政策・制度

高市首相、赤澤経産相が相次いで見直し発言、再エネ賦課金の行方は?

高市総理大臣は11月5日、衆院本会議で「再生可能エネルギー賦課金のあり方について、今後の技術の進展や、その必要性について検証する」と発言した。赤澤経済産業大臣も見直しの意向を表明している。しかし、その具体的な方向性は示されておらず、再エネ導入拡大に大きく貢献してきた再エネ賦課金の今後の行方が危ぶまれている。

<目次>
1.再エネ拡大に貢献も 国民負担が増加
2.高市首相と 赤澤経産相の視点に相違も
3.建設コストの高騰で 賦課金の負担増は不可避

再エネ拡大に貢献も
国民負担が増加

再エネ賦課金の推移(出典 調達価格算定委員会)

再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の制度は、2012年に施行された「再生可能エネルギー電気の利用促進に関する特別措置法(再エネ特措法)」に基づき固定価格買取制度(FIT制度)とともに導入された。

その背景は東日本大震災後の原子力政策転換と、温室効果ガス削減に向けたエネルギー構造改革。特に福島第一原発事故を受けて再エネの利用拡大の重要性が再認識され、太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスなど、クリーン電源の導入が積極的に進められてきた。

再エネ賦課金は、電力会社が再エネ電力を一定価格で買い取る際の財源として、国民の電気料金に上乗せする形で徴収される。当初は普及初期の再エネ設備導入費用を国民全体で負担し、市場形成を加速させる制度としてスタートした。その結果、特に太陽光発電を中心に導入量が急増し、再エネの普及が飛躍的に進んで大きな成果を挙げてきた。

その一方で、再エネ賦課金による国民負担も増加してきた。25年度の再エネ賦課金単価はkWhあたり3.98円で、一般家庭では年間2万円弱の負担となっている。特に低所得層への逆進性の指摘や、コストの高止まりなどが制度の持続性を揺るがせているという指摘もある。

 

 

高市首相と
赤澤経産相の視点に相違も

こうしたなか、11月5日の高市首相の衆院本会議での発言に続き、赤澤経産大臣も「支援対象の見直しや集中投資の検証、再エネに関する技術の進展であるとか、再エネ賦課金による支援の必要性について、関係審議会において検証する」と述べた。具体的には「従来型の太陽光発電のコスト低減の状況なども踏まえつつ、その支援のあり方を検討し、次世代型太陽電池のペロブスカイトや、屋根設置などの地域共生が図られた導入への支援に重点化することを検討していく」と述べるなど、再エネ賦課金の見直しに前向きな発言が相次いでいる。

ただ詳細に分析すると、高市首相と赤澤経産大臣の視点はやや異なっている。たとえば高市氏は総理就任前から、太陽光パネルの中国依存を問題視していた。これは一般的には経済安全保障の問題ととらえられがちであるが、中国製の低コストの太陽光パネルの供給こそが、太陽光発電の自立採算化につながっているのも事実だ。

しかも日本は太陽電池製造設備を中国に輸出していることもあり、中国において低価格で製造される太陽光パネルが経済安全保障問題に発展する可能性は低いと筆者が考えている。その一方で赤澤経産大臣は、中国製パネルによって経済的に自立しつつある日本の太陽光発電への支援から、次世代型太陽光発電への開発・導入促進支援へシフトする形で再エネ賦課金の見直しを検討する意向で、両者の発言の方向性は一致していない。

建設コストの高騰で
賦課金の負担増は不可避

太陽光発電と陸上風力発電のコスト(出典 調達価格算定委員会)

今後の再エネの軸となる洋上風力発電では、第1ラウンド事業者が撤退を決めた。建設コストの高騰で採算割れが懸念されるなか、洋上風力では事業環境整備のため、これまで以上に再エネ賦課金を財源とした支援強化が不可欠となっている。そのため、調達価格算定委員会も調達価格の引き上げを容認したばかりだ。洋上風力では事業環境整備のため、政府が年内をめどに新たな公募制度のとりまとめを目指しており、ここで再エネ賦課金制度の見直しとなれば、議論の場が混乱することは想像に難くない。

また、低コストの中国製風車の導入により、日本の洋上風力を短期的に成立させることで、再エネ賦課金をより早く低減させていくことも選択肢のひとつだ。国民負担は一時的に増加が余儀なくされるものの、将来的にはコスト低減が進み、負担も軽減されていくことが期待される。

政府は、「エネルギー・気候基金」などの新たな財源スキームの模索を始めているが、財務省の一般会計外となる「オフバランス」で徴収できる再エネ賦課金は、政策実現のための強力な「財布」として温存される公算が大きいと見られている。今後の見直しの焦点としては、一般の太陽光発電を卒FIT/FIP対象外としていくことで、再エネ賦課金の増加を抑制する余地を生みだす一方、次世代型太陽光発電や洋上風力発電など、今後の主流となりうるものに対しては、一定の国民負担の増加が引き続き求められることになりそうだ。

DATA

赤澤経済産業大臣の閣議後記者会見の概要

第105回 調達価格等算定委員会

取材・文/宗 敦司

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