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【FIT抜本見直し概要】地域活用電源に関する制度の在り方はどうなるのか。

新たなフェーズに突入する、再生可能エネルギーの分野。経済産業省の委員会案から、制度改革の中身を見ていこう。地域活用電源に関する制度はどうなるのだろうか。

>>前記事はこちら(FIT抜本見直し概要~再エネ電源の区分で違う支援制度の内容~)(【FIT抜本見直し概要】競争電源に関する制度の在り方はどうなるのか。

地域活用電源に係る
制度のあり方

需要地に近接して柔軟に設置できる電源(例:住宅用太陽光発電、小規模事業用太陽光発電)や地域に賦存するエネルギー資源を活用できる電源(例:小規模地熱発電、小水力発電、バイオマス発電)は、地域活用電源として、災害時のレジリエンス強化やエネルギーの地産地消に資することが期待されるものである。
 
したがって、自家消費や地域と一体となった事業を優先的に評価するため、一定の要件(地域活用要件)を設定した上で、当面は現行のFIT制度の基本的な枠組みを維持していくことが適切である。
 
地域活用要件の詳細設計に当たっては、地域へのアウトプットと、地域からのインプットに着目し、地域における活用を適切に評価する仕組みの具体化を検討していくべきである。


地域へのアウトプットの
考え方

地域へのアウトプットの観点については、次の類型を念頭に詳細な要件を検討すべきである。
 
自家消費型:需要地において需給一体的な構造として系統負荷の小さい形で事業運営がなされ、災害時に自立的に活用されることで、全体としてレジリエンス強化に資するもの。
 
地域消費型(地域一体型):災害時に地域住民に利用されることを前提とした上で、普段から地域の需要家に対し、熱電併給も活用しながら、エネルギー供給がなされるなど、地域と一体的に事業実施がなされることで、全体としてレジリエンス強化に資するもの。
 

自家消費型の要件について

自家消費の確認は、自家消費を行う設備構造を有し、かつ当該設備により自家消費を行う計画であることを確認することが考えられる。その際、自家消費による系統負荷の軽減効果を発現させるため、ごく僅かしか自家消費を行わない設備が設置され、実質的な全量売電となることを防ぐことが重要である。
 
具体的には、①需要と整合的かつ一定の自家消費比率以上の「自家消費計画」を提出することを求めるとともに、②運転開始後は買取電力量を確認し、一定の自家消費比率を構造的に満たし得ないと疑われる案件については、必要に応じて、認定取消しなどの厳格な措置を講じることとすべきである。
 
なお、「自家消費」については、同一の需要地内において電気を使用する類型に加え、同一の需要地内に限らずとも、自営線により同一の需要地外へ電気を供給する類型など、事実上自家消費を行っている事業を認めることも検討すべきである。
 
また、災害時の活用については、災害時の活用に資する設備構造を有し、災害時に当該設備が活用される計画であることを確認することが適切である。
 

地域消費型(地域一体型)の
要件について

地域消費型(地域一体型)については、災害時に活用できるというレジリエンス強化の観点と、エネルギーの地産地消の観点の双方を考慮する必要がある。
 
災害時の活用については、災害時の活用を担保するために地方自治体の関与・連携が重要となることを踏まえ、「災害時に当該再エネ発電設備で生み出された電気・熱を活用すること」が地方自治体の防災計画等に位置付けられていることを確認することが適切である。
 

地域からの
インプットの考え方

地域からのインプットの観点については、地域に賦存する資源・エネルギーが活用されているかどうかを検討することが必要である。地熱発電や水力発電等は自ずと地域に賦存するエネルギーを活用するものである一方、バイオマス発電については燃料の長距離の輸送が可能であるため、地域集材を行っているかどうかが論点となる。


各電源類型への適用

地域活用電源については、①立地制約が小さく、需要地近接での設置が容易である電源(例:小規模事業用太陽光発電)と、②立地制約が大きく、需要地から離れた地点に設置せざるを得ない場合がある電源(例:小規模地熱発電・小水力発電・バイオマス発電)に大別できるものと考えられる。
 

小規模事業用太陽光発電

小規模事業用太陽光発電には自家消費型の地域活用要件を設定し、FIT制度の基本的枠組みを維持することが適切である。
 
このうち、低圧(10〜50kW)設備については、全量売電を前提とした野立て型設備ではなく、自家消費を前提とした屋根置き設備等の支援に重点化し、地域に密着した形での事業実施を速やかに求めることが重要である。このため、低圧設備は2020年度から要件設定を行うことを前提に、調達価格等算定委員会に対して、詳細な検討を要請する。
 
高圧(50kW上)設備については、地域での活用実態やニーズを見極めつつ、引き続き、検討を深めていく必要がある。
 
エネルギー分野以外の行政分野との連携案件(例:耕作放棄地の農地転用による営農型太陽光発電)であって、その行政分野における厳格な要件確認ができるものの取扱いについては、農山村地域の再エネポテンシャルの活用などの視点も踏まえる必要があるとの意見や、FIT制度が様々な行政分野の補助金を肩代わりするものにならないようにする必要があるとの意見があった。
 

小規模地熱発電・小水力発電・バイオマス発電

小規模地熱発電・小水力発電・バイオマス発電も自家消費型での活用を拡げる可能性が期待されるものであるが、立地制約が大きいことから、自家消費型に限って地域活用要件を設定すると導入拡大が限定的にならざるを得ない。これらの電源については、自家消費型だけでなく、地域消費型も含める形での地域活用要件を設定し、FIT制度の基本的枠組みを維持することが適切である。
 
なお、小規模風力発電の取扱いについては、実態を踏まえながら、今後検討することが適切である。
 

地域活用電源の分類とFIT認定の新要件(地域活用要件)


出典:資源エネルギー庁

ココがポイント!
●地域活用電源には「自家消費型」と「地域一体型(地域消費型)」がある。
●いずれもFITが継続されるが、FIT認定には一部自家消費や災害時活用等の要件(地域活用要件)がつく。
●低圧太陽光は、一部自家消費が要件となり、2020年度から先行適用される。=低圧の全量売電は、FIT新規案件としてはできなくなる(ソーラーシェアリングは除く)。



その他の論点

未稼働案件の放置防止

認定取得後、長期にわたり運転が開始されない場合には、①認定を失効させる、②調達期間を短縮させ、調達期間が終了したものは失効と同様に扱う、といった法的措置を講じるべきである。
 
また、既に認定を受けている案件についても、新規認定と同様の対応を取るべきである。
 

低圧分割に係るルール整備

太陽光発電の低圧分割案件の更なる取り締まり強化として、今後新規認定申請が行われた案件について、特に登記簿上の地権者の同一性について厳格に審査を行うこととし、基準の明確化等を行っていくべきである。


取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.32(2020年冬号)より転載

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