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ハワイではメガソーラー+蓄電池で再エネ100%へ。夜間に電力を供給!

ハワイ州は、輸入化石燃料への依存から脱却するために「再エネ100%」を掲げた全米で最初の州だ。太陽光発電の導入で「再エネ100%」の目標に加速がかかった同州。電力系統の信頼性を保つと同時に、今後より多くの再エネを統合するため、本土に先駆けて蓄電池の併設を大きく展開している。

輸入化石燃料への依存を断ち
本土に先駆けて再エネ100%へ

ハワイ州は、石油への依存から脱却するために、本土に先取って、「再エネ100%」を最初に掲げた州である。ハワイ州のエネルギー省によると、電源別電力発電量を見ると、米国全体の石油比率が0.6%であるのに対して、ハワイ州ではなんと61.3%が石油に依存している。しかし、同時に再エネの比率も拡大している。2018年末で、同州の再エネ電力供給は28%にまで達していて、同州の中間目標である2020年末までに再エネ30%達成はほぼ確実といえるだろう。同州の再エネ拡大を牽引してきたのは太陽光発電だ。実際、米国全体の電源別電力発電量で太陽光発電が占める割合が2.3%に対して、ハワイ州では何と10.2%と4倍以上の導入規模である。


米国全体では全発電量のうち石油はわずか1%以下であるのに対し、ハワイ州では61%と石油への依存度が高い。化石燃料への依存から脱却するため「再エネ100」を法律化したこともあって、全米では2%にとどまる太陽光発電が、ハワイ州では既に10%を超えている。 出典:Hawaii State Energy Office,2019

同州の「再エネ100%」の目標に大きく貢献する太陽光発電だが、日照条件で出力が変動し、必要な時に発電できないという欠点がある。さらに、太陽光発電の急速な大量導入により、同州の場所によっては太陽光発電の発電量が昼間の最小電力需要を上回ったことで、送電系統に問題が生じてしまった。同州の電力需要ピーク時は夕方5時〜夜10時で、発電出力が昼間ピークになる太陽光発電との間に、出力と需要のミスマッチが起こってしまったわけだ。

蓄電池で余剰電力貯蔵


連系出力20MWのメガソーラーに容量100MWhの蓄電池が併設 出典:AES

そんなハワイ州は、蓄電池に大規模太陽光発電(メガソーラー)を併設することで、これらの問題・課題を軽減し、再エネ100%への転換に向けて再エネ導入加速・化石燃料の消費削減を図った。今年3月に発表された米国エネルギー省(DOE)・エネルギー情報局(EIA)の分析によると、ハワイ州で導入されたほとんどの蓄電池は太陽光発電または風力と併設されている。EIAでアナリストを務めるキエン・チャウ氏によると、ハワイ州で最も使用されている蓄電池の用途は、再エネの余剰電力を貯えて、夜間などに放電するものだ。

実際、ハワイ州は米国で最初にして最大規模の「メガソーラー+蓄電池」を持っている。ハワイ諸島の最北端に位置するカウアイ島をサービス管轄に持つ電力会社であるカウアイ島公益事業社(KIUC)は、連系出力13MWのメガソーラーと容量52MWhの蓄電池を2017年3月に稼働させた。

このプロジェクトは、「カパラ・テスラ・ソーラー」と呼ばれ、米高級電力自動車と蓄電池メーカーであるテスラ社に買収された米ソーラーシティー社がプロジェクトディベロッパーを担当し、テスラ社が蓄電池を供給した。これは、米国で最初の発電事業用メガソーラー+蓄電池のみならず、蓄電池併設によって昼間の発電を夜間用ピーク時に使用する、米国で最初の夜間用電源メガソーラーでもあった。

さらに、カウアイ島で、昨年1月に世界最大規模のメガソーラー+蓄電池の稼働を開始した。これは「ラワイ・プロジェクト」とも呼ばれ、連系出力20MWのメガソーラーに、容量100MWhの蓄電池が併設されている。

競争入札で蓄電池導入拡大


出所:Hawaiian Electric Industries, Hawaii State Energy Office

電力小売の自由化をしていないハワイ州では、カウアイ島以外の諸島は、株式上場されているハワイ電力工業(HEI)の子会社であるハワイ電力会社(HECO:オアフ島管轄)、ハワイ電力・電灯会社(HELC:ハワイ島管轄)、マウイ電力会社(MECO:マウイ、ラナイ、モロカイ島管轄)を通して電力が供給される。

2018年末、HEIは同州の公益事業委員会(PUC)に競争入札で落札したメガソーラー+蓄電池プロジェクトの長期PPAの認定を申請した。2019年5月に承認されたプロジェクトの数は合計7つで、オアフ島、マウイ島、そしてハワイ島の3島に導入される。太陽光発電所の合計連系出力は262MWで、併設される蓄電池の総容量は1048MWhとなる。各蓄電池はピーク時に4時間放電できる仕様となっている。ここで驚くべきことは、各プロジェクトのPPA価格である。7つのうち6つはkWhあたり10米セントを切っている。

2016年3月に承認を得たカパラ・テスラ・ソーラーの20年間にわたるPPAのkW時の電力単価は13.9米セント、2017年に承認されたラワイ・プロジェクトは11.08米セントであった。2019年に承認されたプロジェクトの中でもっと契約価格が低かったのは、マウイ島に建設中の「クイヘァニ・ソーラー」で、価格はなんと7.9米セント。つまり、3年で42%も契約価格が下がったことになる。このプロジェクトは、現在計画中のもので最も大きく、連系出力60MWのメガソーラーに容量240MWhの蓄電池が併設され、2021年には稼働を開始する予定だ。

HEIはさらに昨年7月に900MWの太陽光発電を含む再エネ、500GWhの蓄電池、210MWのグリッドサービス調達の一般競争入札を行った。この入札はハワイ州のみならず、米国の公益事業委員会による最大規模の入札である。昨年11月には、75以上の入札案件を受け取り、5月には、応募者から落札者を選定し、契約を締結する予定になっている。太陽光発電に蓄電池を併設することにより、昼間貯めた太陽光発電をピーク時の夜間に放電できる。ハワイ州では、発電コストの高いピーク時供給用の石油火力の稼働を抑え、化石燃料の消費を低減し、経費だけでなくCO2の排出量も抑制をすることができるのだ。

PROFILE

モベヤン・ジュンコ
太陽光発電電池メーカーで7年間産業経験を積んだ後、2006年から太陽光発電調査会社米ソーラーバズでシニアアナリストとして活躍。2013年よりジャーナリストとして、米国の太陽光発電政策や市場トレンドに関する記事を日欧米のメディアに多数執筆。


文/モベヤン・ジュンコ

SOLAR JOURNAL vol.33(2020年春号)より転載

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