脱炭素

サントリーHD 山梨県と連携して白洲工場をゼロカーボン化

山梨県、東レ、東京電力ホールディングス(HD)など9社のコンソーシアムは9月5日、サントリーホールディングス(HD)の白州工場(山梨県北杜市)に固体高分子(PEM)型水電解装置で水素を生成するパワー・トゥ・ガス(P2G)設備を設置すると発表した。(画像:基本合意書を締結したサントリーHDの小野常務(右)と山梨県の長崎知事)

山梨県と持続可能な
社会実現に向け基本合意書を締結

サントリーHDは9月5日、山梨県と環境調和型の持続可能な社会実現に向けて基本合意書を締結した。サントリーHDの小野真紀子常務執行役員は「グリーン水素の活用で環境負荷の少ない商品を届けるとともに、水素技術の開発や地域の脱炭素に貢献したい」と述べた。

合意内容は、カーボンニュートラルの実現に向けて、「やまなしモデルP2Gシステム」を、山梨県北杜市にある2工場、「サントリー天然水南アルプス白州工場」と「サントリー白州蒸溜所」に導入するもの。2工場では、蒸留や滅菌などに活用する大量の熱を生み出す燃料を天然ガス(LNG)から水素に転換し、カーボンゼロを目指す。コンソーシアム名は「やまなし・ハイドロジェン・エネルギー・ソサエティ(H²―YES)」で、山梨県企業局、東電HD、東京電力エナジーパートナー、東レ、日立造船、シーメンス・エナジー、加地テック、三浦工業、ニチコンの9社が参画する。

やまなしモデルP2Gシステムは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として山梨県、東レ、東電HD、東光高岳が共同で開発を行ってきた固体高分子(PEM)形の水の電気分解から水素を製造する技術。

政府が立ち上げた「グリーンイノベーション基金事業」でNEDOの採択を受け、国内最大となる16メガワット規模のP2Gシステムを25年、工場に導入することを目指す。このシステムは、太陽光などの再エネ由来の電力を活用するため、水素の製造工程でCO2を排出しない「グリーン水素」をつくることが可能という。総事業費約140億円のうち100億円を補助金で賄い、残りはコンソーシアムが出資する。

国内最大規模の
水電解装置でグリーン水素を製造

サントリー天然水南アルプス白州工場・サントリー白州蒸溜所(山梨県北杜市)

菅前首相が20年12月に打ち出した「グリーンイノベーション基金事業」は、50年カーボンニュートラルの実現に向け、NEDOに2兆円の基金を造成し、野心的な目標にコミットする企業等に対して、10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援するもの。これまでに、「大規模水素サプライチェーンの構築」や「次世代型太陽電池の開発」などを採択している。

山梨県企業局と東レ、東電HDは甲府市の米倉山電力貯蔵技術研究サイトで、出力1万1000キロワットの太陽光発電で生産するグリーン電力により1日340立方メートルの水素を生成する水電解装置を運用している。サントリー白州工場のP2G設備は米倉山サイトの10倍で、国内最大の1万6000キロワット規模となる見通し。水素製造はフル操業で年間 2200トンを見込む。工場で使用する熱エネルギーの燃料をグリーン水素へ転換するだけでなく、周辺地域などでのグリーン水素活用についても山梨県とともに検討し、取り組んでいく予定。

DATA

サントリーHD ニュースリリース
山梨県ホームページ


取材・文/高橋健一

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