FIT40円。伐採期むかえた日本の人工林、小規模バイオマス発電利用へ
2018/03/19
バイオマス発電のための燃料供給源として、多方面から関心が寄せられる森林資源を特集。林野庁林政部木材利用課の玉置課長へのインタビュー第一弾では、現在の森林資源の状況について、知っておきたい知識について聞いた。
増え続ける森林蓄積
人工林は今が伐採期
日本の国土面積は3778万haで、その2/3にあたる約2500万haが森林。この比率は、ここ半世紀をみてもほとんど変わらない。一方で、資源として活用できる木の量は着実に増え続けているという。
「日本の森林蓄積は約49億㎥。この半世紀で大幅に増加しており、特に人工林はおよそ5倍に膨らんでいます。そして、人工林の約半数が主伐期を迎えつつあります」と玉置氏。森林蓄積とは、森林を構成する木の幹の体積のこと。人の手で植えられ育てられた森林(人工林)が成長し、いままさに活用期にあるというのだ。
「主伐期にある木を伐採し、適材適所で活用し、植えて育てるという循環が、森林資源をバランスの取れた状態に保つためにも重要なこと」と玉置氏は話す。
建材需要は減少傾向
エネルギー利用に期待
林野庁が昨年9月に取りまとめた「木材需給表」によると、2016年度の総需要量は7807万㎥で、前年に比べ3.9%増加している。そのうち国内生産量は2714万㎥で、前年より8.9%増えている。輸入量は5093万㎥と大きいが前年比1.4%増に留まっており、国産材の比率(木材自給率)には上昇傾向がみられる。この傾向は2011年から続いており、現在、木材自給率は約35%に達している。
この数字だけを見ると好ましい状況のように感じられるが、実は総需要の約4割を占める建築用材が落ち込んでいる。この先、住宅着工件数の大幅減も予想されることから、木材需要全体のさらなる拡大のためには、非住宅分野における需要創出が欠かせない。一方で、森林整備や伐採において発生する間伐材や未利用木材の活用も必要であり、その鍵の1つを握っているものこそ、木質バイオマスのエネルギー利用なのだ。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)においても、主材の成長を促すために切った間伐材や、伐採後に林地に残される枝・根株などの未利用木材には高めの買取価格(40円/kWh・2000kW未満の設備の場合)が適用されている。それでも、未利用間伐材等は年間2000万㎥(推計値)ほど発生しており、これが活かされる意義は大きい。それまで放置されていた木材がお金になれば、林業も活性化するだろう。これに伴い、森林整備が進むことも期待される。林野庁としても、これを後押ししていく方針だ。
「2015年時点で間伐材由来の木質バイオマス利用量は約280万㎥でしたが、2025年には800万㎥にすることを目指しています」(玉置氏)。
プロフィール
玉置 賢氏
農林水産省林野庁林政部木材利用課長
1994年農林水産省入省(林野庁配属)。水田農業政策、農地政策、畜産政策、消費安全政策、農業の担い手政策等を担当。 また、新潟県川西町(現十日町市)、宮崎県庁等に出向。2016年8月より現職。
取材・文/廣町公則
『SOLAR JOURNAL』 vol.24より転載