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【北村さんコラム】太陽光先進国”の日本、今後の成長株は『屋根置き』

 脱炭素ツールの一番手として、今年も世界で強い伸びを見せる太陽光発電であるが、日本ではこのところ地元の反対運動などで、逆風も感じられてきている。そこで政府が打ち出した施策の一つが、工場や店舗の屋根への設置目標の策定に関する義務化である。今回のコラムでは、なぜ政府が屋根置きに目を付けたのか、その背景とビジネスチャンスについて解説したい。

<目次>
1.2026年度から、「工場や店舗など屋根置き太陽光の設置目標」義務化
2.屋根上の有効利用が遅れる日本、見える事業チャンス
3.屋根置きのメリットとペロブスカイト太陽電池への期待

 

2026年度から、「工場や店舗など屋根置き太陽光の設置目標」義務化

覚えているだろうか、1970年代の「サンシャイン計画」に象徴されるように、日本は世界に先駆けて太陽光発電導入を進め、長く、太陽光先進国を自負してきた。ところがここに来て、累積導入量でドイツやインドにまで抜かれて後塵を拝し、世界5位に順位を下げている。

問題はランキングより、毎年の追加導入量が落ちてきていることである。昨年の日本の導入容量は、高く見積もってもおよそ5GW程度で、例えば、15GWを越えたドイツのわずか3分の1でしかない。何より2030年度、2040年度など、エネ基で求められる再エネ拡大の水準到達が、このままでは危うくなってしまう。

危機感を持った政府が示したのが、屋根置き太陽光の設置の普及拡大を進めるための新しい方針である。

政府の打ち出した「屋根置き太陽光の設置目標の義務化」 出典:資源エネルギー庁など

上の表が、その概要を示している。

まず、一定の要件を満たす事業者に、屋根上太陽光の設置目標を「中長期計画書」として、2026年度から提出させることから始める。対象となる事業者は、「特定事業者」と呼ばれる。前の年度のエネルギー使用量が、原油換算で年間1,500キロリットル以上の事業者がそれにあたり、およそ1万2千事業者、1万4千施設あるとされる。

2027年度からは、毎年、パネルの設置可能面積や発電の出力に加え、導入すればその実績の報告義務が発生する。報告を怠るとペナルティが課せられるという本気度である。

屋根上の有効利用が遅れる日本、見える事業チャンス

一見厳しい義務化のように映るが、実は、背景に裏打ちされたデータがある。結論から言うと、日本の屋根置きにはまだかなりのポテンシャルがあるということである。

そこで、ドイツの太陽光発電の実態からお話をしていこう。

日本を抜いて、世界4位の太陽光発電導入国となったドイツは、昨年末、ちょうど導入容量が100GWを越えた。今年も順調に拡大を続けていて、11月下旬の時点で、すでに14GWが導入されている。

下のグラフは、連邦ネットワーク庁のデータをベースにして、ドイツ太陽光発電協会がまとめたもので、設置済み太陽光の設置形態を示したものである。

ドイツの太陽光発電の導入形態(2024年末) 出典:BSW-Solar

導入容量が100GWなので、それぞれの導入容量がパーセントとイコールになる。

それで見ると、円グラフ左の「住宅用屋根置き」がトップの38GW、つまり38%と4割近くを占める。そして、下側の「産業用屋根置き」が29%で、屋根置きの合計は、7割に迫る。一方、野立ては右側の黄色い部分で32%と全体の3分の1となっている。

気になる向きもあるかと思うのでコメントしておくが、上側のほんの少し(0.7%)のオレンジ部分は、最近急速に拡大している「プラグインソーラー」であり、800Wと小さいパネルを張ったバルコニー発電を示している。
 
戻るが、ドイツは、屋根置きが7割、野立てが3割の構成なのである。翻って、日本はと言うと、これがまず問題は政府の正式な統計が見当たらない。自然エネルギー財団によると、2021年度までの累計が以下となっている。

◆日本の太陽光発電の設置形態(2021年度)
 屋根置き、住宅系: 16.6GW 21%
 屋根置き、非住宅系:15.0GW 19%
 野立て:       46.7GW 60%

出典:自然エネルギー財団

屋根置きが合わせて4割、野立てが6割で、ドイツとは反対になっている。よく、資源エネルギー庁が、日本は平地が少なく適地では太陽光パネルを敷きつくしたような統計を示すが、その表現の虚実はともかく、屋根上の利用が遅れているのは、数字に表れている。自然エネルギー財団は、屋根置きの追加ポテンシャルを2035年度末までにプラス127GW程度としている。

そういう意味では、政府が屋根置きに期待して、新規の政策を打ち出したことは納得できるといってよい。

屋根置きのメリットとペロブスカイト太陽電池への期待

多くのみなさんがおわかりのように、自宅や自社の上にパネルを置けば、ほぼ必ずと言っていいほど、現在よりも安い電気が手に入る。費用の負担が厳しければ、オンサイトPPAで、初期費用なしで導入する方法も普及してきている。今後は、設置目標の義務化に伴って、様々な支援策もでてくるであろう。

例えば、「屋根設置への初期投資支援スキーム」は、FIT/FIP期間を短縮する代わりに、買い取り価格を大幅にアップする仕組みであるが、すでにスタートしている。また、耐荷重で屋根に載らないという場所や壁などには、政府“一推し”のペロブスカイト太陽電池などの軽量型が対応することになる。

温暖化防止は何度も言うように現世代の義務である。また、脱炭素は地域経済の救世主になる可能性を秘めている。再エネ拡大のポテンシャルを見過ごすことは、ビジネスチャンスを逃すことにつながるのである。

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。

日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ
地域活性エネルギーリンク協議会

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