トップ企業に聞く!太陽光発電を持続させる秘策
2017/09/07
2017年4月より改正FIT法が施行され、日本の太陽光発電業界は新たな段階へと突入した。そこで、業界のトップランナーである京セラ株式会社の池田氏と株式会社NTTスマイルエナジーの小鶴氏に、今後の太陽光発電事業について伺った。
自家消費への移行を見据えた
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日本ではFIT価格がさらに下がり、メガソーラー案件も減るでしょう。当社は、ここ2~3年はメガ案件が残っていますが、今後は住宅用でも産業用でも自家消費に軸足を移しながらシェアを伸ばしていきます。
そこで重要なポイントは「HEMSにAI機能を載せる」ことです。従来のHEMSは夜11時~朝7時まで蓄電して昼間に消費するという“時間”によるコントロールが中心で、“生活”を見ていませんでした。ライフスタイルに合わせてAIで充放電を自動でコントロールできれば、利便性が高まり経済性も良くなります。
このようにAIによる経済的メリットが電力会社からの料金よりも大きくなれば、消費者は自家消費への移行が進みます。また、当社ではVPP(仮想発電所)の構築実証事業にも参画しており、2016年だけで365台の蓄電池を設置しました。
これが進めば、例えば夏場の電力が不足したとき、住宅の蓄電池の電力を電力会社に提供することもできます。そうなれば電力会社とは共生できますし、消費者も電気料金負担が減り、当社もシェアアップにつながり、「三方良し」と考えています。
池田一郎氏
京セラ株式会社
ソーラーエネルギー事業本部
マーケティング事業部長
VPPの実現で地域電力を支える
初期の全量買取が終わり、今後は自家消費に向かうでしょう。FITバブルは終わりましたが、新設を含めて施工案件はまだまだあります。住宅用も堅調ですが、最近は「太陽光発電はお金を儲ける手段」というイメージが先行し、ユーザーが離れているのも現状です。今後の太陽光発電は長期安定稼働により基幹電源として認められることが大切です。
そのためにもO&Mが重要ですが、現状では国内の50kw未満のパネルで遠隔監視装置が付いているのは約20%ですので、当社の遠隔監視システム
「エコめがね」を通じてモニタリングサービスをさらに広げたいですね。家庭向けPPAの取り組みでは、日本エコシステムが展開する「じぶん電力」にエコめがねを導入し、自家消費分の料金を支払って余剰分を売電して発電の無駄をなくせるカスタマイズを実施しています。これなら安く電気を使えますし、災害時に独立電源としても使えます。
またVPPの実証をしています。実現すれば、家庭用の蓄電池を制御し電力の需給調整による系統安定化を図れますし、出力抑制にも対応できます。
今後は、VPPを中期的にバージョンアップしながら実現し、地域電力を支えていきたいと思います。
小鶴慎吾氏
株式会社NTTスマイルエナジー
代表取締役社長
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取材・文/大根大介
『SOLAR JOURNAL』vol.22より転載