BEVが拡大する欧州とEV比率5%の日本 求められる中東危機への”根本的解決”とは|北村和也さんの再エネの達人
2026.10.06
2026年の途中経過のエネルギーデータが出始めているが、太陽光発電やEVの急拡大が顕著である。背景には、見通せない中東危機がある。加速する化石燃料からの脱却と再エネの優位性についてまとめる。
1.中東情勢で世界の石油需要が大きく減少へ
2.ガソリン車からBEVへの不可逆な動き
3.化石燃料と再エネの、はっきりした輸入リスクの差
4.日本が取る、中東危機へ“緩い対応”
5.DATA
中東情勢で世界の
石油需要が大きく減少へ

IEAが出した世界の石油需要の見通し(2026年毎月発表)
イギリスに拠点を置く気候変動とエネルギーに関するWEBサイトCarbonBriefは、IEA:国際エネルギー機関が毎月示す世界の石油需要の今年の予測を、上のグラフにまとめた。例えば、一番左は今年1月時点での予測で、100万バレル弱の需要増としていた。しかし、毎月数字は下がり、4月には減少に転じ、最新の9月時点ではマイナス250万バレル(需要全体の−2.4%)まで落ちている。
この間起きた大きな出来事、つまりマイナス転換の最大要因は、トランプが起こしたイランへの攻撃であり、ホルムズ海峡の閉鎖である。この結果、石油を回避する動きが急速に進み、2026年の世界の化石燃料による排出量は0.5%減少すると見られている。
確かに、需要減の要素として原油価格の高騰の影響も大きい。しかし、よりインパクトが大きいのは、ガソリンや暖房などでの石油利用が、電気に代替する流れがはっきりしてきたことにある。
ガソリン車から
BEVへの不可逆な動き
ここに来て、特に日本の自動車メーカーには衝撃的な世界の乗用車に関するデータが飛び込んできた。
2026年上半期の世界の新規の乗用車登録で、ガソリン車が初めて5割を割ったというのである。前の年の同じ時期に比べ3ポイントの減少で、5年前との比較では24ポイントも減らした。
世界の新車販売に占めるガソリン車の割合の推移 出典:日本経済新聞(2026年10月26日) 掲載の調査会社Mobility Global社のデータより作成
ガソリン車の代替は、もちろんEVである。特にBEVと呼ばれる、蓄電池のみで走る乗用車である。前述のデータは数年にわたる統計であるが、中東危機の影響をはっきりとうかがわせる数字が他にもある。欧州でのBEVの実績をご紹介しよう。
自動車の統計をまとめるKBAやACEAによると、今年8月の数字は一種驚きであった。EU全体でのBEVの新規登録は19万6486台、これは前年同月比62.7%増でシェア27.7%、PHEVの11.1%と合わせて38.8%に達した。また、ドイツ単独で見ると、BEVが6万8930台で、前年同月比75.1%増、シェア32.4%となっている。ドイツの場合、補助金の復活の効果も大きいが、ガソリン車のシェアはBEVの半分の16.7%まで落ち込み、明らかにのBEVへのシフトが加速している。
欧州以外でも同様の傾向がはっきりしている。日経新聞の別の記事(6月2日電子版)で「中東危機後に37カ国でEV販売が過去最高。原油高でEVの割安感」と発信している。
化石燃料と再エネの
はっきりした輸入リスクの差
ここで、これまで何度も引用しているロンドンのシンクタンクEmberによる、ある概念図を見てもらうことにする。
原油を輸入してガソリン車を動かすのと、太陽光発電設備を輸入してその電気でEVを走らせるケースの比較で、どちらが輸入に関するリスクが大きいかを見て取れるようにイラスト化している。

原油の輸入と太陽光発電設備の輸入の比較 出典:Ember「Energy Security in an Insecure World」
図の上半分が「原油の輸入⇒ガソリンの精製⇒ガソリン車に供給」という従来のもので、日本の現状にピタリとはまっている。そこでは、原油は輸入し続けなければならず、今回のような中東危機のようなリスクに常に晒される。さらに、石油関連の精製施設は30年に一回作り直す必要がある。
一方、下半分は、太陽光発電に関する設備(パネルやパワコンなど)を輸入して、国内で発電施設を持つ場合で、発電された電気でBEVを走らせるケースである。こちらも30年に一回、設備の部材を輸入しなければならないが、残りの29年間は、自前の燃料である太陽光で発電できるので、輸入リスクフリーである。再エネは一度輸入すれば長く使えるといえる。中国が太陽光発電のパネルやパワコンのシェアを9割程度も持つ現実では、多くの国は、下半分のより少ないリスク環境を選ぶこともできるのである。
以前のコラムで、別バージョンの図を使って同様の説明をしたことがあるが、今回はホルムズ海峡の危機を目の前にしており、より実感を持って受け止めることが出来るのではないだろうか。
日本が取る
中東危機へ“緩い対応”
概念図で示した内容は、実は、中東危機ですぐに具現化した。
Emberがまとめた、中国の太陽光発電設備(PVパネル、セルなど)の輸出額は、アメリカのイラン攻撃のすぐ後の今年3月に、68GWの新記録を作って倍増した(グラフの一番右)。この数字は、スペイン全体の太陽光発電施設と同じ量だという。

中国のパネルなど太陽光発電設備の輸出の推移
今回の中東危機への対応として、世界は、化石燃料から再エネというエネルギーシフトという形で根本的な解決への道を取り始めていることがよくわかる。BEVや太陽光発電の急拡大などは、わかりやすい対処である。
ところが日本はというと、ホルムズ海峡を通らない原油の確保を掲げる一方で、巨額なガソリン補助を行っている。もちろんナフサなど原料としての原油の確保は重要で、それ自体は否定しない。しかし、ガソリン補助は単なる対症療法でしかなく、エネルギーシフトという根本解決を逆に妨げる役割となる。先進諸国の中でガソリン価格が最安だと自慢する首相の感覚は、全くズレている。結果、日本のEV比率はやっと5%を超えたところで、仮に今回の危機を何とか越えても、Emberの図のように、この先何十年も毎年、危機発生におびえることになる。
必要なのは、緩い解決ではなく、根本対応である。地政学的な弱点を持つ国は日本だけではなく、他の多くの国が適切な対応を行っていることを肝に銘じるべきである。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
IEAが出した世界の石油需要の見通し(2026年毎月発表) 出典:CarbonBrief「Analysis: Global fossil-fuel emissions set to fall in 2026 amid Hormuz crisis」2026/9/16
中国のパネルなど太陽光発電設備の輸出の推移 出典:Ember「Chinese solar exports double in a month」
SOLAR EXPO ONLINE
RANKING
MAGAZINE
PRESS












