住宅用太陽光に新機軸、パネル1枚からでも設置可能に!
2019/04/16
エクソルが、住宅用太陽光発電の常識をくつがえす。マイクロインバータを使った、これまでにないコンパクトシステムの誕生だ。
新発想、ジャストコンパクト
398,000円の住宅用太陽光
エクソルは4月11日、住宅用太陽光発電の新システム「ジャストコンパクト」の販売開始を発表した。太陽光パネルを最小1枚からでも設置できる、コンパクトな太陽光発電システムだ。価格はオープン価格で、太陽光パネル3枚(合計出力約1kW)のモデルで398,000円前後(工事費込み)となる見込み。このシステムなら、屋根が小さいためにパネルを設置できなかった家庭も、予算の都合で諦めていた家庭も、手軽に太陽光発電を始めることができそうだ。
通常の太陽光発電システムにおいては、太陽光パネルでつくられた直流の電気を交流の電気に変換するための装置としてパワーコンディショナが用いられている。発電した電気を家庭用の電気機器で使えるようにしたり、電力系統に流せるようにするためだ。しかし、一般的なパワーコンディショナは一定以上の電圧がないと起動できないため、これまでは少なくても4枚以上の太陽光パネルが必要とされていた。
一方、ジャストコンパクトは、一般的なパワーコンディショナの代わりに、低電圧でも動作する「マイクロインバータ」を採用する。これにより、太陽光パネル1枚からでも働く、これまでにないシステムを実現したのだ。
マイクロインバータを採用し
パネル単位の発電を実現
マイクロインバータは、太陽光パネル1枚に1つずつセットする小さな装置で、マイクロインバータがついた太陽光パネルは、それぞれが1枚ずつ独立して機能する。複数のパネルを設置する場合でも、パネル同士が影響を与え合うことがない。このため、たとえ1枚のパネルに影がかかっても、他のパネルの発電量が落ちることもない。また、屋根の方位に関係なく設置できるので、レイアウトの自由度も格段にアップする。
さらに、マイクロインバータには、緊急時に電気の流れを遮断するシャットダウン機能がついているので、住宅火災に伴うリスクを大幅に減らすこともできる。小型で薄く、ファンレスなので音を気にする心配がないのも魅力だ。また、電力線によるデータ通信が行えるので、Web監視にも対応する。
圧倒的なコストパフォーマンス
新築にも既築住宅にも対応
ジャストコンパクトの構成要素は、「太陽光パネル」と「マイクロインバータ」と、それらを屋根に設置するための「架台・金具」。冒頭に記した価格398,000円は、太陽光パネル3枚分(合計出力約1kW)の構成要素に工事費を加えた金額となる。使う分だけの発電設備を設置できるので、従来からある一般的な住宅用太陽光発電システムより、格段に安いコストで導入できるというわけだ。新築住宅はもちろん、既築住宅にも設置することができる。
太陽光パネル3枚の場合の搭載パターン例
電力系統に接続しないオフグリッド型の太陽光発電設備には、これまでも小規模・低価格なものが存在した。しかし、ジャストコンパクトは系統接続を前提としたシステムだ。その点では、従来の住宅用太陽光発電システムと同様であり、余った電気はFIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)を使って売電することもできる。
電力購入量30%削減も可能
自家消費に、ちょうどいい
気になるのは、太陽光パネル3枚で、どの程度の発電量が得られるかということだろう。エクソルの試算では、太陽光パネル3枚でも、一般的な家庭※1の日中の電力使用量をほぼ賄うことができる。昼はジャストコンパクトで発電した電気が使えるので、電気購入量は年間30%も削減可能※2になるという。
ジャストコンパクトは、太陽光で発電した電気を自家消費で使い切るには、ちょうど良いシステムといえるだろう。日中に在宅していることが多い家庭や、室内飼いのペットがいるためにエアコンの冷暖房をフル活用している家庭などには、もってこいだ。
※1 日中に晴れた日で、かつ300kWh/月を使用する家庭を想定。
※2 エクソルのシミュレーション結果から試算。家庭の電気購入量に応じて削減率は変動する。
屋根上太陽光市場を革新
太陽光発電、全棟搭載へ
ジャストコンパクトは保証内容も充実している。太陽光パネル、マイクロインバータ、架台・金具が万一故障した場合には、修理対応時の修理費用および交換対応時の交換費用を、無償で20年間保証するということだ。
ジャストコンパクト発売を発表する、エクソル代表取締役社長の鈴木伸一氏
エクソルでは、すべての屋根に太陽光発電システムを設置すること「太陽光発電、全棟搭載実現」を目標に掲げており、ジャストコンパクトは、それを具現化する方策の1つと位置付けられている。2018年12月に発表された初期費用0円で太陽光発電システムを導入できるリースプラン「のせトク?」も、その1つだ。2019年4月下旬には、新タイプの産業用自家消費型太陽光発電システム「SAVE-1」もリリース。住宅用・産業用ともに、屋根上太陽光発電市場でのシェア拡大を図っていく構えだ。エクソルの取り組みが、日本の太陽光発電にどんな影響を及ぼすのか、今後とも目が離せない。
取材・文/廣町公則