政策・制度

中規模の非住宅建築物の省エネ基準を強化。2026年度から大規模建築物並みに

来年度から中規模の非住宅の省エネ基準が強化され、太陽光発電設備の導入や省エネ対策の重要性が高まる。太陽光発電業界が知るべき改正のポイントを探る。

 

<目次>
1.カーボンニュートラルに向けた建築物分野の省エネが急務
2.改正建築物省エネ法で省エネ対策を加速化
3.中規模建築物の省エネ基準を大規模建築物並みに引き上げ
4.太陽光発電の導入や省エネ対策のニーズが高まる

 

カーボンニュートラルに向けた
建築物分野の省エネが急務

2026年4月1日から、中規模の非住宅建築物の省エネ基準が大規模建築物並みに強化される。対象となるのは、新築・増改築を行う部分の床面積が300㎡以上2000㎡未満の非住宅用建築物だ。これによって、太陽光発電業界にどのような影響が予想されるのか、省エネ基準の考え方を含めてみていこう。

政府は、50年のカーボンニュートラル実現、ならびに30年の温室効果ガス46%削減(13年比)を国際公約として掲げている。これらの目標を達成するには、日本のエネルギー消費の約3割を占める建築物分野における省エネ対策を加速する必要がある。そのため、国土交通省は、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指しており、その対象を30年には新築、50年にはストック(既存の住宅)の平均にまで拡大することを目標にしている。なお、ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」、ZEBとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略語で、年間の一次エネルギーの収支がゼロ以下の住宅やビルを指す。つまり、使うエネルギーの量をつくるエネルギーの量が上回る建築物のことだ。

 

 

改正建築物省エネ法で
省エネ対策を加速化

こうした背景から、22年に改正した建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)では、次の4点を省エネ対策の加速化の柱としている。


出典:国土交通省より筆者作成

1つ目は、「省エネ性能の底上げ」で、今年4月から、原則としてすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準の適合を義務付けている。

2つ目は、「より高い省エネ性能への誘導」であり、大手事業者により高い省エネ性能の達成を促すため、住宅トップランナー制度の対象に分譲マンションを新たに含めた。また、住宅・非住宅建築物の販売・賃貸において、省エネ性能表示制度を昨年度から強化した。

3つ目の「ストックの省エネ改修」では、住宅の省エネ改修の低利融資制度を創設した。

そして、4つ目の「再エネ利用設備の導入促進」においては、再生可能エネルギー利用促進区域制度を創設し、市町村が地域の実情に応じて再エネ設備の設置を促進するゾーニングの仕組みを整えた。

中規模建築物の省エネ基準を
大規模建築物並みに引き上げ


出典:国土交通省より筆者作成

冒頭に述べた中規模の非住宅建築物についての省エネ基準の強化は、これらの4つの柱の1つ目に該当する。来年4月からは、これまで2000㎡以上の大規模建築物を対象としてきた省エネ基準が、中規模の建築物にも適用されるということだ。具体的には、用途別に定められた省エネ基準「BEI」がそれぞれ引き上げられる。BEI(Building Energy Index)とは、一次エネルギー消費性能のことで、標準的な仕様を採用した場合のエネルギー消費量に対して、省エネ手法を考慮したエネルギー消費量の割合を示したものだ。BEIの数値が小さいほど省エネ性能が高いということになる。


出典:国土交通省より筆者作成

現在、中規模建築物では、用途に関わらずBEIは1.0が基準値とされている。これに対して、2000㎡以上の大規模建築物については、工場などで0.75、事務所・学校・ホテル・百貨店などで0.80、病院・飲食店・集会所などで1.0とされており、これらの基準が来年度から中規模建築物にも適用されることになる。

太陽光発電の導入や省エネ対策の
ニーズが高まる

こうした省エネ基準の引き上げが太陽光発電業界にどのような影響をもたらすのか。前述の通り、BEIは、標準的な仕様を採用した場合のエネルギー消費量に対して、省エネ手法を考慮したエネルギー消費量の割合を示したものだ。この省エネ手法の中に太陽光発電の設置が含まれている。それだけでなく、建物の外皮の断熱化、調光や照明の制御、コージェネレーション設備の設置などもこれに該当する。

つまり、来年度から、中規模建築物の新築・増改築において太陽光発電の導入をはじめとする省エネの必要性がさらに高まるといえる。特に、3つの用途のうち、BEIがもっとも低く設定されている工場においては、屋根設置の太陽光発電の自家消費などの検討が進むと予想される。

加えて、年間のエネルギー使用量が原油換算で1500kLを超える大規模工場などを対象とした、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)においても、来年度以降に提出する中長期計画書において、太陽光発電設備を設置できる面積を報告することを求める方向性を示している。こうした法令の改正内容をしっかりと把握しておくことで、需要家のニーズに柔軟に応えやすくなるだろう。

トップランナー変圧器第三次判断基準が2026年度にスタート

トップランナー基準とは、省エネルギー基準を定める方式の1つだ。出荷される製品の省エネルギー基準を現在商品化されている最高性能の製品以上に定める。対象は、国内で大量に使用されている機器で、それぞれの機器のエネルギー消費が多く、省エネが必要とされているもの。2024年12月現在、32品目が対象で、配電用変圧器は2006年からトップランナー基準が施行されている。

2026年度からは、配電用変圧器の第三次判断基準がスタートする。来年4月以降、製造事業者などが出荷する配電用変圧器は、この基準を達成したものでなければならない。日本電気工業会は、現行品との切り換え時期は製造事業者によって異なり、制度に先立って来年初頭から実施する場合もあるため、配電機器のユーザーに対して新基準に適合した変圧器への切り換えについての理解と協力を求めている。


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL vol.55(2025年秋号)より転載

 

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