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O&M協議会、初の技術セミナー「驚きのトラブルと解決法」が多数!

11月27日、一般社団法人 新エネルギーO&M協議会が主催した「第1回O&M技術セミナー」では、太陽光発電所のさまざまなトラブル事例が披露された。想像もつかないような驚きの事件や、意外な解決法も飛び出し、太陽光発電所のO&Mには幅広い知識や経験が必要なことを実感するセミナーだった。

低圧案件は「手付かず」
O&M体制の整備は急務

一般社団法人 新エネルギーO&M協議会が、11月27日、「第1回O&M技術セミナー」を東京・神田で開催。太陽光発電の現場で実際に行われているO&Mの最新事例を学ぼうと、約50名が参加した。

冒頭、同協議会の理事長を務める横浜環境デザイン 代表取締役社長 池田真樹氏が挨拶。「現在、特別高圧案件については精度の高いメンテナンスが実施されているが、全国約50万件に及ぶ低圧案件はほぼ手付かずの状態。高圧案件についても、適切なメンテナンスが行われていない案件が数多くある」と指摘した。

また、同協議会が掲げる“トータルO&M”という考え方については、「きちんと設計・施工された『まっとうな』発電所、適切なメンテナンス、万一に備えた保険技術などのファイナンス、という三位一体による理想のO&M」と定義。

そのうえで、「O&Mは、費用ばかりかさむ面倒なものだと思われがちだが、実際はそうではなく、さまざまなタイミングでビジネスチャンスがある。その市場規模は2017年12月時点で700億円以上、2030年3月には1,000億円を超えるとの予測もある。自転車市場の1,400億円や、サッカーJリーグ市場の1,000億円などと比較すると、このチャンスの大きさを理解してもらえるのでは」と語った。


一般社団法人 新エネルギーO&M協議会 理事長 池田真樹氏

最初のO&M事例発表は、アルシス 代表取締役社長 高根沢喜美一氏が務めた。

「フェンスの重要性と経産省の動き」と題して、まず経済産業省・資源エネルギー庁が示しているフェンスの定義について説明した。

関連記事:FIT認定取り消しも! エネ庁が「標識や柵塀の設置」の注意喚起!

また、自社物件ではないものの、近所で実際にあった事例として「太陽電池モジュールがすべて人為的に叩き割られた」ケースを紹介。「この現場には、フェンスがなかった。きちんとしたフェンスを設置していれば、こうしたイタズラのような犯行は防げた可能性がある」と、フェンスの重要性を説いた。


アルシス 代表取締役社長 高根沢喜美一氏

エナジービジョン O&M事業部 太陽光発電リスクコンサルタント 増田龍史氏は、実際にO&Mを手がけた山陰地方の発電所について語った。遠隔監視システムの通信不通が頻発するようになった(発電そのものは正常に行われていた)際には、クライアントである発電事業者と問題解決について話し合ったという。

「徹底的に調査して症状と原因を詳しく把握できれば一番いいが、それでは多大なコストが掛かってしまう。実際の現場では、なるべくコストを掛けずに対応することが求められる」(増田氏)。このケースでは、発電自体は行われていたため、断線などの物理的な故障ではなさそうだと判断し、しばらく経過を観察。すると、問題の原因はPCS間の接続ではないかと推定された。

そこで、対応策を費用の安い順に実施。まずPCS間のRS485ケーブルを挿しなおしてみたが改善せず、次善策としてケーブルを交換してみた。これが功を奏し、症状が改善した。「本来であれば、そのケーブルを解析するべきかもしれないが、その費用は誰が負担するのかという問題もある。今回はそこまではせず、人件費もO&M契約に組み込まれた『駆けつけ対応費』を充当して、ケーブル交換費用の実費・数千円のみで対応完了とした」(増田氏)。


エナジービジョン O&M事業部 太陽光発電リスクコンサルタント 増田龍史氏

増田氏の事例発表の後に、エナジービジョン 代表取締役社長 奥山恭之氏が「問題の原因を究明するには、負担がかさむ。O&Mを、研究ではなくビジネスとしてやっていくためには、今回のケースのようにある程度の割り切りが必要。また、障害対応には時間が掛かるケースが多い。どのように原因を推定して対応するのか、きちんとクライアントに説明しないと『技術力不足ではないか』と疑われてしまう場合がある」と補足した。


