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再エネ拡大だけではない、民間新電力が目指す「人が残るまちづくり」

ここ数年で起きている、新電力の淘汰。価格の安さと拡大戦略だけで生き残ろうとするのではなく、地域密着型の事業者だからこそ強みにできる"付加価値"とは? エネルギージャーナリストの北村和也氏が、地域電力の本質を解くコラム第2回(後編)。

前記事:“地域密着型”新電力の強さとは? 福岡県「やめエネルギー」の事例

地域への思いと付加価値

八女市は人口6万5千人弱の地方都市であり、自治体の保有する公共施設も少なくない。他の地域と同様に、市との連携は地域新電力の事業性を左右する大きなテーマである。

市の資本が入るいわゆる自治体新電力を目指したり、一括して公共施設への供給を摸索したりする考えもあったが、やめエネルギーはあえて民間から地道に取り組んできた。ゆっくりではあるが、1年半経って事業の採算ラインが十分視野に入ってきた。これは、ただ名前だけエネルギー地産地消や地域活性化を標榜するのではなく、本当の意味での地域密着型のサービスを進めているからだと自負している。自治体側も一定の評価をしていて、実質的な官民連携が始まっている。

やめエネルギーの立ち上げは、嘘偽りなく「地元を何とかしたい」という熱い気持ちであった。これから紹介していく他の地域新電力でも同様のモチベーションが底を流れている。これを甘っちょろいとする向きもあると思う。しかし、私は、実はこれこそが生き残りの切り札であると考える。前回の「選別される新電力」で取り上げた厳しい現実は、値段や拡大戦略だけで生き残ろうとする新電力、つまり安価だけを付加価値にする戦略の失敗と表裏一体であろう。

これに対して地域密着型の新電力は、別の武器を持てる可能性がある。それが、地域貢献という付加価値である。もっと泥臭く言えば、「地元愛」といってもよい。需要側から見れば、地元の奴がやっている電気を使ってやろうという気持ちである。実際に、趣旨を説明すると、切り替えるが安くしなくていいという顧客さえいる。

やめエネルギーが目指すもの

彼らの目指すものは、単なる電気の小売事業ではない。やめエネルギーの中核会社は、すでにトマトの栽培に着手していて、品種拡大と農業への再生エネ導入の検討をしている。もちろん、本業である再生エネの拡大では、発電ではTPO(第三者所有による太陽光発電)、このほか熱や交通エネルギーも視野に入れている。

最終的には、地元に産業や雇用を増やして地域に人が残る街を作ることが目標である。そのための第一歩を彼らは確実に踏み出したといってよい。

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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