FIT「初期投資支援スキーム」スタート。太陽光+蓄電池の導入を後押し
2025/12/18
2025年10月からFIT認定案件に「初期投資支援スキーム」が適用開始。前期の買取価格を大幅に引き上げ、太陽光発電の初期費用回収を加速する。GX ZEH改定とあわせて、住宅市場は“太陽光+蓄電池”標準化の新時代へ。
初期投資支援スキーム
の適用へ
太陽光発電における自家消費の拡大は、FIT・FIP価格の下落と表裏一体でもある。FIT・FIPで売電しても大きな経済的メリットが得られず、自家消費をして買電量を減らしたほうがお得な状況になって久しい。
しかし、いまFIT・FIP制度が再び大きなメリットをもたらそうとしている。この10月のFIT認定案件から「初期投資支援スキーム」が適用されることになったからだ。初期投資支援スキームは、屋根設置の太陽光に適用されるもので、もちろん住宅用太陽光もその対象となる。
2段構えのFIT価格
前期の買取価格を大幅アップ

出典:調達価格等算定委員会の資料を基に筆者作成
初期投資支援スキームは,FIT・FIP期間を2つに分けて、前期の価格を高く、後期の価格を低くする新制度。住宅用太陽光の場合でいうと、FIT期間の10年間を初めの4年間と残りの6年間に分ける。そして、初めの4年間を初期投資支援期間とし、その間の価格を24円/kWhに引き上げる。残りの6年間については、8.3円と初めの3分の1程度に抑えるというものだ。
手厚い補助で
早期の投資回収が可能に

出典:調達価格等算定委員会の資料を基に筆者作成
FIT期間をとおしてトータル金額が高くなるわけではないが、初めに高い単価で買い取ってもらえるメリットは大きい。太陽光発電設備の設置に要した初期費用を早めに回収することができるようになる。
また、投資回収の早期化を前提に、蓄電池など自家消費拡大に向けたシステムも導入しやすくなる。
FIT初期投資支援と
ZEH改定が拓く新市場
ZEHの改定は、住宅市場において「太陽光+蓄電池」が標準装備化する未来を引き寄せる。これにより、住宅施工事業者は設計・施工の段階から太陽光と蓄電池を前提とした住宅を提案することが求められ、太陽光関連事業者にとっては需要拡大の機会となる。
さらに、FIT制度に導入された「初期投資支援スキーム」が、この潮流を後押しする。初期費用の回収を前倒しする仕組みは、導入に慎重だった施主層に対しても強力なインセンティブとなる。
事業者にとっての戦略は明快だ。ハウスメーカー・施工業者はGX ZEH対応住宅を先行投入し、補助金やローン優遇を組み込んだ提案で顧客を惹きつけること。太陽光関連事業者は住宅会社との連携を深め、初期投資支援スキームを前提にした資金回収シナリオを提示すること。いずれの事業者にとっても、制度をどう使いこなすかが競争優位を左右する時代に突入しているのだ。
取材・文:廣町公則
SOLAR JOURNAL 住宅特別号(2025年秋)より転載
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