ハウスの上に太陽光パネル。「自家消費農場」はつくった電気をフル活用
2021/02/19
ハウスの屋根上に太陽光パネルを設置する、自家消費農場「スマートブルー茅ヶ崎農場」。FITに頼らないから、できることがある。蓄電池も導入し、安定的な営農を実現した。
太陽光で運営する先進農場
農地に直接、支柱を立てて太陽光発電設備を設置するだけがソーラーシェアリングではない。ハウスの屋根上に太陽光パネルを設置するケースもある。しかも、ここに紹介する農場では、発電した電気を農場内の動力として活かしている。ソーラーシェアリングではまだ珍しい、非FITの完全自家消費モデルだ。
今年9月、神奈川県茅ケ崎市に、これまでにないエネルギーシステムをもつ農場が誕生した。“地域密着型ICT農場”を謳う、スマートブルー茅ヶ崎農場だ。同農場を運営するスマートブルーでは、「生み出したエネルギー、生産した新鮮な野菜、そして労働力を地域内に循環させることで、持続可能な地域社会づくりに貢献していきたい」と話している。
非FITだからできること
スマートブルー茅ヶ崎農場でのソーラーシェアリングの様子 出典:スマートブルー
注目したいのは、エネルギーシステムの中核を担う、独自のソーラーシェアリング。ハウス上空に設置された太陽光パネルで発電し、つくった電気は、農場内の水耕栽培設備や井戸用ポンプ、ビニール開閉システム等の電源として活用している。
FIT制度を使った売電は行わず、農場ならではの自家消費に徹しているところが最大の特徴だ。農林水産省が後押しする方向(「営農型太陽光発電システムフル活用事業」)とも合致し、大きな伸びしろのある領域となっている。
地域の防災拠点にも
同農場では蓄電池も導入し、天候に左右されることなく、再エネを利用して安定的に営農できるシステムを構築している。
また、太陽光でつくった電気を蓄電池に貯めて運用することで、大規模災害などの停電時にも、井戸用ポンプ、照明、コンセント等を昼夜を問わず使うことができるようになった。これが機能すれば、農場に“地域の防災拠点”としての役割を担わせることも不可能ではない。スマートブルーでは、非常時には、これらの設備を無償で地域住民に開放する方針だ。
農業ICT(養液管理システム、各種環境センサ、被覆自動開閉システム、モニタリングカメラ)により省力化された同農場では、養液水耕栽培により葉物野菜(レタス、ケール、ミズナ、からし菜など)を周年栽培し、地域の直売所やスーパーに出荷する計画を立てている。効率化・省力化された環境のなかで、障害を持つ人であっても、働きがい・生きがいづくりができる“農福連携モデル”としても発展させていく考えだ。
拡がり続ける、ソーラーシェアリングの可能性に期待したい。
SOLAR JOURNAL vol.35(2020年秋号)より転載