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2020年はコロナによる影響も? 世界の太陽光発電導入量に関する見通し

新型コロナウイルス感染拡大による発電事業への影響が現れているが、今後どのように世界市場は動いていくのだろうか。2019年太陽光発電システムの新規導入量の推移や、2020年の見通しなど、気になる動向に注目。資源総合システムの貝塚泉氏による見解をご紹介。

世界で太陽光発電の
競争率が高まる

貝塚氏:2019年の世界の太陽光発電システム新規導入量は、弊社の調べでは約115GW(2020年3月31日時点)である。

中国における導入量が前年の44GWから30GWへと大幅に低下したものの、中国以外の地域において運開期限のあるプロジェクトや建設段階にあったプロジェクトが稼働を開始したことで前年を上回る導入量となった。

欧州市場が前年比約倍増の17GW台になったことも世界市場の拡大に寄与した。

欧州では、2019年にスペインで入札プロジェクトが稼働し、ドイツ及びオランダ市場などが成長した結果、欧州市場は大きく成長した。このほか、ベトナム、ウクライナ、韓国、オーストラリアなどでの導入が市場成長に貢献した。

図1に世界導入量の推移を示す。


図1 世界における年間導入量の推移と2020年の見通し
出典:株式会社資源総合システム調べ

2020年は過去に実施された入札において選定されたプロジェクトの稼働及び各国での導入計画の進展などから弊社では、106~136GWの新設容量を見込んでいる。

導入のドライバーは、太陽光発電の均等化発電原価(LCOE)の低下、各国での入札をはじめとした導入政策、再エネ電力の需要増加である。

2019年には、世界各地においてLCOEの低下により太陽光発電の競争力が高まっていることが確認された。2019年11月にポルトガル政府が選定した入札プロジェクトの売電額は1.47ユーロセント/kWh(1.69米セント/kWh)で欧州における最低レベルであった。

欧州においては、加重平均資本コスト(WACC)を含む大規模太陽光発電のLCOEは地域によって異なるが、2018年末時点で事業用大規模太陽光発電所のLCOEは、24ユーロ/MWh(スペイン・マラガ)~約42ユーロ/MWh(フィンランド・ヘルシンキ)となり、各国の電力スポット取引市場における年間平均電力取引価格(フィンランドで47ユーロ/MWh、スペインで57ユーロ/MWh)を下回る状況となっている。

米国においても、米・Lazardによれば、米国での補助金を受けない電力事業用太陽光発電所(結晶系)のLCOEは、2018年の40~46ドル/MWhに対して、2019年は36~44ドル/MWhまで低下しており、従来型の電源との競争力が増加し、既存の石炭火力や新設の原子力発電よりも安価であると報告している。

新型コロナウイルスが
太陽光発電に及ぼす影響

貝塚氏:このように、太陽光発電による電力は世界各地で最も安価な電源となっていることから、今後は、電力会社のみならず、民間企業向けの需要、化石燃料からの代替が一層進展していくものと考えられる。

ただし、現時点では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響による、2020年の導入量の一部が2021年にずれ込む可能性が高い。

中国の大手モジュール製造企業各社は生産量の回復を報告しているが、太陽電池モジュールなどの輸入の検疫の遅れや外出の自粛等で太陽光発電プロジェクトの遅延が世界各国で報告されている。

また、COVID-19によって引き起こされた経済停滞を原因とする為替変動により、ハードウェアのコストが値上がりする例も出ている。予定されていた入札が延期されたケースもあり、2021年以降の市場にも影響が出てきているため、影響の長期化が懸念されている。

加えて、世界的には、経済活動の停滞によって原油価格が下落すると、クリーンエネルギー転換への意識が低下することが懸念される。

しかし、COVID-19の影響に対する経済刺激策に太陽光発電の導入を加速する施策を採用した国も出てきており、暗いニュースばかりではない。

世界での導入が遅延すれば気候変動のリスクが高まってしまう。経済刺激策に太陽光発電をはじめとしたクリーンエネルギー技術が採用されることを願いたい。

DATA

文/資源総合システム 調査事業部 部長 貝塚泉
 

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