ISEP、九州の出力抑制に提言! 政策からルールまで幅広く見直し求める
2020/12/17
2019年度、九州エリアで実施された出力制御は実に74回。運用方法などの見直しを経て、なおこの回数だ。現在、東京・中部・関西の中三社エリアでも出力制御の実施が検討されている。再エネの普及を阻むこの問題に対し、ISEPが深く切り込んだ。
九州エリアの出力制御問題
根本的な解決策が必要とされる
国内でも特に太陽光発電などの再生可能エネルギー導入が進む九州では、2018年10月から本土での出力制御が実施されている。九州エリアにおける出力制御は、2018年度は計26回、2019年度は計74回にのぼった。
九州電力送配電株式会社は2019年10月以降、出力制御回数を減らすため制御量の算出方法と、オフライン制御を優先して割り当てる運用方法の見直しを図っている。これにより、前日の指令に対する当日の出力制御を24回にわたって回避し、制御量を約2割低減することに成功したとしている。
見直し後の1事業者あたりの制御量は、オンライン制御で14.3回から7.1回、オフライン制御では14.3回から14.2回となっている。オンライン制御では大幅な回数の低減がみられるものの、根本的な回数の減少が求められることには変わりない。
九州電力エリアでは、2020年9月末時点で、太陽光と風力を合わせると1,000万kW以上の再エネが系統に接続されている。同時に、再稼働により原子力による発電比率も徐々に高まってきている。
国や送配電事業者向けに提言
政策目標やルール改善まで幅広く
環境エネルギー政策研究所(ISEP)は10月5日、こうした九州電力送配電による出力制御の状況について提言を発表した。この提言は、すべての一般送配電事業者と経済産業省、電力広域的運営推進機関(OCCTO)に向けられたものだ。
9つの提言では、重要で本質的な政策目標やコンセプトに関する内容から、原発稼働スケジュールや優先給電ルールにいたるまで幅広く言及されている。
もっとも重要かつ本質的な問題として「『再生可能エネルギーの主力電源化』という政策目標の具現化」や変動する再エネ電源を受け止める「『柔軟性』コンセプトの導入」といった内容の見直しを求めた。
速やかに改善できることとして「化石燃料による火力発電の最小化」「原発稼働スケジュールの見直し」「オンライン制御を最大限活用すること」を提案した。中期的な改善の要望では「優先給電(出力抑制)ルールの見直し」「出力抑制に対する経済的な補償」「地域間連系線ルールの見直しと拡充」を挙げた。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)