グッチ 自社とサプライチェーンの「カーボンニュートラル」目指す
2019/10/01
ファッション業界でも、持続可能な成長に配慮した経営の流れが強まっている。世界的ブランド、グッチが9月13日、自社とサプライチェーン上の温室効果ガスを完全オフセットすると宣言した。脱炭素化に向けた新たな起爆剤となりそうだ。
サプライチェーン全体で
「カーボンニュートラル」へ
9月13日、ファッションブランドのグッチが、自社及びサプライチェーンの事業活動における温室効果ガスの排出を、年次ベースで完全に「オフセット」すると発表した。「オフセット」とは、事業活動の中で発生した温室効果ガスを、直接的、間接的な手段で埋め合わせるという考え方だ。温室効果ガスの排出削減努力が前提で、その上で削減できない排出量に対し、削減に相当するクレジットの購入や、削減活動への投資などを行い相殺する。
具体的には、製造から販売までのプロセスで、ショップ、オフィス、倉庫などの再生可能エネルギー使用量を現在の70%から、2020年までに100%に引き上げる。製造工程で使用する水や化学物質、輸送時の温室効果ガスの削減にも努めるという。製造中に発生する生地の端切れなどをアップサイクルする「GUCCI-upプログラム」は継続、拡大する。
グッチ社長兼CEOのマルコ・ビッザーリ氏は同日、twitter上でこうコメントしている。「回避、削減 、回復 、オフセットするというロジカルな施策を通じて『カーボンニュートラル』を再定義するという私たちの取り組みを、あらゆる産業のCEOに行動を促す声として受け取ってほしい。今こそ企業が結集して行動を起こすことが求められている」
GHGを年次でオフセット
「環境損益計算書」で定量化
グッチを含むコングロマリット・ケリングは、2012年から会計報告のひとつに年次環境損益計算書(EP&L)を導入した。ケリングには他に、サンローラン、バレンシアガ、ブシュロンなどを保有し、すべてのブランドでEP&Lを作成している。
EP&Lでは、自社事業及びサプライチェーン全体で環境負荷を測定し、その金銭的価値を計算する。原材料、処理、製造、アセンブリ(組立)、小売などの行程において、炭素排出、水の使用、水質汚染、土地の使用、大気汚染などの項目を調査。その調査結果を金銭的価値に換算するため、どの行程に環境負荷の要因があるかわかりやすいのがメリット。目的は、天然資源の使用を定量化することだ。
2015年のEP&Lによれば、サプライチェーン全体の環境コストは、総額で8億1120万ユーロ。このうち90%以上が、サプライチェーンで発生したものだ。今回の発表はサプライチェーン全体の温室効果ガスの発生に対し、より踏み込んだ対策をとるという、強い意思表示となる。
DATA
文/山下幸恵