2020年の再エネ発電能力が「20年ぶり鈍化」 経済回復のための優先事項とは?
2020/06/08
国際エネルギー機関(IEA)が全世界の再生可能エネルギーについて、2020年の見通しを発表。20年ぶりの成長鈍化で、新型コロナウイルス・パンデミックによる影響は否めない。これからの再生可能エネルギー施策に、コスト低減にとどまらない戦略的な舵取りを各国に求めた。
新設は前年比13%の減少
この20年で初めての鈍化
国際エネルギー機関(IEA)は、世界の再生可能エネルギーの状況について、発電能力の伸びが、2020年は鈍化するという見通しを明らかにした。鈍化は、実に20年ぶりのこととされている。5月20日のプレスリリースで発表した。原因は、新型コロナウイルスのパンデミックによって、再生可能エネルギー発電設備の建設が減少したことによる。
同日に発表されたIEAのRenewable Market Updateレポートによると、全世界における2020年の再生可能エネルギー設備の新設は167GWとなる見込みで、これは前年比で13%の減少だ。特に太陽光発電への影響は大きく、新設される容量は、2019年の110GWに対し、2020年には90GWに満たないという。ただし、新設は減少するものの、累計での再生可能エネルギー発電容量は、前年比で6%増えるという。
2021年には再生可能エネルギー設備の新設は、2019年水準に回復すると予測されているものの、パンデミックによるダメージは大きく、2020年と2021年を合わせた成長率は、新型コロナウイルス感染症の発生前にIEAが予測していたよりも10%低いという。
経済回復には適切な分野への投資
コスト低減施策だけでは不十分
IEAの事務局長であるFatih Birol博士は、新型コロナウイルスによる影響の以前から、再生可能エネルギーをより拡大するよう力を入れるべきだったとし、「各国政府は、クリーンエネルギーへのシフトを強化し、安全で持続可能な道筋で危機から脱出する重要な課題を見失ってはならない」と警告を発している。
また、経済の回復にあたり優先されるべきは、より効率的で回復力のあるエネルギーシステムを開発し、温室効果ガスの排出量を削減しながら、雇用と経済活動を創出する早い機会を提供することであるとし、次のようにも述べている。
「再生可能エネルギーのコストの継続的な低下だけでは、コロナウイルスによって悪化したさまざまな不確実性から、再生可能エネルギー分野を守るには十分ではない。今後、数ヶ月および数年にわたって投資家の信頼を確保するためには、経済活性化策と戦略ある政策を正しく行うことがきわめて重要だ」。
DATA
IEA:The Covid-19 crisis is hurting but not halting global growth in renewable power capacity
文:山下幸恵(office SOTO)