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FIT買い取り期間終了後はどうなる? 再エネ自立化へ向け自家消費が牽引

固定価格買取期間が満了する「2019年問題」。太陽光のFIT卒業組に対しては、今後どのような提案をしていくべきか? JPEA事務局長の増川武昭氏に話を聞いた。

動き出す卒FITビジネス
自家消費モデルが牽引

第5次エネルギー基本計画に再生可能エネルギーの主力電源化が盛り込まれ、昨年は、太陽光発電の“自立化”について議論が進みました。2019年は、実際に自立化に向けて動き出す年となります。

FITに関しては、入札対象が500kW以上に拡大され、その他の事業用太陽光には買取価格14円/kWh(2019年度)という方針が示されています。系統に流して売電するよりも、自家消費をした方が電気の価値が高いという状況が実際に生まれてきます。今年は自家消費モデルの事業が、いよいよ大きく膨らんでくるのではないでしょうか。



そして、そのきっかけとなるのが、いわゆる2019年問題。住宅用太陽光のFIT卒業組が大量に出現するということです。卒FITの余剰電力を買い取ることに始まり、その電気をどう活用していくか、どんな価値をつけて売っていくか……、様々なサービスが出てくると予想されます。買取先の切り替えを円滑化するための仕組みが整備されていないなど課題もありますが、そこに大きなビジネスチャンスが広がっていることは間違いありません。

それが将来的には、事業用太陽光が自立したときのビジネスモデルにも活かされることになるでしょう。例えば、エネルギーを地域内でまかなう需給一体型モデルなど、既に試みは始まっています。

環境価値の取引拡大へ
RE100にも期待

FITに頼らない事業環境を実現するためには、太陽光による電気の“価値”を評価する仕組みも必要です。その筆頭に挙げられるのが、CO2を排出しない電源としての環境価値。その価値を認めて高く買ってくれる場があれば、太陽光発電事業にも新しい可能性が開けてきます。

現在、FIT電源の環境価値に関しては、非化石価値取引市場で売買できますが、非FIT再エネの環境価値についても早くこの市場で取引できるよう願っています。同時に国には、現状の「2030年度に非化石電源比率44%」という目標に加え、中間目標を設けるなど事業者の努力を後押しする姿勢を示してほしいところです。

さらに、この市場を使わずに環境価値を取引する仕組みも検討されています。再エネ電源を求めるRE100企業に直接買い取ってもらうなど、各種スキームの実証が進められています。こうした取り組みが実を結び、環境価値がしっかりと評価される日も訪れることでしょう。


FIT抜本見直しの年
太陽光の便益を周知したい

だからといって、すぐにFITがなくなっても良いということではありません。ただ、FIT法には当初から、2020年に抜本的な見直しを行う旨が記されていますから、2019年にその議論が活発化することは必至でしょう。

FITの議論においては、常に国民負担が問題となりますが、既に太陽光発電の価格は大きく下がっており、さらに長期的に見れば便益の方が大きくなるのは明らかです。結果的に、電気料金も安くなっていくのです。再エネを主力電源化するという共通の目標を達成するために、JPEAとしてもファクトを積み上げ、業界の声を集約し、その議論に積極的に加わっていきたいと考えています。

最後になりましたが、JPEAでは、卒FIT家庭向けの案内も作成しています。コチラのページにありますので、ぜひ販売事業者の方々にダウンロードしていただき、告知活動にお役立ていただければと思います。

卒FIT/2019年11月に買取期間満了を迎える方を想定したスケジュール


出典:太陽光発電協会
※1. 北海道電力/東北電力/東京電力パワーグリッド/中部電力/北陸電力/関西電力/中国電力/四国電力/九州電力/沖縄電力の10 社のことを言います。
※2. 上記電力会社10 社以外の新しい電力会社(新電力)のことを言います。



PROFILE

一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)
事務局長

増川武昭氏

1985年昭和シェル石油株式会社に入社。原油の調達や電力ビジネスなどを担当。2013年にソーラーフロンティア株式会社に出向し、太陽光発電産業のビジョン策定等に携わる。2017年6月から現職。


取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.28(2019年冬号)より転載

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