政策・制度

シリーズ「太陽光義務化元年」[Q&A]なぜ川崎市は太陽光パネルを義務化するのか?導入の背景は?

川崎市が新築建築物に太陽光パネルの設置を原則義務化することが正式に決まった。一戸建て住宅の場合、設置義務を負うのは住宅メーカーだが、一般市民に金銭的な負担が生じるため、川崎市は2年間の準備、周知期間を経て、2025年4月に施行する。Q&A方式で新しい制度への疑問に答える。

川崎市の
新制度Q&A

川崎市は2025年4月に新しい制度を施行

Q なぜ川崎市は新しい制度をはじめるのか?
A 川崎市は京浜工業地帯の中央部にあるため、温室効果ガス排出量が全国の政令指定都市のなかでワースト1。2050年に脱炭素社会を実現するためには、市内への再生可能エネルギー導入スピードをこれまで以上に加速させる必要がある。これから建てられる建築物は2050年にもストックとして残ることも踏まえると、義務的手法を導入する必要がある。

Q 市民に義務が課されるのか?
A のべ床面積2000平方メートル未満の建築物を新たに建てる場合、1年間に5000平方メートル以上の総床面積を供給しているハウスメーカーに設置義務を課す。義務化の対象から外れた新築と増築の建築物についても、設計士から太陽光パネルについて説明することを義務づける。

地球温暖化対策推進条例の改正に向けた重要施策の考え方(出典 川崎市役所)

Q 発電量が少ないと想定され、メリットが少ない(日射量、屋根面積が小さいなど)場合でも必ず設置しなければならないのか?
A すべての新築建築物を義務対象とする制度ではないため、太陽光発電設備の設置に不向きな建築物には「導入しない」と判断をすることもできる。著しく発電効率が悪い建築物は代替措置や除外規定を設けることも検討している。

Q 義務を履行できない場合はどうなるのか?
A 義務を履行できなかった場合、行政指導や助言を交えながら、義務対象者の義務履行を支援する。長期間にわたり改善がみられない場合は、義務対象者への勧告や義務対象者情報の公表ができる制度を検討する。

Q 義務に伴う市の補助制度はあるのか?
A 現在、川崎市住宅用環境エネルギー機器設備設置補助金(スマートハウス補助金)の制度により、太陽光発電設備の設置に関する補助を行っている。義務制度に伴う補助制度の拡充については、川崎市環境審議会脱炭素化部会において「初期費用分の投資回収が十分可能である」ことから慎重であるべき、という趣旨の意見が出されているが、災害時のレジリエンス強化といった義務制度の効果を高めるような補助制度など、川崎市に合った支援策について今後検討していく。

Q FIT価格が大幅に下落しているため、経済的なメリットはないのでは?
A FIT制度は設備の導入費用などのコストを将来的に回収できるよう買い取り価格を設定しており、導入費用の低減と連動している。2012年度から内部収益率は3.2%という数値が継続して採用されている。

Q 普及が進むと出力制御により売電できなくなれば、コストメリットが出ないのではないか?
A 住宅用太陽光発電設備と考えられる10キロワット未満の固定価格買取制度の対象となる再生可能エネルギー由来の電気については、当面のあいだ、出力制御および出力制御装置等の設置対象外とされている。

Q 太陽光パネルの生産は中国に集中しており、ウイグル自治区における人権問題が心配だが、社会的な問題はないのか?
A 住宅用太陽光パネルのシェアが多い国内太陽光パネルメーカーなどへのヒアリングにおいては、新疆ウイグル自治区の製品を取り扱っている事実はないとの回答を得ている。業界団体である一般社団法人太陽光発電協会では、「持続可能な社会の実現に向けた行動指針」を掲げるとともに、国のガイドラインを踏まえた取り組みを行うため、「太陽光発電産業の人権問題に関する取り組み宣言」を行い、会員企業、太陽光発電産業に携わる事業者に人権を尊重した事業活動を行うことを推進している。また、2023年1月には日米で国際的なサプライチェーン(供給網)から人権侵害を排除するため、関係省庁による新組織を設立する協力覚書に署名するなどの取り組みを進めている。

【関連記事】国内2例目の太陽光義務化、川崎市の条例可決 2025年度施行


取材・文/高橋健一

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