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米脱炭素化で高まるソーラーの貢献。拡大する電化で、電力需要の45%を供給

電力部門のクリーンエネルギー化が近年加速しているが、電力のみならず、建物、運輸、そして産業分野と全てのエネルギーシステムで脱炭素化に移行するために、ソーラーの役割がさらに拡大すると予測されている。

メイン画像:米国の脱炭素化におけるソーラーの役割を分析調査した「ソーラーの未来像研究(Solar Futures Study)」レポート、出所:USDOE

米全エネルギー部門の
脱炭素化目指す

世界が温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」に向けて動き出している。米国も例外でなく、バイデン政権は、2035年までに米国の電力網を脱炭素化し、さらに長期ゴールとして、2050年までに電力部門だけでなく、米国の経済全体における温室効果ガスの排出をゼロにするという目標を設定した。

今年9月には、米国エネルギー省(USDOE)が、米国の脱炭素化におけるソーラーの役割を分析調査した「ソーラーの未来像研究(Solar Futures Study)」と題したレポートを発表した。この調査は、バイデン政権の目標である「2035年までに電力網を脱炭素化する」というビジョンを中心に構成されている。さらに、建物(住宅と商業施設)、運輸、および産業部門でのエネルギー需要の電化により、2050年までに、米国エネルギーシステムにおけるソーラーの貢献度も分析されている。

ちなみに、ここでいう「ソーラー」は、主に太陽光発電のことを指すが、集光型太陽熱発電(CSP)も含まれていれる。2020年末時点で、米国内で導入されたソーラーは累積約80GW(連系出力)だが、これは米国総電力需要の約3%に匹敵する。レポートによると、ソーラーの電力需要に占める貢献度は、2035年までに40%、さらに2050年までに45%に拡大すると予測されている。2050年の45%という数字は、累積連系出力約1600GWに匹敵する。

レポートでは、3つのシナリオに基づいてソーラーの導入量が分析されている。

「参照」シナリオ:継続的で中程度の技術コスト削減を想定して、既存の州および連邦政府の政策を含むが、電力部門を脱炭素化するための包括的な目標がない場合。

「脱炭素化」シナリオ:新政策により、2035年までに電力部門の二酸化炭素排出量が2005年のレベルから比べて95%削減され、2050年までに100%削減される場合。

「脱炭素化+電化」シナリオ:上記の電力部門の脱炭素化の想定プラス、建物や運輸部門などによりエネルギー需要の大幅な電化、それに伴う電力需要の増加と電力網の拡大も想定に含まれる。

米国のシナリオ別ソーラー累積導入推移

「脱炭素+電化」シナリオでは
ソーラーが米国電力需要の45%を供給可能


「脱炭素化+電化」シナリオでは、2050年までに累積約1600GWのソーラーが導入されることになり、これはソーラーが45%の電力需要を供給するのに匹敵する。
単位:GW(連系出力) 出所:USDOEの資料を元に編集部が作成

2つの脱炭素化シナリオは、ソーラー、その他の再エネ(陸上および洋上風力、地熱、水力など)、さらに、貯蔵技術の「参照」シナリオよりも先進的なコスト削減が想定されている。

電化拡大で2050年
ソーラーの貢献度45%へ

2035年までに電力部門の脱炭素化95%を達成するには、米国は現在から2025年までに年間連系出力30GWのソーラー、2025年から2030年までに年間60GWのソーラーの導入拡大が必要であるとしている。これは、2020年の年間導入量の約15GWから、2倍、そして4倍へ増加することになる。

ソーラーに加え、風力およびエネルギー貯蔵の導入率も加速するとしている。電力部門だけではなく、建物、運輸、産業部門の燃料ベースを電化することで、2020年から2035年にかけて電力需要が約30%増加すると予想されており、さらに、2050年までに全部門が電化されると、2035年から2050年にかけて、電力需要はさらに34%増加するとされている。レポートは、クリーンな電力供給を拡大することで、より深い脱炭素化が実現できるとしている。これらの部門の電化により、ソーラーは、2050年までに建物エネルギーの30%、運輸エネルギーの14%、さらに、産業エネルギーの8%を供給するようになると予測されている。

「脱炭素化+電化」シナリオの電源構成とエネルギーフロー(2020年・2035年・2050年)

拡大する米国の電力需要は
脱炭素電源で賄われてゆく


建物、運輸、および産業部門の電化への移行により、電力の需要と供給がいずれも拡大。さらに電力供給のほとんどは、ソーラーやその他のカーボンフリー電源から供給されるようになる。 
出所:USDOEの資料を元に編集部が作成

具体的な電源構成と電力需要を見てみよう。2020年時点では、米国の電力供給の約60%が1000を超える石炭および天然ガス発電所で構成されていたが、レポートの「脱炭素化+電化」シナリオでは、2035年までには、ソーラーが約37%を占め、残りは風力(36%)、原子力(11%〜13%)、水力発電(5%〜6%)、およびバイオと地熱(1%)のカーボンフリー電源と、二桁を下回った化石燃料で構成されている。電力需要は2020年から2035年にかけて約30%増加すると予測されている。

この2020年から2035年までの傾向は、2035年から2050年まで続き、主に運輸分野の継続的な電化により、電力需要はさらに40%増加する。「脱炭素化+電化」シナリオでは、2050年には100%カーボンフリー電源となり、ソーラー(45%)と風力(44%)、および原子力(4%)、水力(4%)、水素(2%)などゼロカーボン合成燃料で稼働する燃焼タービンと、バイオパワーと地熱(1%)で構成されている。

これらの脱炭素化の目標を達成するには、既存の化石燃料ベースの発電所をゼロカーボンエネルギー源に移行する必要があり、それに伴い、今後数十年にわたって電力部門と、より広範なエネルギーシステムの前例のない変革がもたらされるとしている。ソーラーは、何十年にもわたる革新とコスト削減を経て、急速に成熟しており、今後の継続的な研究、開発、展開により、米国の電力需要の40%以上に対応することもできるのではないか、と予測されている。

DATA

米国エネルギー省「ソーラーの未来像研究(Solar Futures Study)」

PROFILE

モベヤン・ジュンコ

太陽光発電電池メーカーで7年間産業経験を積んだ後、2006年から太陽光発電調査会社米ソーラーバズでシニアアナリストとして活躍。2013年よりジャーナリストとして、米国の太陽光発電政策や市場トレンドに関する記事を日欧米のメディアに多数執筆。


文:モベヤン・ジュンコ

SOLAR JOURNAL vol.39(2021年秋号)より転載

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