蓄電池とエネルギーマネジメントがカギ 日本PVプランナー協会が語るEPCの未来
2026/06/29
FIT制度に牽引されてきた太陽光発電市場は、大きな転換期を迎えている。地域のEPC事業者は、どのような道筋で生き残りを図るべきなのか。日本PVプランナー協会を訪ね、その処方箋を探った。
【日本PVプランナー協会によるソーラーシェアリング視察の様子】
1.地域のEPC事業者は今 どんな課題に直面しているのでしょうか?
2.新たな市場環境の中で EPC事業者が取るべきビジネス戦略は?
3.地上設置型の太陽光には もう可能性はないのでしょうか?
4.技術面や運用面において 差別化を図るために着手すべきことは?
5.日本PVプランナー協会の現状と会員サポート EPCへのメッセージ
地域のEPC事業者が
直面している課題とは?

【日本PVプランナー協会 関東地区会の様子】
森上氏:太陽光発電市場は、FIT制度によって急速に拡大しましたが、現在は明確に構造転換の局面にあります。FIT期において、一番の主役は個人・法人の投資家であり、野立て発電所を開発し、それを販売するというモデルが市場を牽引してきました。
しかし現在は、CO2削減や電力コストの抑制といった経営課題を背景に、企業を中心とした実需家が主役となりつつあります。発電の目的が「投資利回りの確保」から「エネルギーマネジメントの最適化」へと転換したことが、市場の本質的な変化です。この変化により、従来のビジネスモデルは、そのままでは成立しなくなりました。
加えて、設置形態も大きく多様化しています。従来の野立て中心から、工場や物流施設の屋根、営農型太陽光、ソーラーカーポート、さらには壁面設置といった新たな領域へと拡張しています。これに蓄電池の導入も加わり、システム構成自体が複雑化してきています。
こうした環境下では、各設置形態に応じた施工技術に加え、法規制や制度への理解も不可欠です。結果として、EPC事業者には従来以上に広範な知識と対応力が求められています。
新たな市場環境の中で、
EPC事業者が取るべきビジネス戦略は?
森上氏:まず前提として、FIT時代のような単一の成功モデルは存在しなくなっています。今後は、それぞれの企業が持つ技術や顧客基盤に応じて、複数の事業領域の中から最適なポジションを選択していく必要があるでしょう。
具体的には、産業用の自家消費案件、企業向けPPA、屋根設置特化型、あるいは地域密着での需要家対応といった方向性が考えられます。また、非FITの野立て案件を大規模事業者に供給する役割や、O&M、セカンダリー市場への関与といった領域も広がっています。さらに、ソーラーカーポートや蓄電池併設など、周辺領域を含めた事業展開も選択肢となります。
中でも重要なのは、施工で完結するビジネスから脱却し、運用やエネルギーマネジメントを含めた提案型ビジネスへと進化できるかどうかです。需要家にとっての価値は、発電設備そのものではなく、エネルギーコストの最適化や脱炭素への貢献、BCP対策などにあります。そのため、必要に応じて外部の専門企業とも連携しながら、設備導入後の運用まで含めて提案できる体制が求められます。
また、アグリゲーターとの連携も今後は重要になってきます。特に蓄電池を含むビジネスにおいては、発電した電力の価値を最大化するための市場連携が不可欠となり、単独で完結するビジネスモデルからの転換が求められています。
地上設置型の太陽光には、
もう可能性はないのでしょうか?
大槻氏:売電を前提とした大規模野立て開発が難しくなる中で、地上設置の新たな柱としてソーラーシェアリングに改めて関心が寄せられています。農業や地域への貢献が可能であることから国の政策とも親和性が高く、今後も成長が期待できる分野として、電力会社や農業機械メーカーなど大手企業の参入も進んでいます。
森上氏:ただし、営農型は単に発電設備を設置すれば成立するものではありません。経済性に加え、作物の生育条件や営農方法を踏まえた設計が前提となります。また、既存事例のデータを提示し、農業従事者の不安を解消することも重要です。
さらに、農地転用や農業委員会との調整、地域住民との合意形成など、非技術的な要素も大きな比重を占めます。こうした領域まで対応できる事業者が、今後の営農型市場において優位性を持つと考えています。
技術面や運用面において、
差別化を図るために着手すべきことは?
大槻氏:今後の差別化の中心は、蓄電池とエネルギーマネジメントの領域になると見ています。現時点では蓄電池の導入はまだ限定的ですが、コスト低減が進むにつれて導入は加速していくと考えられます。
ただし、重要なのは単なる機器導入ではなく、その活用方法です。需要家ごとの電力使用特性を踏まえ、どの規模の蓄電池を、どのように運用するのかを設計できる力が問われます。この設計力が、今後の事業者の競争力を左右するポイントになっていくでしょう。
森上氏:太陽光発電と蓄電池を組み合わせた場合、発電量と消費電力の関係をどう設計するかが非常に重要です。余剰電力を売電するのか、蓄電して夜間に活用するのか、あるいはピークカットに使うのかといった判断は、需要家ごとに異なります。
また、エネルギーマネジメントにおいては、太陽光の発電電力を最大限に活用しながら、電力料金の最適化を図ることが求められます。こうした設計・運用の知見は、従来の施工中心のビジネスとは大きく異なる領域であり、今後の重要な差別化要素となります。
さらに、需給調整市場の拡大により、蓄電池を活用した新たな収益機会も生まれています。しかし、電力市場は制度的に発展途上にあり、その正確な理解と時機を見た対応が必要です。
日本PVプランナー協会の現状と会員サポート、
EPCへのメッセージ
森上氏:現在、業界では明確な入れ替わりが起きています。FITに依存したビジネスを展開してきた事業者が退出する一方で、新しい事業機会を見据えて参入する企業も増えています。協会の会員動向を見ても、退会と新規加入が同時に進んでおり、構造転換が現実のものとなっています。
その中で、協会としては施工ネットワークの整備や政策情報の共有、研修の実施などを通じて、会員企業の支援を行っています。特に経産省や環境省の審議会情報の共有により、制度変更の方向性を事前に把握できる点は、事業戦略を考える上で重要な要素でしょう。
また、業界全体としては人材不足も大きな課題です。特に電気工事士などの技術者が不足しており、他業種からの参入や教育機関との連携必要になっています。
繰り返しになりますが、最終的には、施工だけでなく、需要家の課題に応える提案力を持てるかどうかが、今後の成長を左右します。市場環境の変化は大ですが、それは同時に新たな機会でもあります。変化に適応し、自らの強みを再定義できる事業者が、次の市場を担っていくことになるでしょう。協会の活動領域も広がっています。共に研鑽を積み、健全で持続可能な市場を築いていきましょう。
理事長 森上寿生氏

事務局長 大槻浩之氏

DATA
一般社団法人 日本PVプランナー協会
東京都千代田区神田三崎町3-2-13 秋和ビル202号室
TEL:03-6256-9970
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.57(2026年57号)より転載