エナジービジョン 代表取締役社長 奥山恭之氏

新エネルギーO&M協議会 専務理事 大門敏男氏は、とある野立ての2MW案件の実発電量と実日射量のデータを示し、「パッと見ただけではわからないが、実は発電量は年々ダウンしている。O&Mの重要性は、今後ますます高まっていく。O&M事業者にとっては、事業者同士の横の連携構築が重要になる」と強調した。


新エネルギーO&M協議会 専務理事 大門敏男氏

多種多様なトラブル事例が登場
リパワリングには大きな可能性も

この日の技術セミナーは、午前の部は誰でも聴講できたが、午後は参加条件があり、O&M協議会の仮登録が必要とされた。にもかかわらず、ほとんどの来場者が午後の部にも参加した。

午後の1つ目の発表では、恒電社 代表取締役社長 恒石隆顕氏が、さまざまなトラブル事例を報告。落雷でのPCS故障や、除草した草がファンに絡まっての停止、カラスによる被害などを、現場の写真を多数使いながら解説した。

建設中の現場で発生した電線の盗難事件については、動画を放映。軽妙な語り口で、時には参加者の笑いも誘いながら、多くのトラブル事例への対処法を指南した。


恒電社 代表取締役社長 恒石隆顕氏

ミナト電気 専務取締役 佐々木俊輔氏も、多くの事例を披露。発電所内への不法投棄や、PCSへの直射日光、先の恒石氏と同様のカラスの被害、住宅用太陽光の電圧抑制などについて、トラブルとその対処法を語った。不法投棄の事例では「発電所のフェンスに鳥居を設置したら、ゴミを捨てられなくなった」という。

地方自治体の動向についても触れ、「自治体は、太陽光を主力電源として長期安定的に活用していきたいと考えており、メンテナンスも重要視している。O&M事業者にとってはビジネス拡大のチャンス。この流れに乗り遅れないようにしよう」と参加者の発奮を促した。


ミナト電気 専務取締役 佐々木俊輔氏

冒頭で挨拶した池田氏は、事例発表も行った。トラックで荷崩れを起こすなど、物流時にモジュールが破損していたケースや、設計・施工のミス、傾斜地に設置されたケース、洪水や竜巻といった天災などのトラブル事例を紹介した。

O&Mの検査についても詳しく解説。
1、目視検査
2、IR検査
3、I-V特性曲線検査
4、EL検査
の順に、発見できる不具合事例などを取り上げた。「目視でわかる不具合もたくさんあるので、まずしっかり確認することが重要。熱を検知してホットスポットを見つけられるIRカメラや、クラスタ単位での異常をチェックできるI-Vカーブトレーサーも、O&Mには欠かせない機器だ」(池田氏)。

さらに池田氏は、O&M事業者にとって新たな収益源となる可能性を秘めた「リパワリング」にも言及。リパワリングとは、既に稼働している太陽光発電所の発電量が低下した際に、適切な処置を行って発電量を引き上げること。3MWの発電所がリパワリングで20%増益したドイツでの実例を挙げ、「発電量の低下に、最初に気付けるのはO&M事業者。つまり我々が、リパワリングの提案チャンスに一番近いところにいるということ。まだ日本での事例は少ないが、これから大きなビジネスになる可能性がある」と熱を込めた。


一般社団法人 新エネルギーO&M協議会 理事長 池田真樹氏

最後に、質疑応答の時間が設けられた。奥山氏が司会役となり、今日の発表者が登壇して、参加者と活発な情報交換が行われた。


質疑応答の様子

新エネルギーO&M協議会は、現在、広く会員を募集している。適切なO&Mを行うには、さまざまなトラブル事例や、その解決法を知っておかねばならない。そうした知識を蓄積するのに最も有効なのは、同業者であるO&M事業者の横の繋がりを構築し、仲間同士で情報を共有すること。そのために、同協議会のネットワークを活用するのも1つの手だろう。

興味がある方は、同協議会のホームページを参照されたい。きっと役に立つはずだ。

DATA

一般社団法人 新エネルギーO&M協議会

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