2018年の再エネ市場 最新トレンドを有識者が分析!
2017/12/21
2018年、再生可能エネルギーはどこに向かうのか? ソーラージャーナルでは12月13日(水)、「2018年の再エネ市場を徹底予測」と題してPVビジネスセミナーを開催。産官学の有識者8名を講師に招き、来年度に向けての最新情報を共有した。
太陽光からバイオマスまで
国内外の最新トレンドが明らかに!
再生可能エネルギーの基幹電源化と国民負担の抑制を目的に、様々な制度改革が進められた2017年。改革への対応如何によって、ビジネスの成否にも大きな差がでる1年となった。来年も改革は進められるが、それがビジネスにどんな影響をもたらすのか、未だ不透明感は拭い難い。
今回のセミナーでは、各登壇者がそれぞれの立場から、再エネのこれからについて徹底予測。2018年の再エネビジネスに大きなヒントを与えてくれた。自然エネルギー財団・大野氏の国際情勢分析を皮切りに、有力企業5社によるプレゼンテーション、慶応大学教授・金子勝氏による日本経済復活への提言、林野庁木材利用課長・玉置賢氏によるバイオマスに関する講演へと続いた。
今年5回目となる今回のセミナー参加者は、EPC・メーカー・販売施工会社などから約250名。会場となったコクヨホール(東京・品川)は、いつにも増して熱い熱気に包まれた。
各講演テーマは、次の通り──
①「世界に広がる自然エネルギー100%の潮流」
公益財団法人 自然エネルギー財団 常務理事 大野輝之氏
②「ジンコソーラージャパン2018年 新製品の紹介」
ジンコソーラージャパン株式会社 営業部統括マネージャー 穂津田孝一氏
③「今後の太陽光市場でのビジネスチャンス」
ヨーロッパ・ソーラー・イノベーション株式会社 代表取締役 土肥宏吉氏
④「300W+モジュールが拓くPV3.0時代」
LONGi Solar Technology株式会社 テクニカルマネージャー 柴田憲司朗氏
⑤「ソーラーエッジのDC最適化パワーコンディショナシステム」
ソーラーエッジテクノロジージャパン株式会社 アシスタントディレクター・テクニカルマーケティング 永沢健氏
⑥「脱FIT時代に向けた太陽光発電システムの販売戦略」
アンフィニ株式会社 営業部部長 管康輔氏
⑦「地域活性化をもたらすイノベーションの方向性」
慶應義塾大学 経済学 教授 金子勝氏
⑧「木質バイオマスのエネルギー利用と木材の需要拡大の取組について」
農林水産省 林野庁 林政部 木材利用課長 玉置賢氏
以下、各講演のダイジェストをお届け!
公益財団法人 自然エネルギー財団 常務理事
大野輝之氏「世界の再エネの現状と日本の課題」
著しい価格低下を背景に、急成長する世界の再エネについてレクチャー。太陽光・風力ともに、日本を除く世界の多くの地域では、すでに石炭火力より安価な電源となっている。最近の入札で記録した世界最安値は、太陽光発電で1.78セント/kWh(サウジアラビア)、風力発電で1.77セント/kWh(メキシコ)だったという。「パリ協定」に基づく脱炭素化の動きともあいまって、世界では再エネ導入拡大が続いている。このままでは日本は世界の潮流に取り残されてしまう……大野氏は、我が国の現状に警鐘を鳴らすとともに、国はもちろん各企業の取り組みが重要であることを指摘した。
ジンコソーラージャパン株式会社 営業部統括マネージャー
穂津田孝一氏「エネルギー構造を変え、未来を担う」
出荷量世界一を誇るジンコソーラーが、2018年の製品ロードマップを発表。これからの主力商品として、「ハーフセル」を重視していくことを明らかにした。同社のハーフセルは、出力平均5Wアップを実現し、影に強いという特性をもつ。今後は、両面発電や両面ガラスなど、水上で活かされる技術にも力を注いでいくという。太陽光に適した土地が少なくなった日本にあって、「未来を担う」というビジョンを掲げる同社製品ならではの可能性を感じさせた。
