【特別対談】公共施設向けPPA最前線!太陽光発電&蓄電池で、地域の防災拠点に!
2023/11/02
地域のレジリエンス向上や脱炭素要請の高まりを受けて、自治体による再エネ導入の取り組みが広がっている。初期費用ゼロで再エネ設備を設置できるPPAへの関心は、民間同様に高い。公共施設向けPPAの先駆者であるTNクロスと、EPCとしてこのサービスを支えるエクソルとの対談が実現した。
▲ 屋根に穴をあけない陸屋根専用置き基礎架台「X-3」を設置した千葉市内小学校。(出典:TNクロス)
蓄電池もセットにして
激甚化する災害に備える
TNクロス 房田氏 TNクロスは、東京電力ホールディングスと日本電信電話(NTT)の共同出資により設立された会社であり、両社のインフラやノウハウの連携による脱炭素化の推進、災害に強いエネルギー供給などの社会的要請に応える事業の創出を目指しています。2018年に設立した新しい会社ですが、最近では自治体からのご相談も増えており、地域脱炭素の推進や電化への対応、激甚化する災害への備え・BCP対策の一環として、再エネ導入の機運は高まるばかりです。
当社では、公共施設向けのPPAサービスを「バックアップサービス」と位置づけ、再エネの導入とレジリエンスの強化の同時実現を目指しております。そのため、太陽光発電設備だけでなく、蓄電池もセットにしたPPAを、主に小中学校など避難所に指定されている施設向けに提供しています。
エクソル 阿部氏 自治体にとって、長期間(20年間)にわたるPPA契約を結ぶ相手は、安心して任せられる信頼と実績のある会社でなければなりません。その点、東京電力とNTTがタッグを組んで立ち上げたTNクロス様であれば万全です。
エクソルとしても、公共施設への太陽光発電の導入拡大は、当社理念である〝再エネの普及促進による地球環境保全〟に不可欠なものと考えており、TNクロス様とともに当サービスに取り組めることを感謝しています。
公共施設向けPPAサービスの仕組み(東京都世田谷区での事例)
出典:東京都世田谷区
TNクロスが初期費用を一時負担し、自治体が所有する公共施設に太陽光発電設備と蓄電池を設置。自治体は、当該設備で発電した電力を自家消費し、消費量に応じた金額をメンテナンス費用等とともに電気代として支払う。 余剰電力はTNクロスが有効活用する。
PPA契約期間は20年。 PPA事業者はTNクロス。 EPCおよびO&Mはエクソルが担う。 なお、当事業は環境省の補助事業となる。
自治体の要請に応える
製品とサービス
房田氏 太陽光発電や蓄電池などの設備は、自治体が所有する建物に事業者の資産として設置するものとなります。それだけに、選定に当たっては厳しい目で様々な観点から検討を重ねました。結果として、サービス開始当初よりエクソル様にお願いしているわけですが、EPCであると同時に、本事業に必要な製品のメーカーでもあり、保守点検の体制も整っているというエクソル様ならではの強みは魅力的です。この3つを当社の求めるレベルおよびコストで実現できる会社は稀有です。
当サービスは2019年から行っておりますが、すでに関東の11自治体約730施設に採択されています。昨年は後半だけで約70施設に導入させていただき、そのペースは増加の一途をたどっています。短期間に、これだけの数を導入できたのも、エクソル様とのパートナーシップがあったからこそといえるでしょう。
阿部氏 ありがとうございます。これからもTNクロス様のスピード感についていけるよう、いっそうの体制強化に努めてまいります。
当社では、接着剤と両面テープを使用した重ね式折板屋根向けの「NAI-X」や、多雪地域に太陽光パネルを設置する際に、太陽光パネルと屋根の間に配置し、多雪地域の太陽光発電設備をサポートする「耐雪アタッチメント」などオリジナル製品を取り揃えています。その中でも特に陸屋根専用置き基礎架台「X-3」が大きな効果を発揮していると感じます。X-3は施工が容易な「置き基礎架台」でありながら、最大瞬間風速102m/sの耐風圧性能を誇り、耐震クラスもS対応となっています。
房田氏 そうですね。昨今の台風被害は記憶に新しいところなので、耐候性に優れた架台は必須条件になります。また、公共施設は老朽化が進んでいるものが多いため、躯体に極力影響がないよう、屋根面に穴をあけることなく設置できる工法は非常に魅力的です。また、他の架台に比べて、工期が短いのも大きな魅力です。
今後、当社としては、PPAサービスを建物だけでなく、カーポートやソーラーシェアなど新たな用地開発を伴わない領域にもスコープを広げ、自治体の再エネ導入を加速化させていきたいと考えています。エクソル様には、いっそうのご協力をお願いしたいところです。
阿部氏 我々も、カーポートほか様々な場所に向けて、それぞれに最適な太陽光発電設備の開発に努めています。蓄電池についても、より高性能で安全性の高い製品が誕生しています。TNクロス様とともに、自治体の皆様に喜んでいただける製品のバリエーションを増やしていければ幸いです。
房田氏 お蔭様で、当サービスは各地で高く評価されており、「この取り組みを地域住民への啓発や環境教育にも使いたい」というような声もいただきます。2023年は、そうしたご要望にお応えして、千葉県船橋市で開催された環境フェアに出展。来場者による投票の結果、「工作・体験コーナー部門」において第1位の表彰を受けました。
船橋市環境フェア、出展時のブース。(出典:TNクロス)
これからも、本サービスを幅広く展開していくとともに、新たなエネルギーソリューションを創造し、地域資源の循環に寄与できるよう尽力してまいります。
PROFILE
TNクロス株式会社
ディレクター事業開発担当
房田 正義氏
株式会社エクソル
営業本部 産業推進部 公共推進課 課長代理
阿部 貴弘氏
問い合わせ
株式会社エクソル
東京本社:東京都港区芝大門2-4-8 JDBビル
TEL:03-5859-5419
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.47(2023年秋号)より転載