2030年のエネルギーミックス、バイオマス発電がカギ
2017/02/20
バイオマス業界に新たな動きが始まっている。木質バイオマス発電事業者だけを正会員とする協会が立ち上げられ、このほど設立記念シンポジウムが開催された。なぜ今、発電事業者による業界団体が設立されたのか?
20年間の安定運転に向けて
情報共有、環境整備を図る
一般社団法人バイオマス発電事業者協会(BPA)が2月13日、設立記念シンポジウムを都内ホールで開催した。同協会は、2016年11月25日に設立された木質バイオマス発電事業者による業界団体だ。バイオマスに関する協会は既に複数存在するが、“木質”バイオマスの“発電”事業に特化した全国規模の団体は同協会が日本初となる。
開会挨拶に立った代表理事の山本毅嗣氏(丸紅 国内電力プロジェクト部副部長)は、設立の背景を次のように述べている。「木質バイオマス発電事業は、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に基づく施設については20年間にわたり安定運転を継続していく責任があります。個別企業では、燃料調達・プラント技術・安全対策等々の様々な問題に対応していくには限界があり、役所からの問合せに対しても業界として一元的に対応できる窓口が存在しないのが現状でした。それらの課題に対して、木質バイオマス発電業界が一丸となって、情報共有や情報発信、事業継続・安定経営への環境整備、国への政策提言等の活動を行うことが急務と考え、発電事業者を主体にした新団体を設置する運びとなりました」。
今後は同協会が中心となって、バイオマス発電事業の促進とバイオマス産業の健全な発展を図り、持続可能な循環型社会の構築と地球環境保全の推進に寄与していきたいということだ。
エネルギーミックス実現へ
一層の発展目指し、一致団結
来賓挨拶には、経済産業省産業技術環境局長の末松広行氏が登壇。続いて資源エネルギー庁新エネルギー課、林野庁木材利用課、環境省地球温暖化対策課から、それぞれに講師を招いて講演が行われ、関係各省庁からの期待も大きいことを印象づけた。
この日のシンポジウムには、バイオマス発電事業者を中心に、燃料やプラント関連事業など幅広い業種から約270名が参加。シンポジウム終了後には懇親会も催され、協会設立を祝うとともに、一致団結して業界のさらなる発展を図っていくことを誓いあった。
再生可能エネルギー利用の機運が高まるなか、日本には現在、商業運転中および開業時期が確定している木質バイオマス発電所が大小合わせて180ヶ所以上ある。雇用創出や林業再興など地域活性化・地方創生の観点からも、それらは大きな注目を集めている。FITにより異業種からの参入も増え、業界は今、これまでにない活況を呈しているといって良い。
しかし、バイオマス発電は、まだまだこれからの産業だ。政府が掲げるエネルギーミックス(2030年のバイオマス発電の導入目標602~728万kW)を実現するためにも、今後さらなる飛躍を遂げていかなければならない。そのためには、燃料の安定調達や発電コストの低減など、解決しなければならない課題も多い。バイオマス発電事業者協会の果たすべき役割は、極めて大きいといえるだろう。
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同協会設立時の役員は以下の通り。
代表理事 山本毅嗣氏(丸紅株式会社 国内電力プロジェクト部副部長)
副代表理事 北村真一氏(サミットエナジー株式会社 顧問)
副代表理事 森一晃氏 (新エネルギー開発株式会社 取締役副社長)
副代表理事 澤一誠氏 (株式会社JCサービス 執行役員)
理事 永野正朗氏(株式会社グリーン・エネルギー研究所 専務取締役事業本部長)
理事 沼真吾氏 (フォレストエナジー株式会社 代表取締役社長)
理事 平野久貴氏(ユナイテッド計画株式会社 取締役社長)
理事 永井裕介氏(株式会社レノバ 新エネルギー事業部 副事業部長)
監事 石田博氏 (株式会社グリーン発電大分 取締役社長)
顧問 杉浦英世氏(特定非営利活動法人農都会議 代表理事)
取材・文/廣町公則