ヨーロッパ・ソーラー・イノベーション株式会社 代表取締役
土肥宏吉氏「これからのビジネスチャンスは、どこに?」
太陽光事業コンサルタントとしても知られる土肥氏は、FIT価格とEPCコストの関連を分析し、今後のビジネスチャンスがどこにあるかを指し示した。メガソーラーに適した土地や連系の空き容量が減っていくことから、小規模プラント・自家消費用途が予想以上に伸びるという。リチウムイオンと鉛電池を組み合わせた「ハイブリッド蓄電システム」など、注目のソリューションについても紹介。併せて、ソーラーシェアリングなど新たな用途の可能性を説いた。
LONGi Solar Technology株式会社 テクニカルマネージャー
柴田憲司朗氏「単結晶シリコンで世界のPV市場を牽引」
世界最大の太陽光発電用単結晶シリコン専門企業、LONGi Solar。高効率化による発電コストの低減もあり、単結晶シリコンモジュールは世界のPV市場で大きくシェアを伸ばしている。先進のPERC技術によりモジュール変換効率18%以上、60セル品で300W超をいち早く実現した同社製品は、こうした世界のトレンドを牽引する。柴田氏は、そのポイントを「優れた効率・出力」「優れた信頼性」「優れた実発電量」にあるとし、高い開発力を印象づけた。
ソーラーエッジテクノロジージャパン株式会社 アシスタントディレクター・テクニカルマーケティング
永沢健氏「屋根上での高い収益性と類を見ない安全性を」
モジュールレベルで最適化を図るパワーオプティマイザと、シンプルで信頼性に優れたパワーコンディショナの組み合わせにより、発電量の最大化を可能にしたソーラーエッジ。永沢氏は、設置面積が限られている屋根上太陽光において、特にその効果が大きいことをアピールし、参加者の関心を集めた。同社のソリューションを導入すれば、収益性アップだけでなく、発電設備の安全性も大きく向上するという。ストリング構成の自由度も高まるので、曲面や傾斜角の異なる面など条件の厳しい場所にも、思い通りにモジュールを設置できる。
アンフィニ株式会社 営業部部長
管康輔氏「FITに頼らない自家消費モデルを提案」
2017年、福島県内に結晶系では国内最大級となる製造工場を新設し、注目を集めるアンフィニ。同社は「Japan電力」という新電力を立ち上げ、電力小売り事業にも参入している。今後は、ソーラーパネルメーカーとしての経験と、電力供給元としての経験を活かし、独自の自家消費モデルを推進していくという。電力消費者の屋根に無償で太陽光発電システムを設置し、そこで発電した電気を屋根の所有者に直接販売するという新しいビジネスモデルだ。
慶應義塾大学 経済学 教授
金子勝氏「不正がまかり通る無責任社会からの脱却を」
鋭い舌鋒で日本社会に警鐘を鳴らし続ける、金子教授が初登壇。アベノミクスの危険性を熱く語り、新しい産業社会システムのあり方を描き出した。問題を起こしても経営者が責任を取らず、ひたすら未来を先食いする状況を続けていては、次世代にハイパーインフレの経済破綻をもたらしかねないと指摘。エネルギー政策に関しては、原発の処理と電力システム改革が表裏一体となっている現状を分析し、国家戦略がいかに重要であるかを解き明かした。
農林水産省 林野庁 林政部 木材利用課長
玉置賢氏「バイオマス発電・熱利用で地域経済を活性化」
木材利用全般の舵取り役である、林野庁の玉置氏。森林の現状について豊富なデータをもとに解説し、バイオマス発電などエネルギー利用の意義を明らかにした。日本の森林資源、特に人工林はこの半世紀で約5倍に増加しており、今その多くが主伐期を迎えている。良質な木は建材等に使われるが、エネルギー利用は、これまで放置されてきた林地残材の活用にも途を拓く。林業振興はもちろん、地域経済の活性化にも貢献する。林野庁としても、バイオマス発電や熱利用を応援しているとし、各地での取組事例を紹介してくれた。
取材・文/廣町公則