政策・制度

東京都、太陽光設置義務化の改正案の行方は? 廃棄パネルの「3R」も推進へ

東京都の太陽光設置義務化を巡る条例の改正案を巡っては、このほど、1ヶ月間のパブリックコメントが終了した。一方で、廃棄パネルのリサイクルなどを推進するための報告書も取りまとめ、義務化に向けた議論の行方が注目される。

ハウスメーカなどへ設置を義務化
都内大手約50社へ総量を課す考え

東京都が示した、一定規模の中小建築物へ太陽光発電設備の設置を義務付けることなどを盛り込んだ環境確保条例の改正案に大きな関心が寄せられている。6月24日には、1ヶ月間にわたる改正案についてのパブリックコメントの募集期間が終了した。

同改正案では「義務化の対象を一定の効果を得られる最小限の規模」に絞り込むとし、分譲住宅または注文住宅を供給するハウスメーカーなどの事業者かつ、年間の都内供給延床面積の合計が2万平方メートル以上の事業者が対象になるとされている。

この条件に合致するのは、都内の大手住宅メーカー約50社になると見込まれ、都内の年間着工件数である4.5万件のうち、約半数に相当するという。つまり、太陽光発電設備の設置義務を負うのは、個人ではなく一定規模以上の事業者である。

また、事業者に対する設置義務量は、個別の建築物ではなく総量とする考えも示された。どの建物に太陽光発電設備を設置するのかは、事業者の裁量に委ねられる。日照条件や方角といった発電への影響を考慮すると同時に、住宅購入者の意向も反映できるようにする。

具体的には、区域ごとに算定した設置可能率と、1棟あたりの設置義務量を、事業者が供給する棟数に乗じる案が示された。こうした義務量達成のイメージは下図の通り。なお、この設置可能率は、今後、専門家によって検討するとされている。

(義務量達成のイメージ。都内で年間に供給する住宅等の棟数が500棟の例。出典:東京都環境局)

都は、パブリックコメントで寄せられた意見を踏まえ、さらに審議を深めるとしており、今後の動向が注目される。

使用済みパネルの3R手法を整理
共通ルールや連携スキームが重要

一方で、東京都は6月6日、使用済み太陽光発電設備の3R(リデュース・リユース・リサイクル)や適正処理に向けた報告書を発表した。前述の改正案でも、使用済み太陽光パネルの取り扱いについては、都のWEBサイトを通して情報提供を行う旨が述べられている。

この報告書は、都が2018年から全7回にわたって開催した「東京都使用済太陽光発電設備リサイクル検討会」において、効果的なリユース・リサイクル手法などを検討した結果を取りまとめたものだ。

同報告書では、都内の太陽光発電設備の廃棄量を「2030年代半ばに約2,000トン、2040年代半ばに約2,500トンが排出される見込み」としたうえで、3Rや適正処理の基本的な考え方や取り組みの方向性、具体的な進め方を示した。

取り組みの方向性としては、資源を有効活用する観点から、基本的にはリユース(再利用)を推進するとし、事業者が適切に維持や管理を行うPPAは、廃棄量を減らすリデュースに有効だとした。

さらに、リユース・リサイクルに関しては、メンテナンスや診断、取り外しから、運搬などに至るまでのすべての工程において「有機的に連携したルートを構築すべき」とした。こうしたルートにおいては、共通のルールを定め、各事業者による連携スキームが必要だと指摘している。

(連携スキームのイメージ。出典:東京都環境局)

DATA

東京都環境局:パブリックコメント(東京都環境確保条例の改正について(中間のまとめ))
東京都環境局:太陽光発電設備の3R推進について


文:山下幸恵(office SOTO)

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