中東危機で分かった、再エネの強靭性と化石燃料の脆弱性
2026/07/07
再エネの批判によく使われる“お天気まかせ”は、あてにならない「弱さ」の証拠とされ、化石燃料は“安定電源”と「強さ」を誇る。しかし、表題では、再エネと化石燃料の評価が逆転している。実は、混乱したイラン情勢下で明らかになったことの一つが、この新しい価値の確認であった。
化石燃料の弱さが
露呈した中東危機

【オランダ、TTFの天然ガスの価格の推移(ユーロ/MWh)】
ホルムズ海峡封鎖の影響が最も数値化されたのは、原油の先物価格である。WTIというアメリカの市場での取引で、1バレルが100ドルを超えたの、切ったのとニュースになった。電気の観点から言えば、天然ガスの価格が各国の電力スポット市場に影響を与えるため、以下に、オランダのTTFでのこの1年間の推移を示した。
単位はそれほど重要ではないので、単純に左の数字の動きで見て欲しい。
2月末の米軍のイラン攻撃までは、1MWhあたりほぼ30ユーロを行ったり来たりしていたが、急上昇して3月19日に最高の61ユーロ越えとなった。つまり2倍に跳ね上がったのである。その後、トランプが、停戦目の前とか、すぐとかを繰り返して価格は行ったり来たりし、今は40ユーロあたりになっている。
これをボラティリティ(Volatility)、価格の変動性と呼ぶ。日本は天然ガスによる発電が最大割合で、短い期間なら長期契約や備蓄で対応できるが、長期になれば価格は高騰に振れる。コストが倍増したり、輸入が途絶えたりというリスクのある化石燃料のどこが安定的といえるのであろうか。
おわかりの通り、お天気など目の前の事象だけで、安定、不安定を判断するのは早計なのである。今回の騒ぎは、化石燃料の弱さ、脆弱性を明らかにしたといってよい。半面、再エネ、特にVRE(可変的再エネ)は、太陽光や風力のように原料代はゼロ円で高騰の心配もない。また、「海峡封鎖」のように誰かに止められることもない。これが、再エネの強靭性である。
再認識される再エネの強靭さ、
進むEVシフト
強靭性は、英語でレジリエンス(resilience)である。日本政府も大好きな言葉で災害時の頼りとされる。
熱や交通エネルギーを含めて考えると、日本はまだまだ重油による暖房やガソリン車に頼っていて、イラン情勢の影響は甚大である。かといって、自国で石油が出れば大丈夫、というわけでもない。世界最大の産油国のアメリカでさえ、ガソリン高に見舞われたことを忘れてはならない。
イラン危機を背景に、多くの国でBEV(バッテリーEV)の売れ行きが急拡大している。自国で太陽光発電などの再エネによる電気を作りだせれば、ガソリン価格の上昇におびえたり、何兆円もの大金を補助に費やしたりする必要もない。さらに重要なのは、脱炭素につながることである。
正確に言うと、世界は10年ほど前から、ガソリン車からEVにシフトし、輸入化石燃料に頼らない動きを加速させている。
br>【世界の新規販売乗用車のうちのEV(BEV、PHEV)と非EVの台数】
上のグラフは、世界の毎年の新規乗用車登録台数の推移を、EV(灰青色)とEV以外(レンガ色)で示している。
2025年は、4台に1台がEV(BEV、PHEV)であった。また、ガソリン車は2017年が販売数のピークでその後台数を減らしていることがわかる。
この傾向は、個別の化石燃料、石炭や天然ガスの需要でも見られ、例えば、再エネ発電の割合が6割まで伸びたドイツでは、それぞれピーク時の需要量の半分程度にまで減っている。化石燃料の終えんが現実的になってきているのである。
化石燃料の価格変動から
クリーンテクノロジーの安定性へ

【輸入PV設備での太陽光発電が代替する天然ガス】
ここで、「化石燃料が輸入頼りというが、中国製のパネルを使っていれば同じではないか」という突込みが予想される。その質問を待っていたかのように、イギリスのシンクタンクEmberは、「化石燃料の価格変動から、クリーンテクノロジーの安定性へ」というリポートをこの6月に発信している。
上の図は、太陽光発電施設のためのパネルやパワコンの輸入は、その発電で代替できる化石燃料に比べて、圧倒的に少ない量で済むことを表している。
パネルなど1隻分の輸入機材で年間10TWhの発電が20年間可能な一方で、天然ガスの火力発電では毎年LNGタンカー1隻分のガスを輸入する必要があると試算している。
ポイントは、再エネの場合輸入は1回のみ、化石燃料では20年毎年ということである。当然、輸入に関するリスクは大きく減少し、太陽光、風力発電なら原料費はかからない。脱炭素に加えエネルギー安全保障の視点からも、どちらが有効かは言うまでもない。
今こそ、何が強靭で、何が脆弱か、正しく判断をしつつ、脱炭素などの目的実現へ確かな歩みを進めなくてはならない。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
埼玉大学社会変革研究センター・脱炭素推進部門 客員教授
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
オランダ、TTFの天然ガスの価格の推移(ユーロ/MWh)
世界の新規販売乗用車のうちのEV(BEV、PHEV)と非EVの台数
輸入PV設備での太陽光発電が代替する天然ガス
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