太陽光発電で火災や感電事故が発生!? 必要な安全対策とは?
2019/07/01
太陽光発電システムが原因で起きる火災や感電などの事故を防ぎ、安全性を高めるには何が必要なのか。消防庁 消防研究センター技術研究部の田村裕之室長に、太陽光発電システム火災の事例や安全対策について伺った。
2011年に太陽光発電システムの
安全対策研究がスタート
消防研究センターは2011年に、太陽光発電システムからの出火や消防活動の安全対策に関する研究を開始しました。当時、東日本大震災後に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、再生可能エネルギーの利用が活発化していたことが背景にあります。
2005〜2018年において、当センターが把握している太陽光発電システム関連の火災件数は128件。パワーコンディショナ(PCS)、太陽電池モジュール、配線、接続箱が主な出火元です。
ある太陽光発電所の、アレイから離れた電気設備点検をしていた作業員が、アモルファスシリコンの太陽電池モジュールから出火しているのを発見し、通報。それから初期消火を行いました。この火災で太陽電池モジュール30cm程度が焼けました。燃えていない太陽電池モジュールを確認したところ、セルに沿って短冊状に酸化、剥離していました。このことから、セルの酸化による抵抗の増加や発熱、セル間の放電などが起こり、火災に至った可能性があると考えられます。
当センターでは、結晶シリコンの太陽電池モジュールが破壊された時にどうなるのかを調べるための実験を行いました。破壊器具である金属製のトビ口を、太陽電池モジュールのマイナス側のケーブルと接続した後、太陽電池モジュール表面に向かって打ち付けます。すると、モジュールに突き刺さったトビ口がモジュール内の電極と接触し、放電が生じました。放電の熱によって樹脂が分解されて発煙、発火する場合もあります。
水害による出火事例
求められる設置場所の検討
地震後の津波や大雨、高潮などの水害で、太陽光発電システムが水に浸かり出火するケースもあります。
2011年3月の東日本大震災当日の津波により、3階建て住宅の1階車庫内に設置された太陽光発電システムのPCSが浸水。その翌日、PCS内部の配線から出火し、かけつけた消防隊員が粉末消火器で消火しました。日射を受けた太陽電池モジュールが発電を行ったため、出火に至りました。
また、別の太陽光発電システムでは、PCSが津波で浸水しましたが、出火したのは津波から約2ヶ月後のことでした。配線に付着した海水成分などの影響で絶縁が徐々に劣化し、流れ続けていた電流によって発熱、出火したと見られています。
2018年7月の西日本豪雨では、太陽光発電所で発生した火災の中でも、接続箱から出火する事例が目に付きました。接続箱は太陽電池モジュールの下に設置される場合が多く、洪水時に水没しやすいためだと考えられます。
そこで、水没した接続箱に、太陽電池モジュールからの電流が流れ込むとどうなるのかを把握するため、実験を行いました。海水を入れたプラスチック容器の中に、ストリングのプラス側とマイナス側のケーブルを沈めて太陽電池モジュールから電気を供給すると、プラス側からは酸素が、マイナス側からは水素がそれぞれ発生。水没したケーブルの心線を水面まで上昇させると、激しく放電しました。この実験により、接続箱が浸水した時、内部でこのような現象が起きて火災につながったことが十分予想されます。
接続箱からの出火を防ぐには、接続箱の防水強化とともに、できるだけ高い場所に設置して水害時に水没する可能性を少しでも下げることが求められるでしょう。