EMS関連の国内市場 2040年にかけ中小規模の施設でも導入拡大へ
2025/05/21

エネルギーマネジメントシステム(EMS)関連の国内市場の拡大が予想される。カーボンニュートラル実現に向けた取り組みや、人手不足対策としてのDX化ニーズの高まりなどの影響により、2040年にかけて中小規模の施設でも導入拡大が期待される。
EMS関連の国内市場は拡大
2040年度は23年比2.2倍に
富士経済は、エネルギーマネジメントシステム(EMS)5市場と関連システム6市場、関連サービス6市場、関連ハードウェア13市場を対象とした調査を、「エネルギーマネジメント・パワーシステム関連市場実態総調査 2025」としてまとめ、EMS関連の国内市場の展望を示した。
EMS関連の国内市場(出典 富士経済)
2050年のカーボンニュートラルの実現を目指し、温室効果ガス(GHG)排出量の把握やエネルギー使用状況の細分化・見える化などのため、EMSや関連システムのニーズが高まっている。また、グリーン電力メニューの拡充などを背景に再生可能エネルギーの導入が加速しており、太陽光発電や蓄電システムなどの需要も増加している。人手不足対策としてのDX化も進んでおり、空調や電気設備などの遠隔監視や、利用者の快適性や混雑状況などのデータに基づいた最適制御が進んでいる。
こうした背景により、24年度のEMS関連国内市場は1兆5303億円に拡大すると見込まれている。さらに、今後GHG削減や脱炭素の取り組みが中小事業者にまで波及するとみられることや、人手不足により自動化・省力化関連システムなどの市場も拡大する見込みから、40年度の国内市場は23年度比2.2倍の3兆1678億円と予想される。
BAS、BEMSは
中小規模の需要が拡大
BASの国内市場(出典 富士経済)
BAS(Building Automation System)は、大規模オフィスや工場などにおいてBEMS(エネルギー監視特化型システム)を含む設備管理システムを統合する中央監視システムだ。40年度の市場規模はシステムが556億円で23年度と同程度、サービスが58億円で同約2倍と予想されている。
これまでは大規模オフィスビルなどの更新需要があったが、人口減などに伴い減少が見込まれる。一方、首都圏の再開発や人手不足による建物管理の省力化ニーズの高まりから、複数拠点の統合管理用の導入や、中小規模の施設でも安価に導入できるクラウドベースのシステムが広まり、市場をけん引するとみられている。
BEMSの国内市場(出典 富士経済)
BEMSは主に中小規模の業務・産業施設向けのエネルギー管理に特化したEMSで、省エネ・脱炭素などを目的に製造業などで導入が増えている。今後は中小事業者にも省エネ用途での需要増加が見込まれ、40年度はシステムが350億円で23年度比3倍、サービスが290億円で同2.5倍と予想されている。
ディスアグリケーションサービスや
建物OSも大幅な成長が期待
ディスアグリケーションサービスの国内市場(出典 富士経済)
電力スマートメーターや分電盤の計測値を用いて、家庭内の機器ごとの電力使用状況を可視化するディスアグリケーションサービスは、使用時間帯なども把握できることから、介護など多様なサービスとの連携が予想されている。30年代半ばには大半の住宅で次世代スマートメーターに置き換わるという予測から、40年度の市場は23年度比32倍の96億円と予想されている。
建物OSの国内市場(出典 富士経済)
建物OS(Operating System)・ビルOSは、空調などの建物設備やテナント管理など建物にかかわる情報を統合管理し、建物運用をデジタル化するシステムで、22年度頃から大規模物件を中心に導入された。業務ロボットとエレベーターの連携運転や、複数拠点の設備統合管理なども可能で、建物管理の省力化ニーズから導入が増加している。40年度の市場はシステムが23年度比140倍の700億円、サービスは同170倍の680億円と見込まれている。
DATA
富士経済 エネルギーマネジメントシステム(EMS)関連の国内市場を調査
取材・文/ダブルウイング
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新たに策定された「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の再生可能エネルギーの導入量を大幅に引き上げる目標を掲げています。そのためには特に導入がしやすい太陽光発電と蓄電池の普及を加速させる必要があります。経済産業省や環境省の2025年度の政策方針とともに、産業用の自家消費やPPA、系統用蓄電池の最新動向、国内外で開発された最新テクノロジーなどを紹介します。