PRODUCT
パワーコンディショナ SUN2000-33KTL-JP/40KTL-JP
8回路ストリングの高精度な計測で、原因特定時間を短縮。PLC(電力線搬送通信)対応。最大変換効率98.8%。4回路MPPTによる発電量アップ。ヒューズレス仕様で直流側の火災リスク低減、自然放熱採用、IP65保護等級など、効率・安全性・信頼性を高いレベルで具現化したインテリジェントパワコン。
COMPANY
華為技術日本株式会社/ファーウェイ・ジャパン
スマートソーラー事業部
ゼネラルマネージャー
李 紅氏
住所:東京都千代田区大手町1-5-1 大手町ファーストスクエアウエストタワー12F
TEL:03-6266-8008
HP:ファーウェイ・ジャパン(FusionSolar Smart PV)
取材・文/畑山護之(partisan)
※『SOLAR JOURNAL』vol.18 より転載