カーボンニュートラル実現に向けて。太陽光発電の最大限導入を目指す!
2021/07/07
2050年カーボンニュートラル実現に向けて、エネルギー政策をどのように展開していけばよいのだろうか。JPEAの基本的なスタンス、課題と対策、エネルギー政策への要望について、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)事務局長の鈴木聡氏に伺った。
カーボンニュートラル実現に向けて
太陽光発電の最大限導入を目指す
JPEAは、これまで太陽光発電を主として再生可能エネルギーの普及拡大に努めてまいりました。3月末には、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、JPEAの基本的なスタンス、課題と対策、エネルギー政策への要望をまとめた「ポジションペーパー」を公開させていただきました。これは、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(第39回)で意見表明した内容となります。今回は、その概要をご紹介させていただきます。
再エネ型経済社会の
主力エネルギーとなる
2050年カーボンニュートラル実現にあたっては、エネルギー政策における高い目標設定に加え、社会・生活様式・経済活動における非連続なパラダイムシフトが必要です。また、2050年エネルギー消費では、徹底した省エネと電化によりエネルギー消費量は半減する一方で、電力需要は増加するため、カーボンフリー電源の導入拡大は不可欠です。
こうした認識のもと、ポジションペーパーでは、「再エネ型経済社会への移行に際して、エネルギー政策(S+3E)の観点に基づき、太陽光発電が抱える課題を解決し、“主力エネルギー”を目指す」という基本的なスタンスを掲げています。
これを実現するための課題と対応策は、次の5つに整理されます。
(1)土地制約の解消
・農地としての活用が困難な耕作放棄地・荒廃農地の最大活用。
・地域主体のポジティブゾーンニングの全国的な普及・浸透。
・水上空間、道路・鉄道関連施設の活用等。
(2)系統制約の緩和
・配電網を含む全ての系統接続のノンファーム化。
・地産地消電源の普及拡大に向けた高圧への系統接続要件の緩和。
(3)蓄電池のコストダウン・活用
・短期:2030年の目標達成のために、需要側蓄電池の普及促進。
・中長期:太陽光併設蓄電池の大量導入。
(4)社会受容性の向上
・地域との共生に関する成功事例の共有化=JPEAの重点課題。
・太陽光発電所のリスク評価とその結果の活用=国との連携が必要。
(5)太陽光発電の「持続的なエネルギー産業」への再構築
・FITからの自立により、持続的なエネルギー事業者を中心とする太陽光発電産業に向けて、産業政策の再構築を図る。
・既存設備での長期事業化、リプレース時の既存用地・設備の最大活用。
2030年度125GW
2050年度300GW超
私どもは、昨年5月に発表したJPEAビジョンで、温室効果ガス80%削減に向けた太陽光導入シナリオを示しています。しかし、カーボンニュートラルを実現するためには、それでは足りません。2050年のマイルストーンとして、2030年における「野心的な目標」を設定し、長期・持続的な普及体制を構築していかなければなりません。具体的には、「2030年度125GW(AC)、2050年度300GW超(AC)」の導入が必要と考えます。
この導入目標を達成するための条件・課題としては、次の4つが挙げられます。
Ⅰ. コスト競争力(産業として継続して取り組む事項)
・地上設置のコスト競争力。
・屋根設置のコスト競争力。
Ⅱ.用地確保(制度支援)
・地域主体のポジティブゾーニングと地域への経済還流による地域との共生・用地開発の促進。
・耕作放棄地等の本格的な活用。
・住宅用:第3者所有モデルの普及促進。
・非住宅:自家消費モデル、コーポレートPPA、軽量太陽電池の開発促進。
Ⅲ.系統制約の克服・調整力の確保(検討加速化)
・下位系統・配電網を含めたコネクト&マネージ。
・蓄電池等のストレージコスト低減。
・再エネ自ら調整力を発揮するためのグリッドコードの整備。
・再エネ適地へ需要設備を誘致(需要側託送料金の見直し)。
Ⅳ.電力市場への統合、価値創出(官民連携での推進)
・競争力のあるアグリゲーター育成。
・スポット市場・時間前市場に加えて、蓄電池・HP給湯器・EV等の需要側リソース活用に向けた環境整備。
・非化石価値の効果的な活用による再エネ普及促進。
国のグリーン成長戦略の達成に向け、JPEAとしても最大限貢献してまいります。
PROFILE
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA) 事務局長
鈴木聡氏
1985年鐘淵化学工業株式会社(現株式会社カネカ)に入社。研究開発部門、知的財産部門、研究企画部門などを経て、2019年6月より現職。
取材・文:廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.37(2021年春号)より転載