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FIT改正後の小型風力発電、事業化のポイントは?

風土に適した小型風力発電
安全性にも十分な配慮を

日本のFIT価格を見ると、小型風力(20kW未満)には55円/kWhという高値が設定されている。これは世界でも突出して高い買取価格であり、この市場には海外からも熱い視線が注がれている。こうした背景もあって、現在、NK型式認証(FIT認定の前提要件となる認証)を受けている小型風車19種のうち、16種が海外メーカー製という状況になっている。

しかし、小型風力を定義する20kW未満という基準は日本独自のものであり、海外メーカーの風車を導入する場合には、日本の基準に合わせて様々な調整を行う必要がある。今後はさらに、日本ならではの気候風土(突風・乱流・雷など)に適した小型風力発電システムの完成が望まれるところだ。

また、20kW未満の風車には環境アセスを行う法的義務がなかったこともあり、狭い場所に多くの小型風車を林立させるなど不適切な設置事例も見受けられるという。改正FIT法のもと、これからは小型風力であっても環境に配慮し、安全性には十分な注意が払われなければならないだろう。


小型風車の林立状況(秋田県 男鹿半島北)

牛山氏は言う、「地球には、およそ73億の人が住んでいるが、そのうち20億人以上は電力の恩恵を受けていない。そういうところに、日本で培われた小型風力を持っていけば、必ず上手くいく。現地の人々のためにも、日本の企業には、ぜひこれをやってほしい」。

精緻なシミュレーションが
小型風力発電事業化のカギ

この後、牛山氏の元で研鑽を積み、現在はNK型式認証の審査にも携わっている東洋設計 新エネルギー部の西沢良史氏が、小型風力発電の設置・導入時の注意事項やメンテナンスについてレクチャー。適切に設置され、正常な状態が確保されていないと、耐風速より大幅に低い風速でも破損の危険性があることなどを説き、注意を呼び掛けた。

最後は、主催であるJCEPの鈴木和幸事務局長が、小型風力発電事業化のポイントとJCEPの取り組みについてスピーチし、「小型風力発電の適地選定のためには、精緻な風況シミュレーションが不可欠であり、そのためにはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の風況マップだけに頼っていては危険。JCEPでは、最新の風況予測技術に基づく高精度なシミュレーションを行っているので、事業性の基礎調査に役立ててほしい」と訴えた。

この日、会場に集まった人々は、風車・部材メーカー・販売会社はもちろん、ゼネコン・建設会社・不動産会社・太陽光発電事業者など多岐にわたった。講演後には、登壇者に個別相談を希望する人が列を成し、参加者の関心の高さを伺わせた。


取材・文/廣町公則

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