「バーチャルPPA」とは? その仕組みやメリット、制度の動向を解説!
2022/03/28
再エネ電力などの調達方法として関心が寄せられる「バーチャルPPA」。PPAとは発電事業者と需要家が直接契約する電力調達の仕組みだが、バーチャルPPAは通常のPPAとどのように異なるのか? 今後の制度の動向も交え、わかりやすく解説する。
バーチャルPPAは環境価値を取引
電力の調達先はそのままでOK
そもそもPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)とは、発電事業者と需要家による直接の電力の売買契約のことだ。契約期間を長期とすることで、双方にとって見通しを立てやすくするメリットなどがある。企業によるPPAを「コーポレートPPA」と呼ぶ。
コーポレートPPAは、契約の対象となる発電所がどこに位置するかによって「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」に分類される。オンサイトPPAとは、需要家の敷地内に建設した発電所を活用するもので、屋根置きの太陽光発電を利用するケースなどが多く見受けられる。(参考:キリンHD、すべての国内工場にPPAモデル導入へ。合計11MW超で国内最大級に|SOLAR JOURNAL)
一方で、オフサイトPPAは需要家の敷地の外に建設した発電所から電力を調達する。さらに、オフサイトPPAは、電力と環境価値を一緒に取引する「フィジカルPPA」と環境価値のみを取引する「バーチャルPPA」に分けられる。
環境価値とは、CO2を排出しない方法で発電された電力がもつ、環境に負荷を与えないという価値のことだ。この環境価値を、取引に適した形に変えたもののひとつが「非化石証書」である。
(出典:自然エネルギー財団『日本のコーポレートPPA 契約形態、コスト、先進事例』)
バーチャルPPAでは、需要家はこの非化石証書だけを新たに購入することができ、電力の調達先を変更する必要はない。このように、電力を伴わない環境価値のみの取引であることから、バーチャルPPA(仮想の電力購入契約)と呼ばれる。
一方で、発電事業者は、発電した電力をすべて市場に売却する。この場合、通常であれば売電収益は市場価格によって変動する。しかし、バーチャルPPAでは、発電事業者の収益が一定になるように、小売電気事業者などが固定価格と市場価格との差額を精算する。つまり、発電事業者にとってのバーチャルPPAのメリットは、売電収益を長期にわたり固定化できる点にある。
電源の新設促すコーポレートPPA
発電事業者との直接取引も解禁へ
このようなメリットのあるバーチャルPPAだが、現在、日本では発電事業者と需要家との直接の契約は認められていない。そのため、上図のように小売電気事業者を介在させて取引する必要がある。
一方で、コーポレートPPAには、発電事業者・需要家の将来の見通しを立てやすくすることで、電源の新規投資を促す効果も期待できる。そのため、経済産業省は新設の非FIT再エネ電源によるコーポレートPPAに限り、発電事業者と需要家との直接取引を認めることを検討している。
2月17日の経産省の第62回 制度検討作業部会では、発電事業者・需要家の直接取引の条件として、新設の非FIT再エネ電源に加え、卒FIT電源を加える案が提示された。また、新設の非FIT再エネ電源については、2022年度から運転を開始するものを対象とする方向性も示された。
DATA
自然エネルギー財団:日本のコーポレートPPA:契約形態、コスト、先進事例
経済産業省 第62回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会
文:山下幸恵(office SOTO)