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景観破壊か融和か 太陽光発電と近隣住民の関係は?

山梨県北杜市では、太陽光発電の無秩序な設置を巡って議論が巻き起こっている。市、事業者、住民とそれぞれの立場や意見がある中で、地域にも認められる太陽光発電所にするためにはどうしたらいいのか。設置方法の再検討委員会のメンバーである東京大学教養学部客員准教授の松本真由美氏に、北杜市の現状を聞いた。

住民と景観めぐりトラブル
どう規制して融和させるか

山梨県北杜市では一部の無秩序な太陽光発電所の建設による景観破壊をめぐり、市、事業者、住民の三者の間で設置方法を再検討する委員会が2017年10月に設置されました。北杜市には別荘地で有名な清里があり、仕事をリタイヤした人の終の住処、都心で裕福な人たちがセカンドハウスとして住んでいるケースもあり、こうした問題に関してもかなり勉強されている方がいらっしゃいます。

北杜市は、固定価格買取制度(FIT)が始まった2012年7月以降、日本一日照時間が長い街として太陽光発電を推進してきました。一方で、規制条例がなかったため、一部の地域で乱開発が進んでしまいました。とはいえ、市民が問題視している発電所は現状、基本的に法律違反ではありません。ここには、大規模発電所を50kW未満に分割して投資家に分譲した結果、電柱が乱立してしまった、いわゆる分割案件もあります。今は経済産業省が禁止していますが、建設当時は規制されておらず、今さら撤去できないわけです。そのため、市の職員も現地調査には出向いていますが、行政指導に止まっているのが現状です。

北杜市の太陽光発電所の一例。パネル枚数を増やすため、ドライバーに圧迫感を与えるほど急角度に設置されている。

私は、この検討委員会に委員として参加しています。ただ、話し合いはなかなか前進していません。あの場の緊張感ある空気は実際に参加してみないとわからないと思いますが、第1回は委員長、副委員長の選出に3時間を費やし、第2回は市民委員から議論の前に現状把握が必要だという意見が出され、一度現地視察をするという結論で終わりました。委員会は2年を予定していますが、市民側はその間にどんどん発電所が建ってしまうと懸念し、より迅速な対応を求めています。

中立の立場で考えれば、ある日突然、自分の住む場所の景観が破壊されてたまらないという住民感情は理解できます。一方で、現時点では違法でないものを自治体として指導するのも限界があるでしょう。また、発電所の権利が転売を繰り返されていて、指導しようにも本来の設置者に行き当たらないケースもままあります。

経産省も昨年4月にFIT法を改正してメンテナンスの義務化など規制を強めましたが、厳しい罰則が課せられるわけではないので、法を守らずそのままにしておく事業者が出てくる可能性は否定できません。

一方で、最近ではこうした住民とのトラブルに関する報道を事業者が見て、計画を止めているケースもあるようです。北杜市では2017年10月末時点で914件の認定案件がありますが、系統の空き容量がなく、全てが設置されるとは思えません。市民が懸念しているような大規模発電所は建たないかもしれません。

現在、太陽光発電は環境アセスメントの対象でもなく、近隣住民への告知義務もありません。事業者には配慮してくださいとしかいえない状況ですが、この委員会を通じて、何かしらの解決策を提示し、地域住民との融和を図っていきたいと思います。

プロフィール

東京大学教養学部 客員准教授

松本 真由美

報道番組の取材活動やニュースキャスターを経て、現在は東京大学教養学部での教育活動を行う一方、講演や執筆など幅広く活動中。NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)理事。


取材・撮影・文/大根田康介

『SOLAR JOURNAL』 vol.24より転載

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