農業を持続させるための営農型 ソーラーシェアリングの真の価値とは|太陽光事業 要注目フィールド3選③
2026.10.09
変化する政府の方針に呼応するように、太陽光ビジネスにおける企業の投資や事業スタイルにも変化が起こっている。本記事では、特に注目しておきたいキーワードの一つ「パソーラーシェアリング」とそれを取り巻く現状についてまとめ、その商機について考察する。
1.地域農業に貢献するソーラーシェアリング
2.農家を支えるプレーヤーが動き始めた
3.営農を支える力が競争力になる
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が、大きな転換点を迎えている。これまでの政策は、再生可能エネルギーの導入拡大と農地の有効活用を両立させる手法として、その普及を後押ししてきた。しかし、制度開始から10年以上が経過し、全国で導入事例が積み重なる一方で、営農の実態が伴わない案件や、一時転用制度の趣旨から逸脱した運用も指摘されるようになった。
こうした状況を受け、農林水産省は制度の見直しに着手した。今回の見直しで重要なのは、営農型太陽光発電を抑制することではない。「発電を目的とした営農型」から、「農業を持続させるための営農型」へと政策の軸足を移した点にある。
地域農業に貢献する
ソーラーシェアリング

その方向性を明確に示したのが、2025年4月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画だ。同計画では、「望ましい営農型太陽光発電」の整理を進め、市町村など地域の関係者の参画の下で地域活性化に資する形で推進することが盛り込まれた。
これを受けて設置された有識者検討会では、「適切な営農」の具体像について議論が進められている。そこで重視されているのは、農業収入を継続的に確保できること、地域計画と整合していること、農地利用や担い手育成に貢献することなど、営農そのものだ。さらに、営農実態が確認できない案件については、一時転用制度だけでなく、FIT・FIP制度とも連携し、交付金停止なども含めた対応が検討されている。
市場環境も変わってきた。FIT価格の下落や出力制御の拡大を背景に、売電収入だけに依存した事業モデルは成り立ちにくくなっている。このため検討会では、PPAなどFIT・FIPに依存しない事業モデルや地域脱炭素政策との連携も重要なテーマとなった。
ソーラーシェアリングを増やすことが政策目的ではない。これから求められるのは、農業経営を持続させ、地域農業に貢献する真の営農型太陽光発電である。
農家を支えるプレーヤーが
動き始めた
政策が「営農優先」を掲げるのであれば、その主役は誰なのか。答えは明確である。営農型太陽光発電の主役は、あくまで農家だ。農地を守り、農業を続けることが制度の目的である以上、営農型太陽光発電は発電事業ではなく、農業経営を支える仕組みとして成立しなければならない。農家が主体となり、売電収入を営農の安定化や経営改善に生かすことこそ、この制度本来の姿でもある。
一方で、農家だけで営農型太陽光発電を普及させるには限界もある。大型農機が無理なく走行できる架台設計、作物に応じた遮光率の最適化、スマート農業との連携など、農業と発電を両立するための技術やノウハウが求められるからだ。
そこで存在感を高めているのが、農機メーカーである。一昨年以降、クボタやヤンマーが相次いで営農型太陽光発電への取り組みを打ち出した。両社に共通するのは、太陽光発電設備を販売することを目的としているのではなく、「農業を続けられる環境」を整える技術として営農型太陽光発電を捉えている点だ。
農業機械メーカーだからこそ、大型農機の作業性や営農計画、スマート農業との連携まで含めた提案ができる。農家が主役であることは変わらない。その主役を支える技術とサービスを提供することに、農機メーカーが参入する意義がある。
営農を支える力が
競争力になる
今回の制度見直しは、事業者に新たな競争軸を提示した。これまで重視されてきたのは、発電効率や設備コスト、施工力だった。しかしこれから問われるのは、それだけではない。農業を理解し、地域と対話し、農家が安心して営農を続けられる環境をつくれるかどうかが、事業の成否を左右する。
制度が「量」から「質」へと舵を切った今、市場もまた、農家を中心に据えた新たな段階へ進み始めた。再エネ事業者、農機メーカー、エネルギー企業、それぞれが果たす役割は異なる。しかし、その目指す先は1つだ。主役である農家が営農を続けられること。その価値をいかに支えるかが、これからの営農型太陽光発電の競争力となる。
取材・文/廣町公則
アイキャッチ画像:© ceeceelee/Shutterstock.com
SJ vol.58より転載
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