【2025年度の新制度①】早期連系追加対策・初期投資支援・省エネ基準適合義務化を徹底解説
2025/03/21

「エネルギー基本計画」を追い風に、PV事業環境が変わる! 第7次エネルギー基本計画が公表され、太陽光発電導入拡大の必要性が改めて示された。目標を実現すべく、いま様々な導入促進策が動き出そうとしている。2025年度からスタートする新制度を中心に、今後の事業環境に大きな変化を与えるだろう太陽光関連施策を紹介する。
1. 第7次エネルギー基本計画~太陽光発電に関する政策方針~
1.1. 2040年度におけるエネルギー受給の見通し
2. 2025年度から系統用蓄電池の早期連系追加対策
2.1 充電制限のイメージ
2.2. 早期連系追加対策の実施にかかる主な費用(蓄電池設置事業者等が負担)
2.2. 2025年10月から適用開始 屋根設置への初期投資支援スキーム
3.1. 初期投資支援スキームのイメージ
4. 2025年度から建築物の「省エネ基準」適合義務化
4.1. 太陽光発電設備の1次エネルギー消費量削減効果
第7次エネルギー基本計画
~太陽光発電に関する政策方針~
2040年度におけるエネルギー受給の見通し
出典:資源エネルギー庁
2025年度から系統用蓄電池の
早期連系追加対策
再エネの安定化に役立ち、出力制御の低減や調整力提供が期待される系統用蓄電池だが、現在、系統連系に滞りが生じている。2024年9月末時点で、連系済みの系統用蓄電池が約10万kWであるのに対し、接続契約受付は約620万kW、接続検討受付は約8800万kWに達している。
こうした状況を打開するための暫定措置として、系統増強することなく系統接続を認める対策(早期連系追加対策)を導入することとなった。具体的には、系統用蓄電池の充電により、蓄電池を含む需要が系統の運用容量を超過することが想定される場合に、特定の断面における充電を制限することを前提として、当該系統を増強することなく系統接続を認める運用(充電制限契約)を導入する。
充電制限の方法としては、一般送配電事業者が「系統特性や蓄電池の設備容量等を元に、あらかじめ充電を制限する時間帯を設定」し、蓄電池設置事業者(蓄電池運用者を含む)が「当該時間帯における充電を制限することのできるシステム的セーフティ機器を導入する」ことで、これに対応する。なお、早期連系追加対策の実施にかかる費用(下記)は、蓄電池設置事業者(蓄電池運用者を含む)が負担することとなる。
充電制限のイメージ
出典:資源エネルギー庁(総合資源エネルギー調査会 系統ワーキンググループ)
早期連系追加対策の実施にかかる主な費用(蓄電池設置事業者等が負担)
1 充電制限に伴う機会損失
2 システム的セーフティの機器の設置費用や、当該機器の更新、保守・運転、廃止にかかる費用
3 仮にシステム的セーフティが機能せず、当該事業者以外の設備等に損害を与えた場合の復旧費用および、それに伴う第三者からの損害賠償費用 等
⇒「充電制限」を前提に、迅速な系統連系を約束
系統増強なしでも接続できる新スキームで、系統用蓄電池の連系問題解消へ。
2025年10月から適用開始
屋根設置への初期投資支援スキーム
FIT/FIP期間を2つに分けて、初期投資支援期間の価格を大幅アップ
初期投資支援スキームは、FIT/FIP制度における屋根設置太陽光の導入促進策。2025年度下半期(10月~)から、早くも適用される。 同スキームは、従来のFIT/FIP期間を2つに分け、前期を初期投資支援期間として、その価格(FITは調達価格/FIPは基準価格)を高めに設定するというもの。これまでもFIT/FIP制度では、事業用太陽光に屋根設置区分を設定(2023年10月~)し、地上設置区分より高いFIT/FIP価格とするなど、屋根設置の積極推進を図ってきた。初期投資支援スキームは、この流れを強化するものであり、屋根設置太陽光における早期の投資回収を可能にすることで、需要家の導入意欲を喚起する狙いがある。
初期投資支援スキームは、住宅用太陽光(FIT)と事業用屋根設置太陽光(FIT/FIP)、それぞれに用意される。住宅用は、調達期間の10年を4年と6年に分け、初めの4年間を初期投資支援期間とし、価格は24円/kWh(初期投資支援価格)に設定される。そのうえで、5年目から10年目までの価格は8.3円/kWhに抑えられる。事業用屋根設置では、初めの5年間を初期投資支援期間とし、その間のFIT/FIP価格は19円/kWhとなる。残りの15年間については8.3円/kWhとなる見通しだ。
なお、初期投資支援価格は、自家消費による経済性を妨げないよう配慮するとして、一般的な電気料金(家庭用電気料金27.31円/kWh、産業用電気料金を19.56円/kWh)を上回らない水準に設定された。
初期投資支援スキームのイメージ
出典:資源エネルギー庁(調達価格等算定委員会)
⇒FIT/FIP期間を2つに分けて、初期投資支援期間の価格を大幅アップ
2025年度から
建築物の「省エネ基準」適合義務化
2025年4月に改正建築物省エネ法が施行され、省エネ基準への適合義務化がスタートする。これまでは300㎡以上の中規模建築物・大規模建築物だけが対象だったが、4月からは原則として、住宅を含むすべての建築物について、新築・増改築をする際に省エネ基準への適合が義務づけられる。建築確認手続きのなかで、省エネ基準への適合性審査が実施されることになる。
審査にあたっては、住宅の場合は「外皮性能(外壁・窓等の熱損失量)」と「一次エネルギー消費量基準」に、非住宅の場合は「一次エネルギー消費量基準」に、それぞれ適合する必要がある。一次エネルギー消費量の算定においては、太陽光発電等による創エネ量は控除されるので、太陽光発電設備導入よる効果は極めて大きい。
省エネ基準適合義務化の背景には、エネルギー基本計画で掲げられた「2030年までに新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を設置する」などの屋根設置太陽光導入促進に向けた基本方針がある。省エネ基準適合義務化は、建築業界だけでなく、太陽光発電業界にとっても追い風となる。
太陽光発電設備の1次エネルギー消費量削減効果
出典:国土交通省
⇒太陽光発電設備により省エネ基準をクリア
改正建築物省エネ法施行により、すべての新築住宅・非住宅が適合義務化の対象に。
※2025年1月20日時点の最新情報であり、導入時期など制度の詳細については今後変更となる可能性もある。
取材・文:廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.52(2025年冬号)より転載
4月22日(水)に開催する「第33回PVビジネスセミナー」では、公益財団法人自然エネルギー財団研究局長の石田雅也氏が「脱炭素ビジネスを推進するコーポレートPPAの最新動向」というテーマで講演します。
新たに策定された「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の再生可能エネルギーの導入目標を大幅に引き上げる必要に迫られており、そのためには特に導入が容易な太陽光発電と蓄電池の普及を加速させる必要があります。いま注目のコーポレートPPAの最新動向や、2025年度の環境省の政策方針、国内外で開発された最新テクノロジーを紹介します。