ベースロードの概念を捨てよ! 再エネ普及の3障壁
2017/06/30
再生可能エネルギー導入に関する「系統問題」及び「ベースロード問題」について、2017年にISEPが発表したレポートを基に、再エネ普及における3つの障壁とその解決策をISEP 所長・飯田哲也氏に伺った。
ベースロードの概念を捨て
フレキシビリティに転換せよ
今回は、再生可能エネルギー導入に関する「系統問題」及び「ベースロード問題」について、2017年にISEPが発表したレポートを基に考えたいと思います。
再エネ普及における
3つの障壁とその解決策
再エネ普及に当たって最大の障壁が系統連系です。これには ①接続可能量、②空き容量ゼロの多発、③過大な連系(接続)負担金 の3つのポイントがあります。
2016年、日本の太陽光発電は累積導入量でドイツを抜き、世界第2位になりました。毎年の設置量は、今後数年は緩やかに、その後は急速に減る恐れがあります。その理由の1つがFIT価格の低下ですが、価格低下自体は健全な事業という点で良いことだと思います。ただ、①はそもそも原子力発電や火力発電を前提とする「ベースロード電源」という旧い考えが前提になっており、再エネ最優先給電でないのが問題です。9電力会社間の連系線も不活用です。また、変動型再エネ電源の出力抑制はある程度やむを得ませんが、無補償は致命的な政策ミスです。出力抑制補償を前提にしなければバンカブルでなく、そもそも市場ルールに反します。
②については、東北電力が公開している系統図で見ると、東北北部での特別高圧の電力系統の送電線及び変電所の空き容量がゼロになっています。これを解消するために東北電力は、新たな送電線を再エネ事業者に負担させようとしていますが、実は大型石炭火力などを先に埋めてしまったことが大きいと報じられており、しかも東通原発など向けの使用していない高圧送電線があります。これはガラガラの高速道路があるにも関わらず、運送業者の負担でもう一車線増設するようなバカげた話なのです。
③について、たとえば再エネ事業者が計画した200MWの風力発電に対し、電力会社が300億円の連系負担金を請求するといったことが全国で起きています。問題の根源は、日本では費用負担者が発電事業者になっていることです。これを原因者負担(ディープ)と言い、対してドイツなどは送電事業者が負担する公共的負担(シャロー)です。送電線は「準公共財」との認識に立ち、原則はシャローにすべきです。
日本には、いまだに原発など古いベースロードへの固執があります。そもそも再エネは、“変動”するだけで“不安定”なわけではありません。リアルタイムの気象予報に応じた再エネの発電量予測、既存電力による出力調整などでフレキシブルに対応できます。ベースロードという考えを捨て、フレキシビリティに転換すべきです。
系統・送電線問題を理解するのは難しいかもしれません。それに惑わされないように、国民は再エネが純国産・クリーン・無尽蔵なエネルギーで、輸入エネルギーに頼る日本で最優先されるべきものだと認識する必要があります。
再エネを中心とした「フレキシビリティ」へ
※グラフは2017年3月、第63回国会エネルギー調査会(準備会)におけるISEP資料より編集部が作成。
プロフィール
認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長
飯田哲也
自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。
Twitter:@iidatetsunari
文/大根田康介
SOLAR JOURNAL vol.21(2017年春号)より転載